困った様に微笑んでる。ふふ、そうやって笑えるんだ。
ぎこちなくても、ちゃんと笑えるんだよ。良いね。うん。
「なあに?」
って、聞くまでもなかった。もうすっかりお昼前だ。
あたしは艦娘だから融通がきくけど、提督は人間なんだ。ずっとお話をしてたら、お腹が空くに決まってる。
「そうだ。お腹空いちゃった? ごはんにしましょうか。よっし。いっちばん早くあたしがとってきたげる!!」
せっかくだから何か作ってあげたい。そうしよう。そうしよう。
返事も待たずに食堂まで走ってく。床を壊さないように気をつけながら、全速力で走ってく。食堂について調理場に行くと。
「あら? 大急ぎでどうしたのかしら」
優しい笑顔で鳳翔さんが迎えてくれた。暖かい日向みたいな人。今日も優しく皆を見守ってる。そうして、響を除けば練度が一番高い人。歴戦の古強者。
今は前線から退いて、皆の心を食で支えてる。
それが、死んでいった者達への、鳳翔の中で生き残れた自分の義務だと。
「手早く提督にごはんを持っていきたいんだけど」
「ふふふ。出来れば白露ちゃんの手作りで?」
からかうような優しい微笑み。
「…うん」
何でもお見通しなんだ。鳳翔さんには勝てないなあ。
うん。競争心が強い自覚はあるけど、鳳翔さんとは戦いたくない。そんな次元にいる人じゃないんだ。すっごく頼りがいがあって。
「それならおにぎりにしましょうか」
にこりと笑った。ふふふ。暖かい。
「妖精さんたち。力を貸してくださいな」
間宮さんとか伊良湖さんと同じ。妖精さんにお願いしてる。
不思議な気もするけど、妙に説得力があるんだ。やっぱりすごい。
「提督さんが待っているものね。少しだけ、お手伝いしても良いかしら?」
「お願いします!」
すぐに準備を整えてくれて、作り方まで教えてくれた。
「そう。優しい手で」
力を込めず想いを込めて。おいしくなあれと心を握る。
優しく。食べやすいように握るんだ。
「出来た…」
鳳翔さんの教え方はとっても上手で、手慣れてた。胸がぽかぽかする優しい声と、教わってるだけで強く実感する練度。二つが合わさって、あたしを上手に育ててくれる。
見守られてる。うう。長女として、ちょっと情けないけど。
「ありがとう鳳翔さん」
たまらなく嬉しいんだ。ふふふ。いつか提督も、この人とも関わってくれるのかな。
あたしよりずっと大きい人。抱擁されて、癒やされてほしい。
「良いのよ。走って転ばないように気をつけて。それじゃあね」
「はあい!」
できたてのごはんを落とさないようにしながら、走って戻ってく。
提督、喜んでくれるかな? 楽しみ!