いちゃいちゃ大好き提督日常   作:ぶちぶち

316 / 322
たとえ同じ艦種でもです

 まず初めにポイントへ辿り着いたのは天龍達だった。

 天龍、龍田、神通、雷、電、暁。戦力の偏りはなく。軽巡と駆逐の水雷戦隊。

 自らの弱さと置き去りにする想いを知る者達の戦い。

 

 対する敵艦隊は戦艦と空母の群れ。

 戦艦が四隻に空母が二隻だ。軽巡と駆逐艦で戦うべき相手ではない。

 でも恐れはなかった。怯えはなかった。

 あるのは必ず勝つという覚悟だけだった。

 

 戦闘が、戦争が始まる。

 敵空母の先制爆撃だ。降り注ぐ爆弾は暴風の如く。範囲内の全てを吹き飛ばし、生存を許さない殺戮の嵐。

 

 駆逐艦を庇うように軽巡が前に出た。そのまま庇うように受けきっていく。いくら対空砲で軽減しようとも、装甲が削られていく。

 肌は黒く煤汚れ。服は破れ、熱気が全身を燃やす様だ。

 

「ぎっ!」

 天龍から呻き声が漏れた。でも彼女は獣のように笑う。

「…甘く、ありませんね」

 神通はほぼほぼ無傷ながら、攻め込む隙を見いだせず。

 

「あらあら。どうましょう」

 龍田はのほほんと笑う。瞳だけが笑みを浮かべていない。

 後ろに控える駆逐艦達は、守られる苦しみを抱く。

 

 熱く。苦しい。

 いくら神通に優れた才能があり。環境を考えれば異常な練度と言えども。この爆撃を受け続ければいずれ轟沈する。

 

 今ならば、今ならば彼女と龍田が突撃すれば相手は殲滅出来る。

 敵艦隊は嘲笑を浮かべ油断していた。

 切り込めば、軽巡のレベルを超えた神通の火力と、龍田の補助があれば落とせるだろう。

 

 だけど、後ろに控える者達は落とされる。

 迷い。勝つために己は捨てられようと、仲間は見捨てられない。

 その様を見通すように、敵艦隊はこちらを笑っているのだ。

 悔しい。神通の歯ぎしりが聞こえた。

 

 状況が厳しいのは変わらない。このまま耐え続けても負けるだけだ。

 揺れ動く神通の横顔を見て、天龍は静かに語る。

「オレはお前みたくなりたかった」

 ぽつりと零れた言葉は不思議な程軽かった。なんでもないような言葉だった。

 

「戦艦や空母相手にも見劣りしない。軽巡洋艦最強の艦娘になりたかった」

「天龍さん…」

「でも、なれねえ」

 そうだ。天龍の性能は神通に及ばない。百回戦えば、百回敗北する。それだけの性能差がある。努力では埋められない。

 

「オレにあるのはちっぽけな刃。必死にかき集めた守るだけの力」

 片目は見えない。敵をぶち抜く火力もない。

「だけど。それでも守りたいと吼えるんだ」

 皆が天龍の言葉を聞いている。

 

 龍田は困ったように微笑んだ。雷と電は胸を張って気合いを入れていた。暁は背筋を伸ばし、堂々と佇んでいた。

 神通は――戦士の顔だ。戦う者の顔だった。

 

「行けよ神通。後ろは気にするんじゃねえ」

「信じています」「任せろ」

 神通は真っ直ぐに突撃を開始した。龍田は少し迷い。笑いかけながら問う。

 

「あらあら。私が残ってなくてもいいのかしら~?」

 いくらなんでも、天龍だけで守れるのか。

 さあて。少なくても皆信じている。それだけだ。

 

「任せろってんだよ。へへ、姉貴が信じられねえのか?」

「…いいえ~信頼してますよ。お姉ちゃん」

「はっ!」

 龍田らしい妖艶な笑みを浮かべながら、神通を追いかけていった。

 

 残された者達は爆撃の未来をひしひしと覚える。

 だからこそ、いつも通りにじゃれ合うんだ。

「天龍さんは電たちが守るのです」

「もっと私たちが頑張るわ!!」

「大人なレディーに任せてよね!」

 

 仲良し駆逐艦の思いだった。負けられない。

「頼りがいのあることで。まったく、しょうがねえな」

 格好つけた微笑みを天龍は浮かべた。

 

 彼女らしい自信に溢れた微笑だった。守る為の笑いだった。

「――来るぞ!! 構えろ!!」

 天龍の激と共に、敵艦隊の猛攻撃が開始される。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。