考え込んでるあたしへ、申し訳なさそうに提督が言う。
「疲労も抜けていない。すまないが、仮眠を摂りたいのだが」
言われてみれば、目元の隈が酷かった。自然に感じてるけど、普通は寝不足を疑うよね。目つきの悪さも寝不足が原因? でも、時間は今までだってあったはず。
…考えられるのは、極度のストレスによる不眠症とか。
この鎮守府が平和な分、今までの疲労が出ちゃったのかな。
「あ、うん。あたしはどうしよっか」
寝かしつける? なあんて、提督からは絶対に言ってこないよね。
やらしい意味じゃなくて、人の温もりって安心出来るんだ。夕立とお昼寝したりとか、たま~に山風と寝てみたり。リラックス効果は感じてる。
あたしはどうだろ。提督が安心出来るかは分からないけど。いっしょにいたい。
「好きに過ごしても良いぞ。他の姉妹艦も休日だろう。遊びに出ても良い」
真面目な言葉。気づかいは嬉しいよ。でもさ。
「今日、あたしは秘書艦なんですけど」
響の代わりには絶対になれないし、なるつもりもない。失礼だからね。
だからこそ、あたしらしく秘書艦を努めたいんだ。並び立つ相棒にはなれなくても、見守る者としてここにいたい。
拒絶されるなら退くけど。葛藤を感じる気もする。表情に出てないから、あたしの勝手な思い込みかも。それでも、少しでも楽になってほしい。
「ふむ…とはいえどうにもな。すまないが横にならせて貰う」
表情に出てないし、自覚はなさそうだけど。
とても、疲れた雰囲気を感じる。慢性的な寝不足が過ぎて、疲れすら認識してないの? 当たり前に疲れきってる。
ううん。どうしよっかな。考えてもしょうがないけど。
「自室で寝ないの?」
せめても暖かいベッドで寝た方が良いよ。そ、添い寝とか。いやいや。ない。ちょっと恥ずかしすぎるって。せめて膝枕。
でもなあ。いきなり言うのって可笑しいよね。
「誰かが尋ねてくる可能性も、零ではない。気配が来れば起きられるからな」
「ふうん」
逆に考えるなら、少しの物音で目覚めちゃう位に神経が過敏なんだ。
江風とか、豪快にいびきをかきながら寝てたり。安心しきった寝姿なの。提督は真逆。怯え竦むような感じで。
よし。決めた。提督の眠りを助けよう。自然な感じに言うんだ。
「でも、ソファーだと首が痛くない?」
「仕方あるまい。普段使いの枕では、ソファーに上手く置けないんだ」
流れるような言葉の展開。ふっふっふ。さすが一番艦。
これなら、いっちばん上手く提案出来るね!
「…にひひ、膝枕でもする?」