物音一つ聞こえない執務室。もうお昼が終わって、徐々に夜が近づいてる。
暖かな日の光。妹達は楽しい休日を過ごせてるかな? あたしは…最高の一日だった。
そうして、その最高はきっと何度も覆される。どんどん日常を楽しんでく。
のんびりと流れる時の中で、あたしは提督に膝枕をしている。ほら。この事実だけで、これから訪れる日常へ、いっぱい期待出来るでしょ。
提督の頭の重さが、両脚に伝わってる。仄かに髪の毛がくすぐったい。硬めの髪の毛。髪質にこだわってないらしい。イメージ通りかな。
提督があたしを見上げてる。思わず微笑んで彼を見つめてた。
なんだろう。あたしも癒やされてる。あったかい。体温が伝わる。今日が休日で良かった。演習明けとかに甘えられてたら、汗の匂いを気にしてたよ。
ぼんやりと過ごしてる中で、彼がぽつりと。
「思っていたより固いな」
うそ。照れを隠すための言葉だ。分かる位に提督を知ってきたんだ。嬉しいな。
それはそれとして。生意気なのでおしおきします。
「…そういう生意気を言う口は、これかな~!」
くちびるをぎゅっとつまむ。
「ぐみゅむ」
照れながらも嬉しそうにしてくれた。可愛い。
「ふふふ」
楽しいな。本当にゆっくりと時間が進んでく。日常だねえ。平和だ。
ぼけ~っとしてる。あたしも眠たくなってきた。良いかな寝ちゃおうか。いっしょに寝れば楽しさ二倍。癒やされて…ん~?
提督の顔を見ると。
とろんとした瞳。ぼんやりと潤んだ目は、今にも閉じてしまいそう。奥底の更に一番底に沈んでた疲れが、どろっどろに融け出てる。
そんな彼が、あたしのおっぱいをじっと見てる。
……驚いた。自分でもびっくりする位、何も感じてない。
恥ずかしいだとか、この変態! だとか。女の子に失礼だよ。とか。
怒りもなく羞恥もない。なんだろう。しょうがないなあ。って気分だった。
「――やらしい眼で見た?」
「み、見てないぞ」
顔が真っ赤。慌てて横に顔を向けた。ああ。目が見られないな。表情も見えづらい。黙ってれば良かった。でも可愛くてしかたない。
「あやしいなあ。このこの」
つんつんとほっぺをつつく。指先に、熱い羞恥の熱が伝わってるよ。
…性欲を満たすだけなら、提督としての命令権で出来るんだ。男としての欲求があるのは、当然だと思う。でもさ、それでも愛がなければなんて。
どこか素直な貴方は、そう言ってくれるのかな。
「ふっふっふ。のんびりしてね。あたし達も頑張るからさ」
わしゃわしゃと彼の頭を撫でる。愛おしい我らが提督の、どこか子供みたいに強がる彼の、がんばりを認めたくて。
「そりゃあ、響が一番に強いけど。あたしもいっちばん頑張って、支えるから」
守り合う相棒の役目は、あたしの在り方じゃあ足りないよ。
せめて甘えてほしい。甘えても良いんだって、いっちばん強く伝えたいの。
「だから、提督もあたし達姉妹に話しかけてね」
「…ありがとう」
震えた声。強く、感情が乗った声色は熱かった。うんうん。良い気持ち。
「いえいえ。ほうら、おやすみなさい。夕食前になったら起こしたげる」
「おやすみ」
とけ込む様な儚い言葉を紡いで、提督が眠りについてくれた。