2つめのポイントに着いたのは海風達だった。
海風、白露、那珂、涼風、五月雨、村雨。
大きな勇気を振り絞って。なんでもない日常を愛する者達の戦い。対するは北方棲姫率いる深海棲艦共が群れ。
北方棲姫。深海棲艦特有の、塗りつぶしたが如き真っ白な少女。
双眸は紅く。幼さこそあれど、浮かぶ風貌に弱さは感じられない。
そんな彼女を守るように戦艦が三隻。数は勝っている。勝っているはずだ。
北方棲姫と目が合った。
ぶるりと皆の全身が震えた。
――なんというプレッシャーか。この中で最も小柄な涼風より更に小さな姫を相手に、魂の底から震える。脚が竦んだ。吐きそうだった。
これが姫の圧力。艦種の壁を越えた、深海棲艦共が長の姿か。
でも止まらない。負けない。負けるもんか。
不屈の意志が体を突き動かして、今ここに戦闘が開始された。
戦艦の激しい砲撃に晒されて、艦隊の皆が負傷していく。
その中でも白露と那珂が、前に立って砲撃を捌いていた。軽巡の那珂はともかく。駆逐艦の彼女は随分とダメージを負っている。
控えめに見ても中破。大破も遅くは無いだろう。
白露のすぐ後ろで海風は言う。
「あまり前に出過ぎないでください」
「でも!」
戦況が厳しい。那珂はともかく。他の皆は轟沈してもおかしくない。
大切な妹達が危険にさらされるのだ。どうして白露が落ち着いていられようか。
限界は近い? なら超えてやる。一番艦だ。守り切れないなら、生きていたってしょうがない。
ごめんなさいと泣く提督を思い出す。
妹達が沈めば彼は泣く。誰か一人でも落ちれば、耐えきれない。
なら命を賭ける理由には十分だ。
さあ、まだ戦え「いい加減にしてください!!」
いつも落ち着いた海風からの叫び。戦闘中だと言うのに、思わず振り返った。
泣いている。泣いて、いる。
大粒の涙を流しながら、この極限状態が彼女を突き動かす。
「長女だからって無理されて、いつだって先頭に立って!」
いつだって太陽みたいな笑顔を浮かべて、皆の幸せを望んでいる強いお姉ちゃん。そんな貴女を誰が守るの?
「そんなに私は、私達は頼りがいがありませんか…?」
しなやかな寂しさが瞳を覆い。いまこの瞬間は時が止まっている。ぽつりと零れた悲しさのまま海風は呟く。
「…お姉ちゃん。お願い。貴女を守らせてよ」
「っ! ご、ごめん」
二人の状況は落ち着いた。合わせて、那珂が元気いっぱいに言うんだ。
「皆、まだまだ踊れる!?」
「涼風の本気はまだまだこんなもんじゃないよ!」
元気いっぱい無邪気な応え。
「この程度の理不尽なら慣れてます!」
運命に挑み続けた少女の言葉。
「村雨のもっと良いとこ見せたげる!」
いつも通りの強さを見せる子。
「ようし! さあ白露ちゃんも、海風ちゃんも」
そして那珂は誰よりも明るく。楽しさすら滲ませて。
「にっこり笑って踊りきろうよ!」
「「はい!!」」