「望み…今十分に叶っているからなあ。う~ん」
嬉しい言葉だ。ふふふ。だが! 今の俺は久しぶりに乗っている!!
白露のおかげで調子も絶好調だ。指揮を執っても目眩位で済みそう。やっちゃうか? 久しぶりにやっちゃうか!?
落ち着こう。時雨も困惑している。俺の熱意が伝わっているのだ。
「安心しろ。この平穏は軍神の名に賭けて、必ずや保って見せよう。誰も死なせない」
女神の貯蓄も凄まじいからな。はっはっは! どんなトラブルが来ようとも、俺と響が本気で戦えば、頼りがいのある同期が来るまでは大丈夫。
運命がどんなに難色を示そうと、押し通す力量程度はあるんだぞ。
にやりと意識して笑って、彼女に堂々と宣言する。
「前線にも頼りになる仲間がいる。戦神と謳われた同期もいてくれる」
軍神だと格好つけたが、戦闘指揮は普通である。というか、戦神と呼ばれたバカが凄まじいのだ。
それは良い。今は関係ない。甘えたがらない時雨の説得が大切。
「だから、ありふれた望みで構わない」
「ありふれた…」
呟きに熱が篭もっている。願いはあるらしい。良かった。これでなかったら俺は道化だ。
「変に遠慮をしてくれるなよ? 給与関係でも良いぞ」
お小遣いを渡すとなれば、いよいよお金持ちの道楽じみてきたな。
互いにそんな意図はないとは言え、なんとも笑える話だ。
「お金は求めすぎても仕方ないさ。大切だけどね。僕はそんなのより暖かいモノが欲しい」
時雨らしい。素朴な日常を尊ぶ言葉であった。ちゃんと金を軽んじていないのも、個人的には好ましいね。
「ふっ。無粋だったか。ならば何を望む?」
問いかけに俯いて、何度か俺の方を窺った。可愛い。ぺろぺろ…はなしだ!
今の俺は紳士である。というか、時雨の儚い雰囲気に戦場を思い出している。
調子が絶好調なのと合わさって、いつになく真剣な気分だった。
「だ、っ、その。…笑わない?」
「理由がない。望みの是非は人それぞれだ。時雨が心より望むのならば、俺は応えよう」
大体、願いの尊さなんて言い出したらだぞ。俺は最低だ。でもしょうがないね。
女の子って柔らかいんだよ! 良い匂いするんだよ! しょうがない。
「それは、その。どうして?」
困惑している。俺が真剣と伝わっているからこそ、真面目に驚いているのか。
ならば語ろうか。悪くない気分だ。偶にはこんなシリアスも良いだろうよ。
「…俺はね。艦娘に救われているんだ」
絶対に伝わらないのだろうな。
「でも提督の指揮があるから、僕達は力を発揮出来るんだよ」
それも正しい。この世界の艦娘からすれば、持ちつ持たれつなのだろう。