いちゃいちゃ大好き提督日常   作:ぶちぶち

288 / 322
かきこむ夏の味です

 一人泣き。涙が流れ落ちた頃に、涼風が戻ってきてくれた。

「待たせちゃったか?」

 気遣うような優しい表情だ。胸に沁みる。明るさと爽やかさを感じられた。

「いや…ありがとう」

 

 にこりと彼女が笑う。

「ん。ほら、しっかりと取ってきたよ」

 手にした袋からラムネ瓶を二つ。良く冷やされていて美味そうだった。

「いただこう。ありがとな」

 

「どういたしまして。それじゃあ涼風も」

 ことんと、指でガラス玉を押し込んだ。溢れ出る炭酸水が手を汚す。それも何だか楽しい。

 迷わずに飲む。喉を流れる炭酸が心地良い。どこか科学的な、それでいて爽やかな甘みが好きだ。

 

 一息で飲み干した。随分と喉が渇いていたのだろう。

 ころんと、独特な瓶の中に入ったガラス玉が鳴る。夏の訪れ。これもまた、夏の象徴の一つだった。

「か~! 暑い夏はやっぱりこれだね!」

 

 随分と美味そうに飲むものだ。愛らしくも豪快であった。

「そだ。昼食も持ってきたよ!」

「何から何まですまんな」

 つい謝った俺の背中をばしばしと叩きながら。

 

「水臭いこと言わないで。ささ、あったかい内に食べよう!」

 らしい言葉で励ましてくれた。小さな手のひらで叩かれるのが心地良い。変態だ。…いや、変態的な意味じゃないけども。

 涼風が持ってきてくれたのは焼きそば二つだ。一つは大盛り。俺の体格を気遣ってくれていた。大盛り焼きそばと割り箸を渡された。

 

 香ばしい匂いの焼きそばが、疲れた体を刺激する。たまらず腹が鳴った。彼女の細いお腹も鳴る。思わず二人で顔を見合わせて、笑った。

 それにしても良い匂いだ。食べる前から味が分かるぜ。

 

 …そうして、予想外と言えば失礼だけれど、本当に気が利く子であった。

「「いただきます」」

 二人仲良く焼きそばを食べはじめる。焼けたソース味。程良くのびた感じの麺が良い味を出している。豚肉とキャベツのアクセントが素晴らしい。

 

 これぞ屋台の味である。それでいて、しっかりと調理者の腕を感じる。まさに夏まっしぐらな良い焼きそばだった。

 黙々と二人で食べ進めて、食べ終わりはほぼ同時だった。

「「ごちそうさま」」

 

 二人で砂浜に座り込んで、のんびりと時間を過ごしていく。

「は~さすがは鳳翔さんだねえ」

 予想はしていたが、さすがに涼風が作ってはいないらしい。あまりにも料理になれた物の一品だった。

 

「良い味だった」

 食べ飽きないお袋の味。高級料理とはまた違った、何度でも食べたくなるあじだったんだ。

「うんうん。ああ言うのを熟練の味って言うんだろうさ」

 

 にこにこと楽しそうに笑いながら、彼女は言葉を続ける。

「で、どうする?」

「少し腹を休めたい」

 走り回って、お腹いっぱいに食べたんだ。少し疲れが出てきている。

 

「なら木陰で休もうか」

 二人で立ち上がり、日の差さない木の下で休み始めた。良い景色だ。自然を残しつつ、海の楽しさも満喫させてくれている。

 ここで海祭りなんかをしたら、滅茶苦茶楽しいだろう。

 

 その時は一般の人が来たりして、そこで艦娘との恋が始まったり。ふふふ。夏だからか。妙にロマンチックな俺が出ていた。

「…午後からはどうする」

 誤魔化すような言葉。もちろん涼風は気付かず。

 

「へっへ。実は水着なんて持って来てんだけど」

 悪戯な笑みを浮かべて、水着を見せてくれていた。やけに大きな袋だと思ったけど、本当に気が利く子だ。まったく楽しい提案をしてくれる。

「涼風と一泳ぎ。どう?」

 

「良い提案だ」

 お腹を休めたら楽しもう。深海棲艦を気にせず。本当に贅沢な遊びである。

「よしよし。じゃあもう少しのんびりしたら、贅沢な海遊びをしよう!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。