いちゃいちゃ大好き提督日常   作:ぶちぶち

276 / 322
無意味な虚勢の仮面です

 山風は弱さを語りきった。俺の言葉を待っている。拒絶、叱咤、或いは罵倒。どんなネガティブな感情も、今の彼女は受け入れる気がした。

 困った様に、泣き出しそうな顔で。

『そうだよね』

 

 と、山風への批難を受け入れるのだ。…俺の心も荒んでいる。どうにも、今日は弱さを隠しきれない。ああだめだ。そんなのは言い訳だ。

 艦娘が弱さを見せている。俺は提督だ。意地を張らないといけない。

「提督として答えようか」

 

 そうだ。軍神の顔を見せろ。人間の弱さなんて今はいらない。戦場を艦娘に押しつけて、弱さすら受け止められない俺は許さない。

「戦いたくないならば戦わなければ良い」

 これは、俺の本音である。無理に戦わせる方が危ないのだ。

 

「…良いの?」

 山風の瞳が若干潤んでいた。喜びではない。彼女は、困っているのだ。

「だが、これは決して優しい言葉でもなければ、甘い選択でもない」

「ん」

 

 少し怯えたような表情を見せる。それでも怒りは感じられない。きっと山風も分かっている事を、俺は愚かにも言葉にするんだ。

「俺を同じだと言ったな」

 そうなのだろう。彼女は的確に、俺が押し殺した弱さを見抜いた。

 

「戦いに怯えて、必死に恐怖を押し殺しているのだと」

「ん。…怒った?」

 悲しそうに怯えながらの言葉だ。ぎゅっと、彼女の抱擁力が強まった。山風の体温と匂いを強く感じる。素直に愛らしい。今度は俺から頭を撫でた。

 

「おっきい手、好き…」

 くすぐったそうに微笑んでくれた。俺も応え、ああだけど自嘲した微笑みを浮かべながら、言葉を続けるんだ。

「事実を指摘されて怒る程、俺は愚かではなくてね」

 

 実際山風には、俺の恐怖心が完全に見透かされている。臆病者の心を感じ取られているんだ。或いは、目の前の彼女は優しさと呼んでくれるかもしれないけど。

 これは弱さだ。

 

 同族、その言葉は間違いじゃない。…また、山風の手のひらが俺の頭を撫で始めた。とても優しい手つきだった。

 目を見ると、暖かな微笑みで応えてくれた。だけど俺は提督だから、言わなければならない事がある。

 

「だからこそ断言しよう」

 ああそうだ。この世界に転生して、艦これだと気付いてから、毎朝何度も自分へ刻み込んだ事実を、俺はこの少女に押しつける。

「無力感を抱えての生は、死よりも辛いぞ」

 

 そう言い聞かせて戦い続けてきた。俺の内から零れ落ちるモノを、恐怖とストレスを無視して戦い続けてきたんだ。

 果てに人を辞めて、軍神と謳われる程。

「自分の手の届かない先で、大切な仲間達が死んでしまう」

 

「…そうだね」

 心に届いていない。ああ。そうだな。この子は、俺の臆病心と酷く似ている。俺が隠してどうする。山風が弱さを見せてくれたんだ。

 俺も本音で語ろう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。