「乙女がみだりに触れあいを許すべきじゃない」
どこか照れながらの言葉。あたしも自覚があるけど、お互いに顔が赤くなってる。
変な空気が広がってた。妙に照れる生暖かい感じ。
「やらしいんだあ」
大体、本気でそう思ってるならさ。嬉しそうな雰囲気を出したら駄目だよ。
気恥ずかしいけど、提督も喜んでくれてるんだ。やったね。
「そんなんじゃないよ。してもらった事ないの?」
「生憎だが経験はない」
彼女さんとかは…想像出来ない。響は? も、もっとすごい事をしてそう。
って、だめだめ。提督が変な事を言うから悪いんだ。純粋に甘えてほしいのに、そんな考えは不純だよね。まったくもう。
落ち着こう。ん。嫌がってないみたいだけだ。
「よっし。それならあたしが一番だね」
ふっふっふ。誇らしい。大分気を許してくれてるんだ。良いね。
このまま気を緩めて、疲れも取れたら最高だよね。ようし。
「おいで」
ぽんぽんとふとももを手で叩いて、提督を待つ。不思議と緊張は感じない。
幼子みたいだから? 弟みたい? う~ん。もちろんそんな心もあるけどさ。
疲れきってる。頑張った人が、休みたがってる。だから守りたい。艦娘としての感情が強いかな。ふふふ。なにに言い訳をしてるんだろ。
『白露姉さん、少し甘えさせてくれないか?』
良い響き! …いやいや。落ち着かなきゃ。変に暴走したら迷惑。
でも、やっぱり良い響きだ。ふふふ。もっと甘えてほしいな。ゆくゆくは響も甘えてきて、白露型皆とも仲良くなっていって。鎮守府がもっと!
…発想が飛躍しすぎた。今はただ、提督に癒やされてほしい。
「良いのか?」
ちょっとしつこい位、やりたがらない。何だろう。宝くじで一等が当たった人みたい。
嬉しすぎて現実を直視出来ないって、やる本人のあたしが言うと、すっごく恥ずかしい言葉だけどさ。
「そんなに躊躇うほど嫌なら、止めるけど」
「嫌じゃない」
迷いない断言。無駄に顔が格好良くなってる。真剣な様子。
「むう。生意気」
あえてからかってみたらさ。
「とても、とても嬉しいよ。ありがとう」
慌てて訂正してきた。ふっふっふ。愛らしいね。よしよし。
「よろしい!」
迷い、困った顔で笑いつつも。ゆっくりと、本当にゆっくりと彼が近づいてくる。
緊張はない。異性として向き合うというより、甘え下手な子供を甘やかす感じ。
ニコニコ楽しい気持ちと、しょうがないなあと思う心。
良いのかなと躊躇う彼。良いんだよと許したいだけ。
幸せな日常の熱を、胸一杯に感じてる。だから提督。おいで。あたしが守るからさ。甘えて良いんだよ。ここは日常を許された場所だよ。
心はきっと伝わってなくても、ようやく、彼はあたしのふとももに頭を乗せた。