それから午前いっぱいを使っても、響のおパンティは見られなかった。スカートの先が遠すぎる。僅か50cmにも及ばぬ布切れが、今の俺には城壁に等しい。
位置関係は変わらず。俺は提督用の椅子に、彼女は秘書艦用の椅子に座っている。
机に隠されているのと、俺から見て左斜め前にいるので、スカート所か下半身すら見えない。机が邪魔すぎる。提督権限で消し飛ばしたい。そうしたい。
「なあ司令官」
「どうした?」
「朝から、もう何局もやっているね」
「飽きたか」
もう正午に近い。一手二十秒で指しているので、かなりの数をこなしていた。
俺は飽きない。響の声が好きだ。考える姿も美しい。偶に顎をなでる彼女の指を見ていると、堪らなく切ない気持ちになれる。
あの透明な眼差しには、一体何が映っているのだろう?
脳裏の将棋盤に埋没する響の姿も、どうしようもなく愛おしいんだ。
「違う。そうじゃなくて」
ちょっと困った風に、だけどなぜかいじわるな笑みで。
「そろそろ、賭けの一つでもしない?」
「何を賭ける」
迷わず問いかけたからか、嬉しそうに響が答える。
「命…はお互いに賭け合ってるから」
さらりと言える響さん、マジリスペクト。なんだろう。でもパンツを見せてとは、真正面からいけないのだ。
いや、そうなのだけれど。そう考えると他の転生者ってすげえよな。真正面からいけるキャラ性とか、エロスを引き寄せる運命力とか。まじリスペクト。
「古典的だが、命令権なんてどうだろう」
「それも互いに、尊重しあっているだろう」
俺は、響にだけは提督権限を使えない。能力としてではなく。心情の問題だ。
『…この外道!』
と彼女に言われたなら、あ、うん。きついなあ。辛い。否定出来ないのが尚酷い。
「だからさ」
響が笑う。格好良い微笑み。本当に飽きない。この子との時間は俺の全てだ。
「だから、尊重しないことを望み合おう」
ふぉ~!! こ、これってアレですよね。誘われてるんですよね!!
い、良いのかい。これはアレかい。どれだ。もうわけが分からん。しんみりとした空気が吹っ飛んだぜ!!
パンツどころかその先に『…この外道!』
駄目だ!! 線引きが難しい! どこからどこまでありなんだ。
「戦場から離れて、退屈しているのか?」
「違う。断じて違う」
彼女の瞳が仄かに揺れた。珍しい感情の揺らぎ。きゅんと胸が切なくなった。
「日常が楽しいからこそのスパイスだ」
響含め、第六駆逐隊は揃っている。天龍型の姉妹もいる。天龍幼稚園も出来るのだ!!
別に俺の趣味ではない。俺はロリコンじゃない。そっち系列は響限定だ。
何度も言うが、この鎮守府の目的は資材の管理。および遠征による資材の補給である。
駆逐艦、軽巡洋艦、潜水艦。これら三種類の艦娘が色々揃っている。
…逆に言えば、お姉様方はいないんだけどね。残念残念。まあ良いさ。良いんだ。
俺はいつか夕立に懐かれるんだ。ぽい~!! って言われるんだ。
「私が勝ったら、そうだな。食事でも奢ってもらおうか」
あらら。可愛らしい望みだ。少し水臭いぞ。
「それ位なら別に「そうして、食べさせ合おう」