いちゃいちゃ大好き提督日常   作:ぶちぶち

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江風さんとの
割と疲れています


 山風との重く弱さを見せ合う一日が終わって、翌日。どろりとした疲れが意識を埋めていた。

「あ~」

 死ぬほど間抜けな声が出た。身支度こそ整えたが、随分と悲惨な顔をしていた。

 

 深く、泥の様に眠りこけて出てきた目元の隈。頬は軽くやつれている。目が酷い。淀んでいた。心の奥底更に深くまで、蓄積されていた疲労が弾けたのだ。

 …得がたい一日だったのだろう。

 それはそれとして、今日はまともに触れ合える気がしない。

 

 しかし、そんな俺の事情はともかく。今日も今日とて改白露型の誰かが来てくれる。ぼんやりと待っていると。

 ノックもなしに、豪快に扉が開いた。

「よう提督。今日はよろしくな!」

 

 薄赤色を腰まで伸ばした美少女。愛らしい中にも、どこかワイルドな魅力を秘めた顔立ちと、悪戯な微笑みが可愛い。

 へそ出し腋出しのセーラー服が目に眩しく。ヘアバンドと合わさり、活動的な魅力に溢れている子だ。

 

 白露型駆逐艦の九番艦・江風が今日は付き合ってくれるようだった。

「ああ」

 内心では眩しい彼女の姿に感動しているけど、どうにも表面がついてこない。気力が沸いてこないのだ。

 

 は~江風のへそ舐めたい。落ち着け。なんだろう。馬鹿で臆病な俺が、どうにも混在している。ううむ。響への想いを自覚してから、自重しようとも思っているのだが。

 どうにも。奥底の淀みが溢れている。シリアスに思う事じゃないけどな!!

 

 は~江風の腋舐めたい。なんでこう、改白露型は皆腋を出しているのだ。舐めろと言うのか。これ以上私にどうしろと言うのですか!

 落ち着こう。何を考えているのやら。

「ただまあ、大した世話も出来ないから、どうっすかね?」

 

「そうか?」

「夕立の姉貴ほどでもないけど、事務能力も高くはねえ」

 江風に断言されるほど、夕立の事務能力は低いのか。うむ。低いな。そこが彼女の魅力ではないっぽい! 落ち着け。

 

「だけどさ、提督には恩もあるからな。何でも言ってくれ」

「恩?」

 身に覚えがなさすぎる。人類を代表して、艦娘に感謝しているのだがね。大げさか。大げさだった。

 

 は~響の響を舐めたい。落ち着け。それは江風に失礼だ。そういう問題でもないか。実際、響にそんな事は言えないよな。うん。

「駆逐艦、潜水艦、軽巡洋艦。全員が提督に感謝してる」

「む?」

 

「もちろん江風も同じ気持ちだ。駆逐艦に、戦いの場を与えてくれて感謝してンだよ」

 裏返せば、戦いの場を与えてしまったとも言えるのだがね。なんて、それはあまりにも艦娘を侮辱しているのだろう。

 

「だから何でも頼ってくれ。少しでも返させてくれよ」

 ふふんと楽しそうに彼女は笑っていた。いやしかし。何でもって、何でもって。

「ふむ」

 何でもは、何でもなんだろうなあ。ふひひ。

 

 落ち着け。海風の誘惑を冷静にしりぞけた俺は何処へ消えた。むらむらしすぎだ。俺は村雨か。むしろ叢雲か。天叢雲剣か。それは俺の股間だ。…神罰がありそうなので自重しよう。

「戦いや訓練がない時はどう過ごしているんだ?」

 

「…つまンねえけど良いのか?」

「江風の日常を知りたい。教えてくれ」

 そもそも俺は艦娘の日常を愛したいのだ。萌え萌えしたいのだ。燃え燃えは経験しきっているんだ。

 

 なんなら全身が燃えた事もあるぞ。全身火傷だぞ。

「――よし! じゃあ港に行こうか!」

 ぱしっと手のひらを叩いて、楽しそうに宣言してくれた。

「港? 何をするんだ」

 

「そいつは着いてからのお楽しみってな。準備があるから、先に行っててくれよ」

 ふよんと自身の美乳を叩いて、楽しそうにしていた。

「分かった」

 無論逆らうつもりもなく。気力もなく。ふらふらと港へ歩みを進めていく。


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