「どこのお店の?」
問いかけたくなる位に、すっごい完成度だ。これはぜったいにおいしい。
「俺が作った代物でな。店では買えないという意味では、最高級と言っても良い」
「ふんふん」
あっさりと言ってるけど、プロ超えの腕前だよ。いやまだ食べてないけど。見た目的には、お店で見たどれよりも綺麗。
しかも腕を上げたのは、きっと最前線での話だよね。生まれついてからこの腕前、とも思えないし。継続的に鍛えたんだろう。
それとも軍学校の時? どちらにせよ、微笑ましくも末恐ろしい事実。
戦場の臭いがきつい状況で、ここまで至れる時点ですごいよね。
まずは…バタークッキーからいだたこうかな。
一枚とって、不安そうに見守る彼の前で食べる。
――サクっとした食感。甘み。するりととけ込む味わい。頬が緩んでく。ぎゅ~っと幸せをつめこんだ! 素敵なお菓子だった。
「すっごいおいしいね! 提督って、意外な趣味があるんだ」
商品って感じがしない。温もりを感じる。手間暇を惜しまず、利益なんて欠片も考えてない。ただおいしく。ただ食べた人の幸せを願ってる。
作り手の、提督の想いが伝わる。あったかい。良い。
「暇つぶしの手慰みだよ」
そんな次元じゃないよね。どこか自虐的だなあ。もう。
でも本当においしい。どうしよう。止まらないよ。太っちゃう? それでも良いかも。
サクうま。しっとりうま。甘酸っぱいうま。たまらない。
「言ってはいけない事かもしれないが、俺の指揮は此処には要らない」
真面目な言葉だった。後悔は感じないけど、あっさりと紡がれたにしては、仄かに重みを感じる。
日常を楽しみたい。楽しんでほしい。妹達とも仲良くしてほしい。
全て解決する方法はある。きっと、この提督なら大丈夫だからさ。
「…ううん。それならさ。秘書艦は誰でも良いんだよね?」
響はどう思うだろう? 怒るかな。長期休暇だから、どうなんだろう。
その程度では揺らがない信頼関係。これが正しいと思う。
「そう言い換えることも出来るかもな。それがどうした?」
「じゃあさ。この二週間くらいは、白露型の皆でやったらどうかな」
言葉を聞いて、少し驚いた様子だった。可愛い反応。予想してなかったみたい。
ふふふ。真面目な話、ここまで接した提督の感じなら、他の皆と仲良くなれるでしょ。だったら早いほうが良い。いっちばん良い。
「ほう」
息の抜けた反応。まだ驚きから戻ってきてない。可愛いなあ本当にもう。
「一日ず~っといたら、大分馴染むよね。あたしも慣れてきたし」
うんうん。提督の威圧にさえ慣れたらさ、仲良くなるのは早いよ。楽しみ!