汗だくになりながら鬼ごっこを続ける。終わる頃には息も絶え絶えで、さすがの涼風も疲れていた。気付けば外に出て、浜辺で二人して座っている。
砂の柔らかさが心地良い。青空が美しい。頬を撫でる風が心地良かった。
「提督、も、中々やるねえ」
息を切らして汗だくで座り込んでいる。可愛い。こうしてみると、ちょっとやんちゃなだけの美少女である。
それが大人顔負けの身体能力を宿しているんだ。艦娘を畏れる人の気持ちも、分からないではない。
可愛いだけじゃないからこそ、俺もまた萌えるのである。
「涼風もな」
スピードは涼風の方が優れていたけど、持久力と回復力は俺に軍配が上がっていた。日頃鍛えている成果は、多少体が鈍っていても出ているのかもしれない。
「提督なのに鍛えてんの?」
「提督だから鍛えているんだ」
体力勝負の仕事である。この鎮守府こそ平和だけど、最前線は笑える程度にヤバい。まじヤバい。
徹夜は心身共に摩耗するのである。耐えきる土台が必要だった。
「それがなくても体を動かすのは好きでね」
「汗を流すのは気持ち良いよな!」
ぱっと花開く笑顔が眩しいぜ。元気いっぱい。活発的な子だ。可愛い。
「ああ」
そんな眩しさに良い言葉も交わせず。呆けた声が出てきただけだった。
いやしかし。何も考えず。頭を空っぽにするのは大切だ。
重たく暗い何かが融けている。江風との時間とは違う感じで、涼風との時間もぼ~っとしていられる。
のんびりと過ごすのも良いけど、こうして遊ぶのも好きだ。
「良い天気だ」
爽やかな香りがする。夏が訪れている。良い天気だ。本当に心地良い。春の陽気とは違う。焦がれるような、動き出したくなる熱さがあるんだ。
陽光に照らされた涼風は、素直に美しい。
「気持ちの良いお天道様だねえ」
彼女が目を細めて空を見上げていた。妙に似合っている。
ぼ~っと気持ち良い疲労を楽しめている。なんだか久しぶりに、子供に戻った気分だった。
ただ全力で遊んで、疲れすらも楽しくて。家に帰ったら家族が待っているんだ。おいしいごはんに楽しい時間。一日の楽しいを家族と共有する。
そんな、かつての俺が味わった時間。俺が、俺がもっと強ければ、この世界の家族は守れたのではないだろうか。悔やむ気持ちはなくならない。
ああ。良い天気だ。太陽が目に眩しい。泣き出したくなる。
「…提督、飲むもんとってくるから」
とん、と軽く俺の背中を叩いてから、涼風が立ち上がった。
「ちょっと休んでてくれい」
「ありがとう」
一人残されて、耐えきれない想いが頬を伝う。思っているよりも今日は良い一日になりそうだった。