真面目でしっとりと空気が流れていく。相変わらず魚は釣れないけど、悪い気分ではない。いや、良い気分だった。
ぼけ~っと青空を眺めていると、江風が声をかけてくる。
「提督」
仄かに声が震えていた。どうしたのだろう?
「ん?」
「江風と子作りしねえか?」「んっ!?」
「い、い、いきなり何を言っているんだ!!」
大胆すぎるだろう! いやいや、妙に朝からスケベな俺もいたけど。正直江風の腋を舐め舐めしたいと思っているけども!
展開が急すぎる。海風の時はもっと段階を踏んで…いや、段階を踏めばいいわけじゃないけども!
ど、どうする。展開が急すぎて本当に思考が纏まらない。疲れきっていた頭に刺激が強すぎる。良いのか。俺は江風を腋を舐め回し、スタイルの良い胸をしゃぶって良いのか!?
――良い筈がないだろう!!
落ち着け。落ち着くのだ。そりゃあ、したい。俺だもの、ていとくお。だがまあ、アレだよ。どう考えても恋とかじゃないし。
いや、ビッチ系も好きだよ。同人誌とかでも好きなジャンルだよ。でもなあ。それを受け止められる器がない。
俺は童貞だ。確実に上手く出来ない。俺にそんな才能はない。いや試してないだけで才能はあるかもしれないけど。マジカルなぶつが俺の股間に宿っているかもしれないけどさ。
でも、俺にとってエッチは素敵であるべきなのだ。
恋心が必要なのだ。うむうむ。…へたれじゃないからな!
「きひひ。そう騒ぐなよ、魚が逃げるじゃン」
へらへらと楽しそうに笑っていた。こいつめ。
「いやそれはお前が」
「冗談だって。半分だけな」
手をひらひらとさせて笑っている。妙に落ち着いているが、顔を見ると仄かに赤らんでいた。可愛い。ううむ。素直にすけべです。
「白露の姉貴が、提督はすけべだって言うからよ」
否定はしないけど白露は何を言っているんだ。膝枕の時に胸を見ていたからか。ごめんなさい。でも良いお胸でした。
「さすがに姉貴ほどではないけど、江風のスタイルはすっきりしてるだろ?」
ぐっと伸びをしてスタイルを見せつけてくる。素直にすけべです。
出来るだけ見ないように目を背けた。そうすると、意地悪な微笑みを浮かべて、俺に迫ってくる。素直にすけべです。
「提督相手なら悪い気もしない。だからとは思ったけど」
にやにやと笑っている。こやつめ。反撃しようか。いや、俺の心臓が保たない。止めておこう。
「案外初心なんだな」
馬鹿にされているぞ! お、男が挑まれたのに逃げるのか!? …挑発に乗るな。我、軍人である。提督である。軍神である! 月光蝶である!!
じゃなかった。少なくとも今俺は唯の人だ。
「そういうのを考える間もなかったから、仕方ないだろう」
「きひ、取り繕ったりはしねえの?」
楽しそうに笑っていた。ていうか距離が近い。良い匂いする。ここで勢いに乗れないから、俺は童貞なのだろうか?
「軍規を気にする必要ない場で、無闇に自分を大きく見せる必要があるのか?」
軍神でない俺なんて、所詮は変態童貞だぞ。妄想力抜群だぞ。勃起しないように気をつけているだけである。
「…へえ。なるほどねえ」