静かに悩む俺の姿を見て、彼女達は優しい声で告げる。
「司令官。響を信じてあげて」
「響ちゃんは残酷な嘘を言わない子なのです」
嘘をついて、俺の欲には応えないだろう。今までの好意的な付き合いだって、嘘じゃないんだと信じたくなる。
嘘じゃないことは分かっているのに、それでも迷ってしまう俺の心。解きほぐすような優しい言葉達だった。思わず笑みが零れた。泣き出しそうな顔に似合っていないだろうか?
「…ふっ。さすがは響の姉妹達だ。気づかいが出来る良い子だな」
本当に優しい子達である。ありがたい限りだ。
「まあね!」「姉妹なのです!」
ふふんと楽しそうに胸を張っている。不思議とドキドキしない。単純に微笑ましい。これが父性か。俺、お父さんになっちゃう。
…響は、その、えっと。つ、つま的な? いや刺身についた細切り大根じゃなくて。――奥さん的な。うむうむ。
『創、今日はどうする?』名前呼び良いねえ。
『あなた、今夜はその』あなた呼びも最高だねえ!
『君がパパになるんだよ!』パパにされちゃう!!
うひょひょ!! 良いぜ。良いねえ。幸せだ。
そいつは本当に幸せなのだろう。俺は、そんな幸せに浸る俺を許して――阿呆が。
龍驤は俺を許してくれた。ここで、艦娘達に許され続けている。いいかげんにしろ。俺だって頑張ってきたんだ。頑張れてこれたんだ。
結果は、理想的とはいかなかったかもしれない。終戦だって、矢面に立つ形ではなかったかもしれない。
それでも、頑張ってきたんだ。ここまで戦い続けてきたんだ。それは、俺にチート能力がなかったせい。
そうして、能力がなかったおかげでもある。頑張ってきたと胸を張れる。俺の弱さにも感謝したい。
「ならば俺も向き合おうか」
言葉にした。声はもつれず。ただ通るように口から出てくれた。迷いはない。躊躇いもない。不思議と爽やかな心が残っている。
二人が笑ってくれた。電が前に出て、俺に右手を差し出す。
「約束なのです」
「約束だとも」
電と指切りをした。少女との固い約束。そんな俺達を見ながら、堂々と雷らしく言うんだ。
「絶対だからね!」
「うむ。違えないぞ」
雷へ誓った。少女との裏切れない誓い。ならばもう良いだろう。いい加減、踏み出そうじゃないか。
自覚し一度は目を背けようとした先で、終戦と姉妹達の後押しがあった。何よりこれまで歩んできた、歩ませてくれた道が、全てを認めてくれる。
向き合いを決めた心はしなやかに、ただ静かで心地良く。一日を終えていった。