いちゃいちゃ大好き提督日常   作:ぶちぶち

318 / 322
日常を愛しているからです

 2つめのポイントに着いたのは海風達だった。

 海風、白露、那珂、涼風、五月雨、村雨。

 大きな勇気を振り絞って。なんでもない日常を愛する者達の戦い。対するは北方棲姫率いる深海棲艦共が群れ。

 

 北方棲姫。深海棲艦特有の、塗りつぶしたが如き真っ白な少女。

 双眸は紅く。幼さこそあれど、浮かぶ風貌に弱さは感じられない。

 そんな彼女を守るように戦艦が三隻。数は勝っている。勝っているはずだ。

 北方棲姫と目が合った。

 

 ぶるりと皆の全身が震えた。

 ――なんというプレッシャーか。この中で最も小柄な涼風より更に小さな姫を相手に、魂の底から震える。脚が竦んだ。吐きそうだった。

 これが姫の圧力。艦種の壁を越えた、深海棲艦共が長の姿か。

 

 でも止まらない。負けない。負けるもんか。

 不屈の意志が体を突き動かして、今ここに戦闘が開始された。

 

 戦艦の激しい砲撃に晒されて、艦隊の皆が負傷していく。

 その中でも白露と那珂が、前に立って砲撃を捌いていた。軽巡の那珂はともかく。駆逐艦の彼女は随分とダメージを負っている。

 控えめに見ても中破。大破も遅くは無いだろう。

 

 白露のすぐ後ろで海風は言う。

「あまり前に出過ぎないでください」

「でも!」

 戦況が厳しい。那珂はともかく。他の皆は轟沈してもおかしくない。

 大切な妹達が危険にさらされるのだ。どうして白露が落ち着いていられようか。

 

 限界は近い? なら超えてやる。一番艦だ。守り切れないなら、生きていたってしょうがない。

 ごめんなさいと泣く提督を思い出す。

 妹達が沈めば彼は泣く。誰か一人でも落ちれば、耐えきれない。

 

 なら命を賭ける理由には十分だ。

 さあ、まだ戦え「いい加減にしてください!!」

 いつも落ち着いた海風からの叫び。戦闘中だと言うのに、思わず振り返った。

 泣いている。泣いて、いる。

 

 大粒の涙を流しながら、この極限状態が彼女を突き動かす。

「長女だからって無理されて、いつだって先頭に立って!」

 いつだって太陽みたいな笑顔を浮かべて、皆の幸せを望んでいる強いお姉ちゃん。そんな貴女を誰が守るの?

 

「そんなに私は、私達は頼りがいがありませんか…?」

 しなやかな寂しさが瞳を覆い。いまこの瞬間は時が止まっている。ぽつりと零れた悲しさのまま海風は呟く。

「…お姉ちゃん。お願い。貴女を守らせてよ」

 

「っ! ご、ごめん」

 二人の状況は落ち着いた。合わせて、那珂が元気いっぱいに言うんだ。

「皆、まだまだ踊れる!?」

 

「涼風の本気はまだまだこんなもんじゃないよ!」

 元気いっぱい無邪気な応え。

「この程度の理不尽なら慣れてます!」

 運命に挑み続けた少女の言葉。

「村雨のもっと良いとこ見せたげる!」

 いつも通りの強さを見せる子。

 

「ようし! さあ白露ちゃんも、海風ちゃんも」

 そして那珂は誰よりも明るく。楽しさすら滲ませて。

「にっこり笑って踊りきろうよ!」

「「はい!!」」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。