それでもあたしは一番艦だから、時雨達のお姉ちゃんだから。
強く意思を込める。あたしはどうなっても良い。解体でも良い。辱めを受けても、仕方ないと思ってる。
「どうか処罰はあたしだけで、他の人達にはどうかご容赦を」
そんな人じゃないって、なんとなく分かってるけど。でも、あたしの振る舞いは最低だった。
軍隊として、何のおとがめもなし。とはいかない。提督だって、必要なら私心を殺して振る舞えると思う。規律を保つためには強い力が必要だ。
「いやいやいや」
初めて、こんなにも慌てる提督の姿を見た。無表情は変わらなくて、でも、たしかに声が震えてる。何だろう。素の表情を見れてる気がする。
どこか子供みたいな、素直な柔らかい心を感じた。
「提督…?」
あたしの震えは止まってなくて、でも、処罰の雰囲気はもうなかった。
今にも泣き出しそうな提督の目が、夕立に似ていたからかな。
なんだか、追い詰めちゃった。どうしよう。
「白露は俺を心配してくれたのだろう」
提督の言葉は続く。とっても優しい声色で、暖かな言葉が続いてく。
普段の雰囲気も抑えられて、精一杯、彼があたしを諭してくれてるんだ。
「実際、悪ふざけがすぎたのも事実」
…まあ、うん。失礼な言い草だったとは思ってるけど、そこに関しては謝らないよ。
たとえばだけど、入ったのがあたしじゃなくて夕立だったら。
『きゅ~』
気絶してトラウマになってた。もっと提督は自分を大事にしてほしい。
ここは地獄なんかじゃない。日常とよべる所に、貴方はいるんだ。
「そこで謝罪をしてくれるな。心配してくれたのは、素直に嬉しかったぞ」
彼がぎこちなく微笑む。とても優しい笑み。それなのに今にも泣き出しそう。
複雑な思いを感じる表情だった。なんだろう。どう笑えば良いのか分からない。人になりたいナニカ。…でも、内心が透けた微笑。
う~ん。血糊の件もそうだけど、妙に子供っぽい。
そんなわけない、よね? 素直な所もあるし、幼稚なような。ううん。
「あ、えっと」
言葉が出てこない。ちょっと色々とありすぎだって。心が全然落ち着いてない。
「敬語も止めてくれ。本来、艦娘と提督に差はない」
そんな事を言い出したらさ、命がけなのも同じだよね。
ストレス、指揮で繋がってる時のダメージ。痛み。苦しみ。命を背負う辛さは、あたし達が守ってあげられない所。
激戦区でひたすら戦い続けて、傷つき続けてきた。響と提督。二人が、この日常に癒やされて欲しいと思うのは、ワガママなのかな。
「ですけど」
敬意を示させて欲しい。だなんて、今更な話だったかも。