「こんなので良いの?」
喜んでくれてるのはなんとなく分かる。うんうん。と噛みしめるように聞いてくれた。白露の助言もあって、表情だけじゃない心が見える。
でも、何だか拍子抜けだった。大切な事だけど。やっぱりまだ、軍神のイメージが取れてないのかな? 演習や遠征の話を想定してたのもあるね。
素直に言えば、とっても嬉しい。こうして話すのは姉妹に出来ないし、他の仲間達に語るのも、白露型の自慢になりそう。
気にしすぎだとは思うけどさ。でも逆に暁が暁型自慢を始めたら、すっごく楽しい時間になりそうだよね。案外、白露が語れば良い感じなのかも。
いい感じ。ふふ。村雨みたいだったな。ちょっといい感じ~!
あ、う。だめだ。これはお蔵入り。恥ずかしすぎて出来ないや。村雨がいうと可愛いからずるい。いやいや。ずるくはないけど。僕には似合わない。
「君の語り口から皆の日常を味わう」
続く言葉はやけに重たくて。
「そうして、翌日から来てくれる姿と向き合える」
切実な響きが乗っていた。本当に必死な感じ。これを聞くと、今更ながら挨拶の時の反応が悔やまれるよ。もう少し愛想良く出来たら良かった。
さすがは白露だよね。こうして、こんなに柔らかくしたんだ。
「自慢ではないがな。俺は平穏が大好きだ。故に聞かせてほしい」
締めくくりの言葉は仄かに笑っていて、思わずぽつりと。
「何だかイメージと違ったな」
「恐ろしい悪鬼を思い浮かべていたのか?」
お、怒らせちゃった! 真剣な顔でじ~っと見てる。どうしよう。どうしよう。
せっかく優しくしてくれたのに、優しい感じだったのに。
「その、えっと。あの」
言葉が出てこない。ああ駄目だ。提督を傷つけちゃった。
謝りたい。でも僕なんかが謝ったら余計に駄目かな? 白露ならもっと優しく。暖かい感じなのに、僕はじめじめとしていて。
「ふふふ。からかっただけだ。怒ってないよ。安心してくれ」
「…もう」
良かったあ。でもいじわるだ!! あ、あんまりそういう風にしたら、もう知らないからね。って、強く言えない。ううん。拗ねようかな。
あれ? 気がつけば、緊張が解れてた。甘えが出てきてるのに、意地を張る気持ちが薄れて。まさか提督の狙い?
…いや。ないない。すっごくいじわるな微笑みしてる。
でもリラックス出来た。これなら、ちゃんと皆のお話が出来そうだ。
「さて。改めて聞かせてくれ。君の宝物を語ってくれ」
「ん」
今度こそ。胸に秘めた大切な思い出を、優しいこの人に語ろうか。