いちゃいちゃ大好き提督日常   作:ぶちぶち

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いっしょにごはんです

「「いただきます」」

 一つのソファーに並び座って、二人そろっての昼食。ちらりと白露を見れば、にこりと笑って首をかしげた。

 何でもないと目を逸らせば、気にしないでごはんを食べはじめる。

 

「ん~! やっぱりごはんがおいしいと幸せだねえ」

 おにぎりを頬張って、幸せそうに顔を緩めている。表情豊かで萌える。

「そうだな」

 

「ほ、ほんとにそう思ってる?」

 表情筋が死んでいるので、彼女には伝わっていないらしい。

 鏡が近くにないので分からないが、相変わらずの仏頂面なのだろう。

 この鉄面皮も直そうとは思っているけど、中々ほぐれない。どうしたものかね。

 

「もちろんだ」

 かなりの腕前の持ち主が、このおにぎりを作ったのだろう。

 噛んだらほろりと口内で解ける柔らかさ。適度な塩味。梅干しがすっぱ美味い。

 家庭料理の領域は超えず。安心させる口どけと暖かさだ。

 

 おにぎりとして、一つの境地に至っているのではなかろうか。

 胸が熱くなっている。感動しているのだがね。顔は一切動かない!!

「一切表情が変わってないんだけど。このこの」

 つんつんとほっぺをつつかれる。細い指だ。

 

 俺の武骨な掌とは、比べられないほど小さな手。きゅんきゅんとハートに響く。しゃぶりたい。

 おっと落ち着け。変態性が滲み出ていた。落ち着くのだ

「こ、こら。止めないか」

 

「えへへ。提督がにっこり笑ったら止めるよ」

 意識して笑ってみた。頬の筋肉がぶちぶちと言ったが、無視した笑み。どうだろう。

「ごめん…」

 目を逸らされてしまった。冗談とかではなく。ガチトーンで謝られた。

 

「謝るな。泣きたくなるだろう」

 そうだよね。怖いよね。知ってた。

「でさ。提督はいきなりどしたの?」

「うん?」

 

 えっ? なになに。笑顔の話? そんな凶悪な顔で圧力をかけて、どんな意図があったのか。等と言い責めて、俺の心を折りたいのかな。

 被害妄想である。

「ほとんど執務室から出てこなかったし。あいさつもしてなかったよね?」

 

「そうだな」

 思い立ったが吉日。でもないのだが、執務室の改装が済んだからな。

 積極的に関わろうとして、あえなく撃墜されたのである。

 違法行為もしていないのに、なんという悲劇であろう。何度も枕を涙で濡らした。

 

「夕立から聞いたけど、朝にあいさつしたんでしょ」

 どんな風に言っていたのだろう。気になって仕方ないけど、聞くのが怖いからね。しょうがないね。

「言うな。泣きたくなるだろう」

 

「な、なんで?」

 彼女の反応を見るに、夕立は詳細を言ってないらしい。

「…泣いて逃げられた」

「ぶふっ」

 

 こいつ吹き出しやがったぞ。この野郎め。女か。この女め。

 でも可愛いから許しちゃう――待てよ。ここから膝枕に持っていけないか?

「わ、笑うな。怒るぞ」

 ちょっと威圧をした。反応は。

 

「ああ、落ち込んじゃった。ごめんね?」

 にこりと笑って流されている。俺の威圧を、単純に落ち込んだと思ったらしい。

 …嬉しいけど複雑な気分。どうやって枕に持っていけば良いのだろう。

「ほらほら。いっぱいお話しようよ。姉妹のことはあたしがいっちばん知ってるから」


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