涼やかに吹き抜ける風です
江風との釣りを終えて、翌日。もうそろそろ夏が訪れる。そんな暑い日。日差しが執務室に入ってくる。徐々に暑い。良い日だ。
昨日の釣りは結局何も釣れなかった。だが、ことある毎に悪戯してくる江風との時間は、中々に良いものだった。
「ふう」
賢者タイムではない。さて、今日付き合ってくれる子は決まっている。なんだか風俗みたいだな。落ち着け。賢者タイムではない。
のんびりと秘書艦を待っていると、勢い良く扉が開いた。
「今日はあたいの出番だ!」
深みのある蒼色の髪が長く。二つに束ねて、毛先は青色に変わっている美しい髪色。腋の出た爽やかなセーラ服が眩しい。スタイルは…ロリだ。貧乳はステータスだとも!
「今日はよろしく頼むぞ」
天真爛漫なんて言葉が似合う美少女、涼風との一日が始まろうとしていた。
「よろしくな!」
元気いっぱいである。素直に可愛らしいね。
ソファーに座る俺の隣へ、何の迷いもなく彼女が座った。にこにこと楽しそうに笑って、とんとんと肩を叩きつつ。
「なあなあ、昨日はどんなことをしたんだ?」
滅茶苦茶可愛い問いかけ方である。可愛すぎる。ちょっと意地悪したくなった。
「江風に少し怒られてしまった。それにからかわれたかな」
大分、語弊のある言い方である。あながち嘘でもないのが酷い。
「はっはっは! 江風の姉御は真っ直ぐだからな!」
ばしばしと肩を叩かれてしまった。小さな手が心地良い。
「でも悪い人じゃないんだ。気にしないでほしい」
ぽんぽんと肩を叩かれる。叩き方のバリエーションがすごい。心地良い距離感であった。
「楽しかったから気にしてないさ」
「なら良いけどな。で、あたいは何をすれば良いんだい?」
楽しそうに、そうして頼ってほしそうに笑っている。頭を撫でたい。体型が幼い感じだからか、俺も父性が出ていた。
「涼風らしさを見せてくれ。君と日常を過ごしたい」
俺としても、艦これ知識では涼風を知らない。かなり新鮮みがある。前世の知識を押しつけるつもりもないが、ファン感が出る時があるのだ。
ある意味フラットで接せられる点では、涼風との時間は特別かもしれない。
そう思うとワクワクしてきたぜ。どんな子なんだろうな。
「ふむ、ふむふむ――全力で提督と楽しめば良いんだな!」
彼女らしい涼やかな声で、楽しそうに言ってくれた。がっしりと肩を組んできた。ちょ、ちょ、距離感近すぎるぜ!
良い匂いがする。青春の香りがする! …このまま涼風の頭に鼻を押しつけて、匂いを嗅いだら駄目だろうか。駄目だ。
「頼めるだろうか?」
いかん。無意識でお願いする所だった。そんな邪心に気付かず。むしろ俺の中の邪神が目覚めず。無邪気な笑顔で彼女は言う。
「よっし! あたいの得意分野さ」
「頼めるか?」
俺の言葉を受けて。
「がってんだ! 涼風の本気見せたげる!!」
堂々と宣言してくれた。さあ、楽しませてもらおうか。