笑う提督を見てると、こっちまで楽しい気持ちにさせてくれた。
…でも、ちょっと笑いすぎ。まったくもう。
「すっごい笑ってる!」
怒ってみせれば。
「くふ、ふふっ。ほっぺ」
提督があたしの頬をゆびさした。それにつられて触れてみれば。
「なによ…あ、ついてる!」
ご飯粒がほっぺたについてた。そんな間抜けな顔のまま、元気いっぱいに答えてたんだ。
うわあ、恥ずかしい! 気付いてたなら早めに教えてよ! いじわる。
提督の顔を見てられなかった。俯いてると。
「い、いや。堂々とした言い草が堪らなくてな。そうか。白露は美味しい物が好きなのか」
うんうんと感慨深そうに頷く気配。完全に調子に乗ってる。
生意気。やっぱりいじわる。からかってるんだ。怒ったよ!
「むう」
じ~っと睨んた。たじろぐ顔。ふふふ。困ってる。可愛いな。
お、おっとおっと。やりすぎて他の子を泣かせない為にも、ちゃんと怒っておかなきゃ。うんうん。う~ん。…あたしの方こそ、調子に乗りすぎかな?
いや! 変に遠慮する方が失礼だね。
「怒るな怒るな。そうだな。よし。とっておきを君にあげよう」
悪戯がばれた子供が、誤魔化す感じで動いてる。わちゃわちゃと慌てた感じ。
提督が隣の部屋から何かを取ってきた。これは缶? 綺麗な缶だ。宝物が入ってるみたいだね。
提督がふたを開ければ――美しいクッキーが姿を見せてくれた。
「これは…お菓子だ!」
思わず歓声が出ちゃった。とっても形良くおいしそうな焼き菓子。
風味豊かなチョコクッキー。素敵な香りにバタークッキー。宝石を乗せたみたいなジャムクッキー。マーブルな模様は美しく。星形丸形ハート形。
多種多様な型で抜かれてて、作った人の遊び心が伝わるね。
全部完成度が高い。神々しさすら感じちゃう。最高のお菓子!
とっておきの言葉通り。すっごい感動を与えてくれたよ。
「ありがと」
照れもまじってぼやけたけど、素直な気持ちでお礼を伝えた。
微笑みとすら呼べない程仄かに、提督が笑ってくれて。紅茶まで淹れてくれた。
良い香り。茶葉が良いのかな? わくわくする豊かな匂い。
「せめてもの謝意だ」
そう言って、お皿にクッキーを盛り付けてくれた。
ふっふっふ。どれから食べようかな。
「えへへ。なら許したげる」
しかもこんなに食べて良いんだ! 提督といっしょにお茶会だ。ふふふ。良い気持ち。
いずれは妹たちも呼ぶんだ。そうして、他の仲間達ともごはんを食べよう。
楽しみだ。でもでも、今はこの宝物をしっかりと味わおう。えへへ。これも楽しみ。