夜は深まり時は進む。やがては神通も意識がなくなり。静かに眠り始めた。那珂と神通を川内がベッドに寝かせて、俺達の酒は続いていた。
時計の音がする。静かだ。いつも明るく楽しむ川内が、しっとりと微笑んでいた。こくこくと互いに酒を飲んでいて悪くない時間だった。
「…二人とも寝たか」
なんとなく言葉に出してみた。どちらとも穏やかに寝息を立てていた。騒がしいイメージのある那珂も、寝言一つなく寝入っている。
「なんだかんだで緊張してたんだろうね~」
神通は気を張っていたし、那珂もアイドルになりきれていなかった。ふふふ。それでも俺をもてなそうとしてくれて嬉しかったぞ。
「川内は疲れていないのか?」
気遣うように彼女を見れば、穏やかに笑顔を返された。可愛い。こうしてみると本当に美人である。
それを感じさせない位に、川内も独特な雰囲気の女の子であった。夜戦! 夜戦!! ふふふ。それが彼女の良い所なのだ。
「私は提督に慣れてるから」
「失礼な」
「ふっふっふ」
楽しそうに笑ってくれた。こうして冗談を言い合える仲だ。それだけの付き合いがあった。思えば、俺が暴走しようとした時に止めてもくれた。
礼を言った時に水臭いと笑って、肩を叩いた川内を覚えている。
「それに。夜はまだこれからでしょ」
とはいえ寝入る彼女達に気を遣っては、楽しく会話もできなかろう。それは川内も思っていたのか。
「ちょっと場所を変えよっか」
なんとはなしに提案してくれた。これが普通の美少女相手だと緊張したけど、川内だからなあ。ふふふ。本当に仲良くなれた。
「ならば俺の自室で良いだろう」
「きゃ~襲われる~」
小声で叫ぶとは器用な奴め。そもそも俺が襲うとしても、艦娘には勝てんよ。いや提督権限もあるけどさ。そこまでするなら自室に誘わなくてもやれる。
まあ童貞だからな! 入れる位置も分からんかもな!! …死のう。落ち着け。
「じゃあ行こっか」
川内を伴って自室まで戻ってきた。あまり物はなく。適当にウィスキーやらを取り出して、チョコレートなんぞのつまみも取り出す。
何度か自室に入った事のある彼女は、適当な座布団に腰を落ち着けた。
「相変わらず物が少ないね~」
寝るためのベッド。シャワー室が隣接していて、後は本棚位か。簡易的な台所などもあるが、一般的な部屋みたいに飾り気はない。
「これでも増えた方だがな」
来客用の座布団を用意したのだ。これだけでも変化である。
すぐに酒やつまみを取り出せるように、ミニ冷蔵庫なども用意した。元々おやつなどは用意していたけど、人を招けるように増やしたのだ。
「あらためて」「ん。乾杯だね」
キンッとグラスが鳴った。しっとりとした時間が流れは始める。
「ふう。今日は良い夜だね」
艶やかに微笑む彼女は、酔いを感じ始めた俺に毒だった。心臓が破裂しそうだ。あれ? 不思議と緊張しているぞ。川内だからと思った俺はどうした
普通に可愛い。いや、滅茶苦茶可愛いんだが。川内だからな。当然だ。
ああくそ。普通に酔ってきた。ふふふ。楽しい。
「悪い夜があるのか?」
「――ないかな!」
満面の笑顔で断言していた。川内だ。川内だった。
「だろうな」
「ふふ。やっとしっかり笑ってくれた」
頬に手を当てると俺は本当に笑っていたらしい。ああ。どれだけ気を張っていたのだろう。落ち込んでいたのだろう。
にやにやと彼女は笑っているが、安心したように気を抜いてくれていた。心配をかけていたんだ。
「…すまん」「気にしないでいいって。水臭いぞ~」
ばしばしと頭をたたいてくる。心地良い力加減が愛らしい。
「大分酔ってきたね」
ぱたぱたと彼女が手で扇ぐ。顔が真っ赤だ。随分と酔っているらしい。
「ね、提督」
「うん? …うおっ!?」
いきなり川内に押し倒された!? う、馬乗りになった彼女が微笑む。なんて艶やかな微笑みだろうか。とろんとした瞳が俺を見つめていた。脳の裏側がじくじくとする。心臓がうるさい。情事の、情事の匂いがする。
「静かに。騒がしいと誰かが起きちゃうでしょ」
そっと、羽が触れるような柔らかさで指が触れた。俺のくちびるに触れた。今にも壊れそうな川内の、美しい少女の指が触れている。
「夜戦、しよっか」