集中を高めてから二時間程度。今日の業務はとっくに終了している。
気合い十分に膝枕を目指していたが。無理だった!
くそ! 俺はなんて無力なんだ…前二つが上手くいっていたから、過信していた。
なんかこう、上手いこと膝枕が出来るんだろうなと思っていた。
そうだ。乙女との触れあいは希少である。分かっている。分かっていた筈だろう。
響のパンツを見られたから? 川内の頭をなでなでしたから?
だから俺は、運命に愛されているとでも? ――バカが!
幾重にも地獄を味わってきた。戦ってきて知ったことだろう。
勇気のある一歩を踏み出さなければ、希望なんて得られないのだ。
それはそれとして。秘書艦を頑張ろうと奮起している白露は、最高でしたがね。
お茶を濃く淹れすぎたりとか、書類を書き間違えたりとか。やる気は十分。でも慣れていなくて、頑張る姿に萌えていたぞ。
結局、いつもよりペースは落ちていたけど。楽しさは倍増である。
響との仕事も好きだが、お互いに優秀だからすぐに終わる。味わっている暇がない。
「…仕事がない~!」
涙目で嘆いていた。思っていたよりも遙かに早く、今日の業務が終了したのだ。
ついでに言えば、響と二人で仕事をしていたのならば。
そうだな。昼までには殆ど終了する。後は各々時間を使っていた。
二人でゲームをしたり、川内が遊びに来たこともあったな。今日は彼女の気配を感じない。やはり来ない様子だ。
響は姉妹と仲良くしているのだろう。長期休みを与えた甲斐もあろう。
かなり寂しいし、何故だか分からないが滅茶苦茶心細い。それでも、響が楽しんでくれる方が嬉しかったりする。そんな感じだ。
…いやでも、何でこんなに心細いのだろうか。
第六感が激戦を予感している? 馬鹿な。ありえないとまでは言わないが、これだけ体制を整えたのだ。理不尽レベルの運命だろうと、何の対抗も出来ないとは思わない。
ううむ。
「ねえねえ提督。普段はなにしてるの? 怒らないから教えて」
その台詞を言っている時点で怒っているから、俺が何を言おうと怒らないだろうね。
大体、聞いておきながら答えが分かっている様子だ。開き直って堂々と言う。
「基本的に遊んでいるな」
「私たちが~遠征とかで~頑張ってるのに?」
「ああ」
「……」
無言のままジト目で見られている。照れるぜ。ジト目の白露も可愛いなあ。
「ずっと篭もりっぱなしだったのは、全部さぼってたの!?」
「いやいや。ここまで暇になったのは最近の話だ。今までは業務に追われていた」
全力で処理していたのだぞ。人聞きの悪いことは言わないでもらいたい。
その疲労解消もかねて、響に休暇を与えたのだ。俺も疲れは酷いけど、皆と触れ合いたいし。俺の代役は同期を呼ばないといけない。
その上で言うのならば、俺の同期は俺以外代えの利かない奴らだ。
羨ましいような、そうでもないような。案外物語視点は俺じゃないのかもな。
精々が、意味深に呟く役柄である。或いは先達者として、世界の主役を導くとか。
「ようやく落ち着きを取り戻して、皆に関わろうと思っているんだ」
いちゃつきてえのである。そうして挨拶から始めて、見事に砕け散ったのが俺だ。
砕け散ったのが、俺だ。
「そもそも優秀すぎて、仕事が足りなくなってるのかな」
「ああ」