一人泣き。涙が流れ落ちた頃に、涼風が戻ってきてくれた。
「待たせちゃったか?」
気遣うような優しい表情だ。胸に沁みる。明るさと爽やかさを感じられた。
「いや…ありがとう」
にこりと彼女が笑う。
「ん。ほら、しっかりと取ってきたよ」
手にした袋からラムネ瓶を二つ。良く冷やされていて美味そうだった。
「いただこう。ありがとな」
「どういたしまして。それじゃあ涼風も」
ことんと、指でガラス玉を押し込んだ。溢れ出る炭酸水が手を汚す。それも何だか楽しい。
迷わずに飲む。喉を流れる炭酸が心地良い。どこか科学的な、それでいて爽やかな甘みが好きだ。
一息で飲み干した。随分と喉が渇いていたのだろう。
ころんと、独特な瓶の中に入ったガラス玉が鳴る。夏の訪れ。これもまた、夏の象徴の一つだった。
「か~! 暑い夏はやっぱりこれだね!」
随分と美味そうに飲むものだ。愛らしくも豪快であった。
「そだ。昼食も持ってきたよ!」
「何から何まですまんな」
つい謝った俺の背中をばしばしと叩きながら。
「水臭いこと言わないで。ささ、あったかい内に食べよう!」
らしい言葉で励ましてくれた。小さな手のひらで叩かれるのが心地良い。変態だ。…いや、変態的な意味じゃないけども。
涼風が持ってきてくれたのは焼きそば二つだ。一つは大盛り。俺の体格を気遣ってくれていた。大盛り焼きそばと割り箸を渡された。
香ばしい匂いの焼きそばが、疲れた体を刺激する。たまらず腹が鳴った。彼女の細いお腹も鳴る。思わず二人で顔を見合わせて、笑った。
それにしても良い匂いだ。食べる前から味が分かるぜ。
…そうして、予想外と言えば失礼だけれど、本当に気が利く子であった。
「「いただきます」」
二人仲良く焼きそばを食べはじめる。焼けたソース味。程良くのびた感じの麺が良い味を出している。豚肉とキャベツのアクセントが素晴らしい。
これぞ屋台の味である。それでいて、しっかりと調理者の腕を感じる。まさに夏まっしぐらな良い焼きそばだった。
黙々と二人で食べ進めて、食べ終わりはほぼ同時だった。
「「ごちそうさま」」
二人で砂浜に座り込んで、のんびりと時間を過ごしていく。
「は~さすがは鳳翔さんだねえ」
予想はしていたが、さすがに涼風が作ってはいないらしい。あまりにも料理になれた物の一品だった。
「良い味だった」
食べ飽きないお袋の味。高級料理とはまた違った、何度でも食べたくなるあじだったんだ。
「うんうん。ああ言うのを熟練の味って言うんだろうさ」
にこにこと楽しそうに笑いながら、彼女は言葉を続ける。
「で、どうする?」
「少し腹を休めたい」
走り回って、お腹いっぱいに食べたんだ。少し疲れが出てきている。
「なら木陰で休もうか」
二人で立ち上がり、日の差さない木の下で休み始めた。良い景色だ。自然を残しつつ、海の楽しさも満喫させてくれている。
ここで海祭りなんかをしたら、滅茶苦茶楽しいだろう。
その時は一般の人が来たりして、そこで艦娘との恋が始まったり。ふふふ。夏だからか。妙にロマンチックな俺が出ていた。
「…午後からはどうする」
誤魔化すような言葉。もちろん涼風は気付かず。
「へっへ。実は水着なんて持って来てんだけど」
悪戯な笑みを浮かべて、水着を見せてくれていた。やけに大きな袋だと思ったけど、本当に気が利く子だ。まったく楽しい提案をしてくれる。
「涼風と一泳ぎ。どう?」
「良い提案だ」
お腹を休めたら楽しもう。深海棲艦を気にせず。本当に贅沢な遊びである。
「よしよし。じゃあもう少しのんびりしたら、贅沢な海遊びをしよう!」