「提督。お邪魔するよ」
白露型駆逐艦2番艦・時雨であった。
「今日はよろしくお願いする」
「此方こそ。迷惑をかけないようにがんばるね」
三つ編みおさげの黒髪美少女。ぴょんと二つはねている黒髪は、どこか犬の耳みたいで愛らしさもあり。まずこの時点で最高だ。
優しく儚げな水色の瞳。仄かな微笑み。美しく柔らかな顔立ち。今にも消えそうな弱々しさ。それでいて芯を感じる佇まいが良い。麗しい。
降り始め、掴まえる間もない雨の如く。するやかに通り抜ける儚さが、手の届かない美しさを感じさせる。
――はああ。良い。尊い。何がって? これ言葉に出来ないタイプの心。
きゅんきゅんとはちょっと違うんだよ。切なさ。もどかしさ。どこかネガティブなのに、美しいと思う心。
感動。もっと大げさに言えば、吐息が零れる程の情動。
時雨の在り方は美しい。愛らしさだけでは決してない。
白露の様になじみ易さはない。長女力もない。
触れても良いのか。共に在れないのでは、と思う悲哀の心こそ、彼女の魅力であるのだろう。それでいてさみしがり屋な面もある…らしい。白露情報だ。
最高かよ。最高だよ。
白露のようにボインでもない。うむ。でも響よりは。うむ。殺されたくない…!
『司令官は私の事が嫌いなんだ…!』
ガチ泣きとか、ガチへこみはもっと嫌なので。あんまりこういうのは駄目かもなあ。
本人に言わなければ伝わらない筈なのに、どうして俺は心まで考慮しているのやら。でも、まかり間違っても勘違いされては困る。
龍驤みたくな。もっと気楽に振る舞いたい。
おふざけはともかく、好きは好きだ。勘違いして欲しくない。
さあてさて。どうしようこうしよう。そうしよう。何がやねん。みたいな。
特に今回は何も考えていない。時雨にどうこうしてほしい。なんて欲求は…もちろんあるけどな!
時雨の魅力は色々ある。もちろん、他の艦娘も魅力的だ。
その上であえて断言しよう。俺は時雨に――めっちゃ甘えてほしい!
ああ気持ち悪いさ! 俺は変態さ!! でもなあ。好きなんだよ。大好きなんだ。
で、色々と考えた。策略を張り巡らそうとした。しかし――何の成果も得られませんでした!! しょうがないね。開き直って無策であった。
基本コンセプトは川内と変わらない。頭を撫でる。それは正しい。
ただコレは、時雨が望まないと意味がない。
褒められるというのはそうだろう。認められる。結果として、頭を撫でられる。俺も嬉しい。完璧だ。想像出来ない点を抜かせばだがね!