「…いきなりでびっくりしたよね」
思わず、縋りつくように抱きしめを強くしちゃった。
大きな体。甘えきってるのに、揺らぎもしない在り方。その、自分で言うのも何だけど。若い女の子が抱きついてても、欲望を見せたりもしない。
あったかく。大きく。ああそうか。
今僕は、大人に甘えてるんだ。父とか兄がいれば、こんな感じなのかな。
ぎゅって、提督から優しく力が強まった。
許されてる。言葉に出来ないけど。初めてで分からないけど。尊い何かを許してもらってる。…暖かいなあ。
「そうでもないさ」
受け入れてもらえる言葉。聞きたくて、僕は言ったのかもしれない。
どくん、どくんと力強い鼓動が胸に伝わる。提督も生きてるんだ。僕の鼓動も届いてるんだ。心が伝わってるのかな。本当に嬉しくて、この感謝も届いてほしい。
「白露から君達の事は聞いている。甘えたがりな子達だとな」
「ううっ。恥ずかしいな」
白露らしい言葉だと思う。皆が大好きで、皆も大好きなお姉ちゃん。
僕だって大好き。でも甘えすぎたら駄目なんだ。僕達は艦娘で、共に戦場で戦う仲間だからこそ。変に甘えて、判断が鈍ったら嫌だ。
見捨てないといけない状況がある。提督ならきっと。
…そうやって、僕は押しつけて。
――わしゃわしゃと、乱暴な手つきで頭を撫で回される。
「か、髪型崩れちゃう」
きゅ~って、胸に切なさと喜びが混じり合ってく。
落ち込みそうになった心が、大きな掌に緩ませてもらって。力が出る。
「嫌か?」
「…いじわる」
間違っても顔が見られたくなくて、頬をすりつけるように抱きついた。
すごく恥ずかしい事の筈なのに、今はもう受けいられてて。本当に。
こうして向き合うと、おっきくて愉快な大人だった。白露の話じゃないけど、言ってる事は間違ってなかったよ。
でも、すけべな気配は感じないな。僕が、白露ほど可愛くないからかもしれないけど。
からかうのが好きでいじわるな暖かい大人。甘えても良いと許してくれる人。
「照れる必要はない。提督として、人として逃げるつもりもないさ」
強い言葉だ。責任から逃げない事で、押し潰されるかもしれないのにね。
いや。きっと何度も潰されそうになって、それでも、と足掻いた人の言葉。
何度考えても、軍神の経歴と提督の在り方が重ならない。敬意が足りない考えだけど、やっぱり感じられない。
逆に言えば、最前線はこの人が人を辞めるほど、激烈なのだろう。
……僕は甘えて良いのかな。縋っていて良いのかな。ああ。まただ。また躊躇いが心を蝕んでく。
「ただまあ。理由は気になる」