いちゃいちゃ大好き提督日常   作:ぶちぶち

303 / 322
良い酔い時間です

 那珂の歌や、茶々を入れる川内のおかげで酒が進んでいく。意外にも神通が一番呑んでいた。

 早々に那珂は酔いつぶれて、他二人はほんのりと顔が赤い。

 そういう俺はあまり酔わず。冷静に場を眺めている。ぐにぐにと俺の頬に川内がちょっかいをかけて、神通が慌てたり。

 

 そうして、いつもならば酔える量を飲んでいても、不思議と意識が醒めていた。楽しくないわけではないが落ち着いている。

 楽しくない、わけではないのだ。ただ、響は今一人なのだろうか。…下らない。川内達に失礼な考え方だった。

 

「あ、あの!」

 神通が顔を真っ赤にして言った。愛らしい。しかし、どうしてそこまで緊張しているのだろう? 畏怖されているのだろうか。

「どうした?」

 

「尊敬しています…」

「ありがとう」

 消え入りそうな声での言葉だ。それでも、深く強い尊敬の心が伝わった。

 神通が一番、俺を軍神として見てくれているかもしれない。良い意味で、今向き合っていて辛くない相手だった。

 

 軍神、軍神か。積み上げてきたモノの価値は分かっている。かつての仲間達が、ここで出会えた者達が、俺の価値を認めてくれている。

 それを、一番認めてくれていた少女がいた。いつだった傍らで、俺と苦楽を共にしてくれたんだ。

 

 壊してしまったのだろうか。本当に、艦娘と提督なんて関係に戻れるのだろうか。気安く話せていた時間を、取り戻せるのだろうか。

 考えても仕方のないことが浮かぶ。今、一番傷ついているのが響だからこそ。俺は俺自身が許せない。

 

 彼女に、俺を拒絶させてしまった。未熟な在り方が許せないんだ。もっと格好良く言葉を紡げなかったのか。どうして、どうして…!

 ――落ち着け。慌てるな。今は、川内が許してくれたこの時間を味わおう。

 

「提督、話したいことがあります。いっぱいあります」

「お、おう?」

 それにしても神通の顔が真っ赤だ。緊張や照れだけでなく。酒気を強く感じる。

 

 酔いつぶれた那珂ほどでなくても、随分と酔っているらしい。そろそろ神通も潰れそうだ。ちらりと那珂の方を見ると、多少衣服が乱れている。

 いつもならば興奮するのだが、今は不思議と落ち着いていた。つまらない奴になったと思う。ふふふ…はあ。

 

「神通~緊張しすぎだって」

 にやにやと笑っている。川内らしい笑み。響やかつての仲間を除けば、彼女が一番俺を人としてみてくれている。

 等身大の相手として。弟分や父性などは見出さず。仲の良い相手として見てくれている。

 

 それは辛いのだろうか。つらつらと脳が回っている。酒に酔ってきたのかもしれない。

「でも」

「そこまで気を張らないでくれると嬉しい」

 

 素直に言葉を伝えた。軍神としての敬意はありがたいが、それで萎縮されるのはさすがに辛いんだ。

「提督…えへへ」

 

 無邪気な笑顔だ。こうしてみると、神通も確かに妹なのだろう。甘えの雰囲気が愛らしい。

「すぴ~」

 寝息を立てている那珂ちゃんは、もっと愛らしい。本当に純粋な寝顔であった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。