「分かる。分かるぞ」
共感しすぎて思考がガチになるレベル。こうして抱き合っているのに、俺の愚息が反応しない程だ。艦これを押しつけないと思っているからこそ、今の時雨を強く理解してしまう。
本当にな。素直に甘えられたら、自分の弱さを許せたらどれだけ楽だろう。
怖いんだ。奪われる気がするんだ。守りたい。守り抜きたいんだ。
「提督も?」
「ああ。意地を張って、格好つけたくなる気持ちは分かる」
それだけで俺は生きてきた。それに縋るからこそ、俺はここまでやってこれた。
良い悪いじゃないんだ。そうしたいかも分からない。ただ心が叫んでいた。
結果的に、今の俺は報われている。望んだ世界に到達出来た。
「素直に甘えれば良いんだ。きっと受け入れてもらえる」
分かっているんだ。アイツらは、俺が真正面から甘えたらならば、きっと受け入れてくれた。事実こんな平和な場所に俺はいる。運命に見逃されている。
「思っても、強くなりたい心が邪魔をするんだ」
守れる自分でありたい。庇われたくない。意地を張りたい。
戦う力がほしい。強くなりたい。強く、ありたい。
「だって失いたくないから」
「…見通されてるね」
困ったような言葉だった。思わず笑みが零れる。
俺は一体何様なのだろうと、何度思ったかな。恥知らず。だけどここまでやってきた。なら意地を張るしかないのだ。
意地を張ることが出来るんだ。
「大丈夫だ。大丈夫。甘えたくなったら、甘えれば良い。俺が相手でも良い」
その為に鍛えた感はかなりあるね。艦娘に慕われたいから、能力を上げ続けた所がある。ぺろぺろしたいから鍛えたのだ。
まあ、ちょっとこの空気はガチすぎるけども。
俺はもっと軽いノリでいちゃつきたい。キャバクラとか言ってみたい。なんか違う。
「遠慮する必要はない。好きなだけ頼ってくれ」
守るよ。うん。かつての仲間達は、響だけでも残ってくれた。
戦艦が十数体来ても、どうにか援軍までは耐えられる。生き残る力だけならば、俺と響が一番優れているんだ。
死にたくない。沈んでほしくない。それだけである。
「どうして甘えさせてくれるの?」
「俺は提督だからな。皆のお父さんみたいなモノだ」
ちょっと内心がスケベすぎるけどな。しょうがないね。
…真面目な話。こうして弱っている相手に、変に欲情はしない。
君達の世界に救われたから、君達も俺に救われてくれ。
ああまったく。時雨相手だと空気がガチすぎる。どうしたものかね。
「時雨が恐れている事態には、ならない様に努めよう」