いちゃいちゃ大好き提督日常   作:ぶちぶち

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佐世保の時雨の心です

 正直に言って、僕の考え方は提督を侮辱してる。

 言うなれば仲間を、提督を信頼してない。責任感が強いと言えば聞こえは良いけど、周りを頼る事もまた強さだ。

 それでも、受け入れてもらえると分かって言うのだから。

 

 ここまでのやり取りに、本当に救われていたんだなあ。伝わってほしい。

 言葉にすると軽くなるほどの感謝を貴方に。だからこそ心を聴いてほしい。

「――弱った姿を見せると、皆は不安になるから」

 佐世保の時雨は雪風と対を成す。伝説の幸運艦として、名に恥じない活躍をしなければならない。

 

 白露は気にしないし、他の白露型の皆だって気にしない。仲間達もそう。

 結局は僕が嫌だと思うだけ。

 時雨の名を冠した駆逐艦の僕が、甘えてしまうのを許せないだけなんだ。

 

 …それでもこうして提督に甘えてるのは、僕が甘えても揺らがないからさ。

 内面はどうであれ、非情な判断を下せる人。一度聞いたことがある。

 軍神と謳われた提督でさえ、肉の盾の作戦を実行したのだと。

 

 その時に喪ったのは一隻だけ。そこから先に轟沈は許さず。

 深海棲艦の巣を一つ潰して、平和な領域を広げたのだけど。

 裏を返すならば、どんな心でも彼は非情を歩めるんだ。

 

 最低の理屈で甘えてる。自覚はあるのが尚悪い。それでも。

「僕は嫌なんだ」

 もう二度と仲間の轟沈なんて見たくない。

 守りたい。だけど、そんな大切な仲間だからこそ触れあいたくて。 

 

 彼女たちの日常を見てると、混ざりたくて気持ちがざわつくんだ。

「でも、白露は甘えてもらいたがっているぞ」

 分かってる。分かってるんだ。頑張り屋さんと認めてくれてても、彼女は妹達を守りたがってる。

 

 僕には可愛げがない。なんて自虐したら、彼女も提督も怒るんだろうね。

 嬉しいんだから情けない。ああ。本当に。

「僕は十分甘えているさ」

 

 提督の体だから鼓動が伝わる。嘘を見抜かれてる。分かってしまう。

 自分から言っておいてだけど、こんなに触れ合ってると心が分かっちゃう。誤魔化せもしないね。

 

「でもね、共に戦う仲間でもある」

「負傷を庇われたら困るか?」

 やっぱり分かるんだ。嬉しいな。ありがたいな。

 

 …怒らないかな? 俺は代用品なのかって、言うわけないよね。

 そうしないって信じたからこそ、こんなに甘えてるんだ。

「甘えから、守るべき存在と思われたら嫌だ」

 

 そうなるかは分からない。ならないと言い切れない時点で、過度ななれ合いは避けないとならない。

 絶対の生還を求めてるんだ。捧げないと割に合わない。

 臆病なんだ。ただただ臆病すぎて、お姉ちゃんの好意からも逃げてる。


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