熱に浮かされたように頭が動かない。ぼうっとしてく。甘い匂いがする。熱を感じる。そうだ。俺の上に乗る川内の体温を感じる。
俺の脇腹を挟む彼女のももの感触。不思議な位に感じる重みは軽かった。じわじわと脳みそが現実を認識していく。
今、俺は川内と情を交わそうとしている。匂い立つほどに膨れ上がった、彼女の情愛が脳みそを融かしてしまいそうだった。
「だ、だめだ」
絞り出すように、かすれた声で言葉を紡いだ。
何の説得力もない。もう俺のものは痛い位に張り詰め始めていた。
目が、彼女の瞳からそらせない。
仄かに嗜虐的な、それでいて魅力的な笑みを浮かべて、潤んだ目で俺を見つめている。頬が上気していた。川内も緊張している。それ以上に興奮している。
それは、おそらく俺も。
「どうして?」
からかうような聞き方だ。脳が痺れてしまいそうだ。
「そういうのは好き合っている者達が」
「私は提督が好きだよ」
なんて、なんて真っ直ぐな告白だろうか。相手にどう思われるかじゃない。格好付けだとかそんなものもない。
熱く。ただひたすらに真っ直ぐな好意。返答出来ない。
「もちろんエッチな意味でもね」
くすりと微笑んで彼女の言葉は続く。
「真っ直ぐな瞳で私を見てほしい」
仄かに潤み熱情を孕んだ瞳が、俺の目を見ている。真っ直ぐに見つめてくれている。それだけで達しそう。
「安定した声でいじめてほしい」
耳元でささやく声は俺の脳を犯し。混じりけなく甘みを残してくれた。心臓が爆ぜそうだった。
「優しい熱を重ね合いたい」
川内が上体をかがめて、俺を抱きしめる。
胸と胸が合い、頬と頬が触れ合っている。心臓の音がうるさい。お互いに。伝わるほどの距離で抱きしめられている。
壊れてしまいそうな、そんな彼女の体を抱きしめ返してやれない。
「武骨な掌で私の中をいじってほしい」
ああ、もうなんだろう。俺はエロい夢を見ているのだろうか。夢精か。あほう。リアルすぎる。どくどくと熱が伝わっている。
川内は俺に本気なんだ。俺なんかに本気なんだ。
胸が張り裂けそうな切なさ。壊れちまいそうな程感情が高ぶっている。熱い。気絶しそうな程に血が燃えている。
これが本気の想いだ。俺は、俺は。
「提督の、創の男で私の女をかき乱してほしいんだ」
「ぁ、あっ、えっと」
間抜けな言葉しか返せなかった。川内が少しだけ顔を浮かせて、至近距離で見つめている。
長い睫毛。彼女の黒髪が頬に触れた。そんなに近い。近い。もう狂いそうだ。
とっくに狂っているんだろうか。
「……キス。したい。んっ」「んんっ!?」
くちびる同士が融け合った。触れ合った。柔らかくて、でも奥に歯の感触もあって。滑らかに触れあい離れていった。
これは、あれだ。あれだよな。どれだ。経験ないし。いやあったっけ。こんな衝撃はなかった。滅茶苦茶想いが届いてきて。
俺を愛している川内の想いが届いた。
そうだ。えっとこれはその、あれ、そう。うん。――キスだこれ!!
「あはっ! こんなに良いものなんて、信じられない」
「せ、川内…それ、えっと。大切にしないと」
「大切だからしたんじゃん」
もっと上体を起こしまた馬乗り。固まった俺の右腕をとって、掌を自らの胸に押しつけた。
「鼓動が掌に伝わってる? これだけドキドキしてるんだよ」
す、すごい柔らかい。えっと、その柔らかいです。本当に柔らかいです。
めちゃくちゃ心臓の圧が、掌に伝わっている。でも柔らかいです。布越しなのがとても窮屈で、もっともっとと心は望んでいる。
正直に言えば、本当に酷く正直に思えば、今ここで滅茶苦茶に彼女を抱きたい。川内と、エロいことをしたい。
その心に嘘はない。でもそうじゃないと叫ぶ俺がいる。
そうじゃ、ねえだろう。いつもみたく、相手に好意がないから、そういう想いじゃないからと逃げられない状況。ここで逃げれば、確実に川内が傷つく。
彼女が、自らの貞操を大事にしていないわけがない。
ここまで酔う状況でも、川内から仄かに緊張すら感じるんだ。それでも、俺を求めているんだ。求めてくれている。
ならば何を拒む。応えれば良いだろう。エロエロ、萌え萌えを求めてここまで頑張ってきたんだろうが!! 必死こいてゲロ吐きながら、諦めなかったんだろうよ。
それは誰と? 俺の心は、本当に俺が求めているのは、狂っちまいそうなほど想っているのは誰だろう。
日常の萌えは得られた。愛おしい艦娘と触れ合えた。でも、こうして壊れそうな熱を交わし合いたいと願ったのは。
「…本気で止めないと止まってあげない」
挑むように、答えを分かりきったように。それでも諦めないと、全てを愛していると夜に輝く川内らしさで。
「貴方の本気を聞かせて。貴方のやりたい事を教えて」
迷う俺へと言葉を紡いだ。それが何を意味しても、後悔なんてないと笑っていた。