山風は弱さを語りきった。俺の言葉を待っている。拒絶、叱咤、或いは罵倒。どんなネガティブな感情も、今の彼女は受け入れる気がした。
困った様に、泣き出しそうな顔で。
『そうだよね』
と、山風への批難を受け入れるのだ。…俺の心も荒んでいる。どうにも、今日は弱さを隠しきれない。ああだめだ。そんなのは言い訳だ。
艦娘が弱さを見せている。俺は提督だ。意地を張らないといけない。
「提督として答えようか」
そうだ。軍神の顔を見せろ。人間の弱さなんて今はいらない。戦場を艦娘に押しつけて、弱さすら受け止められない俺は許さない。
「戦いたくないならば戦わなければ良い」
これは、俺の本音である。無理に戦わせる方が危ないのだ。
「…良いの?」
山風の瞳が若干潤んでいた。喜びではない。彼女は、困っているのだ。
「だが、これは決して優しい言葉でもなければ、甘い選択でもない」
「ん」
少し怯えたような表情を見せる。それでも怒りは感じられない。きっと山風も分かっている事を、俺は愚かにも言葉にするんだ。
「俺を同じだと言ったな」
そうなのだろう。彼女は的確に、俺が押し殺した弱さを見抜いた。
「戦いに怯えて、必死に恐怖を押し殺しているのだと」
「ん。…怒った?」
悲しそうに怯えながらの言葉だ。ぎゅっと、彼女の抱擁力が強まった。山風の体温と匂いを強く感じる。素直に愛らしい。今度は俺から頭を撫でた。
「おっきい手、好き…」
くすぐったそうに微笑んでくれた。俺も応え、ああだけど自嘲した微笑みを浮かべながら、言葉を続けるんだ。
「事実を指摘されて怒る程、俺は愚かではなくてね」
実際山風には、俺の恐怖心が完全に見透かされている。臆病者の心を感じ取られているんだ。或いは、目の前の彼女は優しさと呼んでくれるかもしれないけど。
これは弱さだ。
同族、その言葉は間違いじゃない。…また、山風の手のひらが俺の頭を撫で始めた。とても優しい手つきだった。
目を見ると、暖かな微笑みで応えてくれた。だけど俺は提督だから、言わなければならない事がある。
「だからこそ断言しよう」
ああそうだ。この世界に転生して、艦これだと気付いてから、毎朝何度も自分へ刻み込んだ事実を、俺はこの少女に押しつける。
「無力感を抱えての生は、死よりも辛いぞ」
そう言い聞かせて戦い続けてきた。俺の内から零れ落ちるモノを、恐怖とストレスを無視して戦い続けてきたんだ。
果てに人を辞めて、軍神と謳われる程。
「自分の手の届かない先で、大切な仲間達が死んでしまう」
「…そうだね」
心に届いていない。ああ。そうだな。この子は、俺の臆病心と酷く似ている。俺が隠してどうする。山風が弱さを見せてくれたんだ。
俺も本音で語ろう。