いちゃいちゃ大好き提督日常   作:ぶちぶち

280 / 322
波静かな日常です

 この鎮守府に建設された港。この鎮守府は遠征の為にある場所だ。

 漁を目的とした船はなく。ただゆらゆらと海が佇んでいた。のんびりと風が流れていく。そんな場所だ。

「ここで皆が出撃するのか」

 

 思えば、艦娘の出撃を見送った事がなかった。前の鎮守府ではそんな暇もなかったし、此処では皆と仲良くなっていなかった。

 完全に終戦が決まる前に、一度は見送ってみたいものだ。海へ進んでいく彼女達も絶対美しい。

 

「良い色だな」

 深海棲艦の領域が広がっていると、淀み黒色に海は変わる。

 それが祓われると、美しい色を取り戻すのだ。不思議と魚も戻っている。なんなら前より綺麗になっているくらいだ。

 

 …深海棲艦は世界の自浄効果だと、言った研究者もいたらしい。あながち間違いではないのかも知れない。

 

 そうしてのんびりと彼女を待っていれば、それほど経たない内に港へ来てくれて。持ってきた道具は――釣り道具だった。

 今、鎮守府の港で俺と江風は釣りをしていた。

 あまりにも緩やかに時が流れていて、夢の様な時間だ。

 

「波がゆらゆら。このご時世じゃ一番の贅沢だよな」

「うむ」

 漁に出るのも命がけだ。農業が盛んになった反面、新鮮な魚はそれなりに贅沢な品となっていた。

 

 大分、安定はしているらしいがね。それこそ艦娘が護衛についたりして、まったくとれないわけじゃないんだ。

 …それに、大勢死んだからな。食糧自給率は心配要らない。世界が優しくて結構なことだ。

 

 ははは。犠牲者の家族に聞かれたら、大変な事になりそうな思考だった。ううむ。また思考が淀んでいる。夏近い太陽が眩しかった。

「今日は釣れそうかね?」

 俺の呟きに笑いながら。

 

「分からねえから楽しめるんじゃン」

「それはそうだな」

 分かりきった結末なんてつまらないか。もっともな意見かもしれない。

 

 ゆらゆらと海が踊っている。楽しい。激しい想いはないけれども、荒れた心が落ち着く気がした。

「…戦い以外でも楽しみがあって良かったよ」

 思わず本音が零れた。そっと彼女を見ると、いたずらに笑っていた。

 

「ンだよ、江風を戦闘狂みたく言ってくれるなよな~」

 快活に笑う彼女はただの美少女だった。太陽が良く似合う。外を遊び回る。そんな少女の姿があった。

 戦場で砲撃をしているより、余程似合っていると思うがね。

 

 一度戦場に出れば、夕立の如き楽しそうな笑みで暴れ回るらしい。とはいえ、まだ激しい実戦は経験させていないのだがね。

「あながち間違いでもねえけどさ」

 戦いが好き、か。戦いこそが己の生きる場所と、覚悟が決まりきっている者達も多いのだろうな。

 

 特に戦艦や空母は、明日から終戦ですと言われて納得がいくのだろうか? 平和の為に戦い続けるからこそ、戦争がないと落ち着かない矛盾。

 解決するために世界全体で動いているのだがね。

「戦争、終わりそうなのかい?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。