「変に遠慮をしてくれるなよ? 給与関係でも良いぞ」
「お金は求めすぎても仕方ないさ。大切だけどね」
温かいごはんを食べられて、雨風をしのげる家がある。
時にはお菓子も味わえる。皆が笑顔でいてくれる。維持するのにお金は必要で、働く意味はあるんだけど。求める心が多すぎると、バランスが崩れちゃう。
生き方は人それぞれ。強く願うモノも人それぞれ。
「僕はそんなのより暖かいモノが欲しい」
きっと、僕の欲望の方が欲深いんだ。心の暖かみを求め続けるなんて、それも佐世保の時雨が、求めるなんて。
欲深い。けれど今の提督に本音は隠せない。隠したくない。
「ふっ。無粋だったか。ならば何を望む?」
堂々とした姿。真っ直ぐに見つめるまなざしは、強い意思と不断の心を感じる。
最前線で戦い続けてた時も、こんな強い在り方だったんだろうね。
何だろう。初めて戦歴を聞いたときは、ただただ畏怖していたのに。
今は、微笑む提督の姿を知っているから。仄かに寂しい。でも嘘はつかない。
僕の望み。暖かいモノ。人との触れあい。心を伝え合いたい。ここまで話を聞いてもらった。もう一歩踏み込みたい。多分提督も思ってくれてる。
お父さんとかはいわないけど。ソレはあんまりにも変だけど。…甘えたい。
うん。僕は甘えたい。この重みを知ってほしい。ぎゅってされたい。頭撫でて。
「だ、っ、その。…笑わない?」
きゅ~っと胸が痛んだ。提督は、あくまで提督だから。
別に僕の身内じゃない。艦船としての因果もないし、艦娘としての型番だってない。
知り合ったばかりとも言える。こうして話を聞いてもらって、色々と分かり合えたと思うけど。
僕の望みは突然だと思う。少なくとも提督はそう思うよね。
…でも、彼には失礼だけど。軍神の異名を知って、働きぶりを知ったんだ。
強い人だと思う。強く在れる人だと思う。彼ならきっと、僕を庇って死んだりなんかしなくて。必要な判断が出来て。
文字通り、軍隊におけるトップとして。残酷にもなれると思うから。
「理由がない。望みの是非は人それぞれだ。時雨が心より望むのならば、俺は応えよう」
この言葉もそう。深い優しさを抱きつつ、どこか有無を言わせない力がある。
真っ直ぐなんだ。…白露に似てる所もあるね。ちょっと強引な所もそう。
「それは、その。どうして?」
僕はずっと考えてて、艦娘として提督の存在に頼る側面もある。
だけど提督は、日比生提督は違う。色んな艦娘がいる。僕じゃない時雨もいるんだ。
こうして、全身全霊で応えてたら身が保たないよ。
「…俺はね。艦娘に救われているんだ」