彼女の背中を、優しく何度か叩く。それで俺の容態に気付いた様子だ。
「ご、ごめん。苦しかったね」
優しい声だった。慌てていても、心配の念が強いのだ。
軽く抱擁が解かれた。抱きかかえる形から、両肩に手を添えて見つめている。
凜とした意志の強い瞳。自信だけはぶれているけど。白露らしい強い眼差し。
彼女の目が俺を見ている。じ~っと心配している。
すっごく胸キュンする状態だけど。だからこそ、真摯に応えよう。
「落ち着け」
意識して低い声で紡いだ。穏やかに告げたから、恐怖も薄れていると良いな。
…よし。怯えていない。心配しているのは変わらないけど、落ち着いてくれた。
ちょっと残念とか思っていないぞ。本当だぞ。
「提督…?」
俺の一言で彼女の動きが止まった。
「大丈夫だ。ほら白露も座って」
意識しないように抱き上げて、対面の席へと座らせた。
結果として抱擁が解かれる。めっちゃ名残惜しかったけども。落ち着いたなら何よりだ。
「吸って、吐いて。肺と腹部を意識して息をするんだ」
「は、はい」
深呼吸をして、ちゃんと落ち着きを取り戻した様子だ。
素晴らしい。度重なる演習の成果でもある。何よりだ。うむうむ。
さて。色々と乱れているからな。彼女が落ち着く時間の為にも、片付けるとしよう。
「ふっ!」
長机を元の位置に戻した。乱れた部屋を戻していく。ぼけ~っと彼女が呆けている。可愛い。どうしよう。これから告げる言葉で、絶対に怒る気がする。
「これは血糊だ。慌てる必要はない」
「成程――なんで!?」
思っていた通り。立ち上がって普通に怒っていた。しかも涙目になっている。
色々と衝撃的すぎて、限界が来ている様子だ。そうだろうな。うんうん。
などと冷静に考えているのを知られたら、完全にキレそうだ。
ふっ。ここは強面を生かして鎮圧するとしよう。俺は怒る子と泣く子に弱いのだぞ。
そもそも、俺はガチな空気が苦手なのである。仕方ないね。
「理由が必要か?」
「い、いえ。その、申し訳ございません」
うむ。やってしまった。完全に消沈している。俺は最低だ。
所で話は変わるのだけど。
いつも元気な幼なじみが、落ち込んでる姿って胸キュンだよね。
何が良いって、そこから派生する展開が良いよね。
異性を意識する展開も良いし。ケンカ仲間と思っていたけど、実はもっと大切な関係だったと思ったりするのだ。
そこから始まる、愉快痛快青春ラブコメディー!
うん。現実逃避終了。
かなり怒られそうだが、ちゃんと話しておこう。
「その、ちょっとしたおふざけだ」