そ、それにしても…いつ終わるんだろう?
響の時はもっと短かったのに、ずっと撫でてる。
掌は心地良いし、提督が良いんなら構わないけどさ。でも、どうしよう。私から止める? 失礼だ。そもそも私からお願いしたんだ。
そりゃあ、響の懇願もあったけど。本当に嫌だったなら、拒絶出来たよね。
う~ん…うん!?
提督の手が頭から下がって、ほっぺを撫で始めた。
あ、あれ? おかしい。響の時は手櫛だけだったよね。なんでほっぺも?
髪と違って、提督の体温や掌の感触がダイレクトに伝わる。
傷だらけの皮膚。がさついてるからこそ、変に刺激が強くて心地良い。提督の体温。掌は温かくない。冷え性? 分からないけど、気持ちいい温度。
すりすりと手が撫でてく。ぷにぷにと指がつつく。
う、あ、う~! 恥ずかしい。めっちゃ優しいんだけど!
だからこそ、とても恥ずかしい。これ止めたら駄目なのかな?
提督を見てられず、響をちらりと見れば。
にこりと笑って、私にサムズアップしていた。あ、うん。ご満足してるみたい。
ソレを提督に気付かれないようにしてる。
彼女の立ち位置が分からない。いや、撫でられるの嫌じゃないけど。
嫌じゃない。嬉しい。あはは。私も変になってるかな。
でも艦娘として素直な気持ちで、提督と触れ合うのは良い。
女として、なあんてのはない。多分。
これが正しい気持ちかは分からない。でもさ、掌から伝わるように、頑張ってるんだ。少しでも癒やされてくれたら、私も嬉しいな。
うんうん。こうして撫でられると、落ち着きが出てきた。
慣れてきたかな。ふふふ。逆に私の方が癒やされてるかも――指がくちびるに触れる。
っ!? そ、そこは違うでしょ。けど、けど。触れてる。触れられてる。
今度こそ提督を見上げた。自分でも涙目になってるのが分かる。
それは艦娘への触り方じゃないでしょ。駄目だ。嫌だ。
心臓がうるさい。目を逸らした女としての心を、すぐに見つめさせられた。
提督と目が合う。熱い。熱い心が視線から伝わる。
ちょっと怖い。目つきの悪さで余計に怖かった。
――彼の手が震えてる。
もう本当に分からない。疑問の感情が頂点に達した。
怯えてる? なにかを考えてるみたい。まさか止め時が分からないとか?
だとしたら少し可愛い。誰かに触れるのが慣れないのかな。
それとも、慣れとか考えられない位うれしいと思っているのか。
これも分からない。だけど、提督が勇気を出してるのは分かる。
緊張。異性だ。提督として触れるにしても、男として触れるにしても。
私たちと近づく程、違いが分かって怖くなる。
仲良くなっても拒絶されるかもしれない。誰かに触れるのは怖い。
そうして、軍神として。彼は人々に思われてる。その重圧は。
と、とりあえず止めよう。提督の手も頭に戻ったし。
…ん。やっぱり落ち着く。悪い気分じゃない。私も勇気をだそう。