那珂の歌や、茶々を入れる川内のおかげで酒が進んでいく。意外にも神通が一番呑んでいた。
早々に那珂は酔いつぶれて、他二人はほんのりと顔が赤い。
そういう俺はあまり酔わず。冷静に場を眺めている。ぐにぐにと俺の頬に川内がちょっかいをかけて、神通が慌てたり。
そうして、いつもならば酔える量を飲んでいても、不思議と意識が醒めていた。楽しくないわけではないが落ち着いている。
楽しくない、わけではないのだ。ただ、響は今一人なのだろうか。…下らない。川内達に失礼な考え方だった。
「あ、あの!」
神通が顔を真っ赤にして言った。愛らしい。しかし、どうしてそこまで緊張しているのだろう? 畏怖されているのだろうか。
「どうした?」
「尊敬しています…」
「ありがとう」
消え入りそうな声での言葉だ。それでも、深く強い尊敬の心が伝わった。
神通が一番、俺を軍神として見てくれているかもしれない。良い意味で、今向き合っていて辛くない相手だった。
軍神、軍神か。積み上げてきたモノの価値は分かっている。かつての仲間達が、ここで出会えた者達が、俺の価値を認めてくれている。
それを、一番認めてくれていた少女がいた。いつだった傍らで、俺と苦楽を共にしてくれたんだ。
壊してしまったのだろうか。本当に、艦娘と提督なんて関係に戻れるのだろうか。気安く話せていた時間を、取り戻せるのだろうか。
考えても仕方のないことが浮かぶ。今、一番傷ついているのが響だからこそ。俺は俺自身が許せない。
彼女に、俺を拒絶させてしまった。未熟な在り方が許せないんだ。もっと格好良く言葉を紡げなかったのか。どうして、どうして…!
――落ち着け。慌てるな。今は、川内が許してくれたこの時間を味わおう。
「提督、話したいことがあります。いっぱいあります」
「お、おう?」
それにしても神通の顔が真っ赤だ。緊張や照れだけでなく。酒気を強く感じる。
酔いつぶれた那珂ほどでなくても、随分と酔っているらしい。そろそろ神通も潰れそうだ。ちらりと那珂の方を見ると、多少衣服が乱れている。
いつもならば興奮するのだが、今は不思議と落ち着いていた。つまらない奴になったと思う。ふふふ…はあ。
「神通~緊張しすぎだって」
にやにやと笑っている。川内らしい笑み。響やかつての仲間を除けば、彼女が一番俺を人としてみてくれている。
等身大の相手として。弟分や父性などは見出さず。仲の良い相手として見てくれている。
それは辛いのだろうか。つらつらと脳が回っている。酒に酔ってきたのかもしれない。
「でも」
「そこまで気を張らないでくれると嬉しい」
素直に言葉を伝えた。軍神としての敬意はありがたいが、それで萎縮されるのはさすがに辛いんだ。
「提督…えへへ」
無邪気な笑顔だ。こうしてみると、神通も確かに妹なのだろう。甘えの雰囲気が愛らしい。
「すぴ~」
寝息を立てている那珂ちゃんは、もっと愛らしい。本当に純粋な寝顔であった。