やっちゃった。いくら何でもあんな反応はない。提督も呆気にとられてた。
最低だ。逃げるって、どれだけ怖がっているんだ。夕立の落ち込みようもよく分かる。自分が情けなくてしょうがない。
ああもう。どうしよう――迷う方が失礼だ。
謝りに行こう。そうだ。せっかくの機会。お話しよう。
あたしの大切な姉妹の話や、他の大切な仲間達の話。
伝えたい事がいっぱいあるんだ。
よしっ! いつまでも迷って立ち止まるのは、あたしらしくない。
いっちばん早く謝って、いっちばん早く仲良くなるんだ!
緊張深く。震えてる自覚はあるけど、執務室まで来た。
そうして扉を開ける。あ、ノックとか。もう開けちゃって。それも謝ろう
思わず下を向いて入室しちゃった。顔も見られないけど、言葉と想いだけでも。
「提督。その、さっきはごめんなさ……」
反応がない。見上げて彼の姿を見れば。
「提督!?」
口から血を流して、静かに佇む提督がそこにはいた。
吐血。内臓損傷? 深海側の襲撃はなくて。持病。歴戦の疲労。後方勤務の理由の一つを聞いた覚えが。激務の疲労。あ、その。だめだ。
落ち着いて。落ち着いてよ。今慌てたらだめ。響はいない。あたしが動かなきゃ。
「う、うそ。そんな、だめ」
吐血したショックなのか、無言のまま動き出そうとしてる。
「動いちゃ駄目!!」
思わず叫んでしまった。提督が驚いている。でも止まってくれた。
「あ、ど、どうしよ。動かしちゃ駄目で。休ませなきゃ」
迷っていたら…死ぬかもしれない。嫌だ!!
「提督。ごめんね」
体が勝手に動いたみたいに、彼の体を抱き上げた。
どうしよう。運ぶのは不味いよね。吐血するほどの損傷だ。持病かもしれない。ここから動かさない方が良い…!
ソファーに座らせる。優しく、そっと壊れないように。
「む?」
どこかぼんやりとした姿。イメージとは違う弱った状態。
軍神とさえ言われた提督も、こんなになる状況なんだ。慌てて動こうとして、だめ。どうにかして止めなきゃ。どうしよう。どうすれば。
なんにも出てこない。やだ。だめだ。
あ、そうだ。時雨と夕立はぎゅっとしたら落ち着いた。提督も。
彼が嫌がるかもだけど、そんな状況じゃない。
「提督。苦しいかもだけど!」
ぼーっとした様子の彼を、思いっきり抱きしめる。
「むぐっ!?」
苦しそうにしていた。ごめん。でも心を静めて欲しいんだ。あたしが守るから安心してよ。
お願いだから死なないで。落ち着いて。ようやく話しかけようと思ったの。
お話をしましょう。その為にも元気になってよ…!