「もちろん資材は大切です。なかったら戦えないし、提督が後ろに控えていてくれるから、前線が安心しているのも分かります」
だめだ。これ以上、取り繕いはしたくない。
怒られもしない。不思議な確信があった。
ふと、響の方を見た。愛おしそうに提督へ微笑んでいる。見守っている。
「私はさ。好きな事をしてる。大好きな夜の海にいるだけで、私の魂は満たされてる」
凪いだ夜の海を知ってる? 星空の輝き。月の満ち欠け。冷えた空気は心を静めて。世界と同化するように魂がとける。
堪らない。なにかが始まりそうなワクワク感。
「…まあ、こんな自由が許されてるのは、最前線で通用しない艦種だからってのもあるけど」
前線で最重要視されるのは、圧倒的な耐久と常軌を逸した殲滅力。即ち戦艦と空母の二大戦力。
潜水艦も相手取れるよう、新開発された艦装だってある。
それでも対潜能力はかなり劣るけど。私たちの脆さを考えて、だ。
適材適所だけどね。比較的安全な所に、私たちは配属されるんだ。
「とにかく。提督は何がしたいの?」
私の問いかけに考え込んで、うなり声すら聞こえそう。
提督の様子を優しい眼で響が見守ってる。少なくとも彼女は、やりたい様にやってるんだろうね。
私もそう。提督は?
「――皆のらしい所を見たいんだ」
困ったような彼の微笑み。どこか取り繕ってもいるけど、本音を聞かせてくれてる。
唐突に始めたから驚いたけど、なんてことはない。
私たちと触れ合おうとしてくれてるんだ。
「川内さんは勘違いしているかもしれないけど、司令官は楽しくて此処にいるんだよ」
「そうだとも。俺は君達の在り方を好ましく思っている。だから、もし良ければだが」
どこか自嘲する笑みを浮かべても、言葉だけは迷いなく。
「君達の日常に、俺も混ぜてはくれまいか」
「…そっか。うん――じゃあ夜戦だね!」
私の全て。話し合おう。知り合おう。楽しみ合おう。ふふっ。良いね。今日の夜は最高になる。
私が言うんだ。絶対だよ。
「ほう」
「今日私は夜あいてるから、飲み物とか用意して部屋に行ってもいい?」
ジュースが良いかな。お酒で乾杯するのはまだ早い。
うんうん。考えただけで楽しみだ。さっそく準備して、提督の部屋に向かおう。
「ありがたい」
「那珂と神通には悪いかもだけど、夜通し語り合おうよ!」
那珂はともかく、神通は羨みそうだ。今度紹介してあげないとね。
「川内さん。そこに私の席はあるかな」
遠慮がちな響の声。変な所で気を遣うんだから。大体、響がいないと絶対に間がもたないでしょ。
「ふっふっふ。もちろんだよ。いっぱい話を聞かせてね」
「任せて」
ふふんと声が聞こえそうなやる気。ああ。やっぱり響も可愛いやつ。
ちらりと提督を見たら微笑んでる。うん。私も楽しみだ。