からからと楽しそうな笑顔を見て、俺の中の欲望も落ち着いてくれた。まったく。最近こういう流れが多すぎる。
平和になった証拠かもしれんが、もっと萌えであってほしい
「大体、もっと自分の身は大切にしなさい」
自己犠牲精神というか、刹那的というか。戦場が生んだ性質なのだろうけども、日常で歩むには切なすぎる。
「それこそ平和な日常が訪れるかもしれないんだ」
愛を紡ぎ愛。子を成して、命を残していけるかもしれないんだ。
「江風だからと言ってくれて、その相手だからと言える相手と交わりなさい」
「へいへーい」
あまり真面目な返答ではなかった。説教臭いのは嫌いなのだろう。少しだけ拗ねているようだ。可愛い。だが真面目に言おう。
「江風」
「分かってるって」
拗ねの雰囲気が強くなった。これ以上押しつけても仕方がないか。別にビッチな感じは大好きだ。大好きだけど、俺、童貞だからさ。
いや、キモオタ童貞に優しいギャル概念とか大好物だよ。初めてはリードしてほしい気持ちもあるよ。でもなあ。
「…でもよ、性的だからってあんまり拒絶するのもどうよ?」
「む?」
痛い所を突かれてしまった。萌える感じは大好きだけど、生の女体は怖いのだ。そうさ。悪いか。どう事に挑めば良いのか分からない。怖いに決まっている!
それもあって、俺は心底から弱さを見せられる相手がいいんだろうな。臆病である。
「女だから性的なのが駄目なわけじゃねえ」
「それは、そうかもしれんがね」
スケベな俺が、誰かのスケベを否定は出来ない。ビッチなのも好物なのだ。清楚系ビッチも好きなのだ。創作ならばなんでもOKだ。
黙りこくった俺を見て、落ち込んだと思ったのか。きまりが悪そうに彼女は言葉を続ける。
「まあなんだ」
ぽりぽりと頭をかきながら、江風は言う。
「時には馬鹿になりきるのも良いンじゃねえのかな」
「うむう」
我ながら考え込むタイプだとは思っている。本能的に生きられたら楽なのだろう。うむうむ。難しいぜ。
「すっげえ悩んだ顔してるな!」
そう言いつつも悪い気持ちではなさそうだった。楽しそうに笑っている。拗ねは消えたのだろう。それもまた可愛い。
「きひひ。それが提督の良い所なのかもな」
からかわれている気持ちになった。少しは言葉を返したい。意地を見せたくなった。なんて、そんなつもりはないのだけど。
「…秘め事は大事にした方が気持ち良いだろう」
「きひ! 良いね。江風好みの言葉だ」
腹の底から楽しそうに笑っていた。釣り竿が、魚もなしに揺れている。良い時間だった。
「そうだな。あっさり終わらせちまったらもったいない」
にひりと楽しそうに笑っていながら、堂々と言葉を紡ぐ。
「少し心情が変わったぜ。平和、無理しなくても案外楽しめるかもしれねえな」
「それならば良いがね」
何はともあれ今を楽しもう。せっかくの時間だ。
「ひとまずはこの釣りを楽しませてくれないか?」「良い提案じゃン」