改めて。入室し驚愕している彼女の姿を見る。
白露型駆逐艦の一番艦・白露。栗色の髪。短めな髪とヘアバンドは、彼女の活発な印象を強めている。意思強く自身に満ちた眼だ。くりっとした瞳。
にこりとした笑顔よりは、にひひと元気な笑みが似合う。明るく眩しい美少女。
なのに顔立ちは美しい。これもギャップ萌え。
そうして、駆逐艦にしてはかなりスタイルが良い!
ナイスおっぱい。良いねえ。巨乳は良いものだよ。響は、まあうん。駆逐艦だから。
はっはっは! 活発な感じとギャップ萌え。素晴らしい。
陽光に煌めく露のよう。明るさと愛らしさが合わさった、素敵な子だ。
そんな彼女が、動揺と恐怖に染まって目を見開いている。
髪色と同色の綺麗な茶瞳は、緊張で仄かに震えていた。うむ。どうしよう。
言葉は……俺、声も怖いからな。挨拶しただけで逃げられたからな。
とりあえず大丈夫だと動いて見せて。
「う、うそ。そんな、だめ。動いちゃ駄目!!」
慌てた様子の彼女が、すごい早さで距離を詰めてきた。
そうして、立ったままの俺の前で一旦止まる。近い。
「あ、ど、どうしよ。動かしちゃ駄目で。休ませなきゃ」
躊躇。それはそうだろう。吐血した人間への対応なんて、訓練でも早々あるまい。
深海共に襲われたら、大抵即死するからな。普通の人間は撃たれれば死ぬ。俺のように、撃たれる瞬間を認識出来る化物は、人間と言っちゃ不味い。
鋼の臭いを感じろ。果てしなく自業自得だがな。彼女の心を傷つけたのは俺だ。
さあて。戦場の臭いを思い出して、心も落ち着いてきたぞ。まずは彼女を落ち着かせねば。言葉を出そうとすれば。
「提督。ごめんね」
ぽつりと告げられた声。決死の覚悟すら感じられる。深く決意された声色。
「む?」
彼女に抱き上げられて、ソファに座らされた。今更驚きもしないが、さすがは艦娘だな。八十キロはある体を軽々と持ち上げた。
「机、ちょっと邪魔…!」
白露が長机を移動させる。そうして、座らせられた俺の前に、彼女が屈み込んできた。様子を窺う状態だ。俺の容態を見ているのか? いや、健康体だけど。
良い匂いがする。仄かに汗の匂いと、彼女自身の甘い香り。
川内のソレとは違う。何だろう。活発な少女の匂い。少し汗が強い気がする。
うむ。我ながら変態だ。いやしかし。人類とは皆変態ではなかろうか。俺だけじゃない――そうか。俺は一人じゃなかったんだ。
いかんいかん。突然の彼女の動きに動揺して、思考が飛んできている。
ぽけ~っと状況を見守っていたら。
「提督。苦しいかもだけど!」
「むぐっ!?」
白露に抱きしめられた。な、何で!?
す、すっげえ柔らかい。あれこれおっぱい? 彼女の鼓動音。おっぱいだこれ~!!
これがあの伝説にして終焉を告げる概念にして男の子の夢。
たわわんと揺らぐ概念存在。幻想ですらありうる、巨乳美少女の胸抱きしめか…!!
おほっ。おほほ!! 我が相棒にはない大きなソレ。す、すげえ。これが伝説の。
『殺すよ』
脳内響がキレた。ちょっと落ち着いた。どうしてこうなった。
待て待て。もっと落ち着け。でも柔らかい。わけが分からない。これが俺の運命力か? けれど暖かい。どうしてこうなった。彼女の匂い。もう一度言おうか。
どうしてこうなった!!
衝動のままに、獣となるも良し。か? …ふざけるな。俺を舐めるなよ!!
歴戦錬磨の古強者にして、神として語られし英雄だ。
状況はわけが分からない。しかし、これが彼女の優しさで成された事は分かる! それも俺がバカをしていたからだ!!
この状況に呑み込まれるなおっぱい柔らけえ!! 絶対これノーブラだって!! クーパーのリスクはどこへ消えた。これが一番艦。これが白露型。
なんというエロスの暴力か。もう死んで地獄に逝っちまいそうだ。
まだだ。まだだ! 俺は強い子だ!