オーバーエッグ 念願のエッグマンX   作:黒酢ドリンク生卵を添えて

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 とりあえず書き上げたヤツを上げてしまいたかった、見切り発車感。
 『ドクター・エッグマン』と書いて『ツンデレ卵』と読む。


プロローグ

 栄枯必衰とはこの事か。

 

 社会現象まで巻き起こし、一時はDMMORPGの極みとまで謳われた『YGGDRASIL』、その世界も今日までとなった。

 あまたの娯楽が浮かんでは消え、膨大な労働がのしかかる昨今。

 ユグドラシルを盛り立て出来たプレイヤー達も一人、また一人と姿を消し。

 もはや過去の遺物として、今日サービスを終える。

 

 

※※※※※※

 

 

 ユグドラシル:ヘルヘイム:グレンデラ沼地:ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』拠点ナザリック地下大墳墓第九階層『円卓』

 

 

 巨大な円卓の一席に座り、虚空を睨み付ける骸骨が居る。

 アインズ・ウール・ゴウンのギルド長『オーバーロード』モモンガである。

 モモンガは円卓に座り、ただ待ち続ける。

 かつての友たちが訪れるのを、ただただ待ち続ける。既に仲間達全員に誘いのメールは送った。ユグドラシルサービス終了まで、まだまだ時間はあるのだ。一人でも来る可能性が有るのなら待ち続けよう。

 しかし、円卓でボーッとして居るのも最終日にしてどうなのか、手持ち無沙汰で正直に言うと退屈だ。最終日なんだし最後に侵入者でも来ないかと考えていた時、軽い音と共に通知が表示された。

 

《ナザリック表層部にプレイヤーが侵入しました》

 

 侵入者でもと考えていた矢先の事である。最終日とは言えナザリックに攻撃を仕掛けるなど、よっぽど腕に自信があるのか、よっぽどの馬鹿か。

 どんな奴かと気になったモモンガは一目見てやろうと腰を上げ、ナザリックの地表に移動した。

 

 

※※※※※※

 

 

 数体のメカメカしいゴーレムを従えてナザリックの中央霊廟に向かう男が一人。課金アイテムを贅沢に使用した搭乗型装備を操り高笑いをしながら悠々と墓場を進む。

 彼に従うゴーレム達は迫り来るアンデッド達を鎧袖一触、次々と薙ぎ倒しながら歩みを進めていた。

 

「ホーッホッホッホー! さぁて、そろそろ頃合いかのぅ」

 

 男はコンソールを開き、公開通話チャンネルを最大ボリュームに設定する。

 

『……あー、マイクテスト、マイクテスト! えー、毎度お馴染み悪の天才科学者ドクター・エッグマン様です。今日はユグドラシル最終日でムカつくぐらい街が騒がしいので、特別にココで鯖落ちするまでエッグマン帝国を築く為の口上を〜宣っちゃおっかな〜と思ってるワ〜ケ〜。サービス終了まで全開で行くよー! フィーバー!!』

 

「なにやってんですか、エッグマンさん」

 

 地表に出てきたモモンガは頭を抱えそうになったのである。

 どんな馬鹿かと思ったら核弾頭級の馬鹿でした。

 

「あぁ、モモンガさん。おひさしぶりです。……じゃなかった、ホーッホッホッホ! 何って、墓場の底でメソメソ泣いてそうなアンデッドが居るから弱ってる所をぶっ潰してここにエッグマン帝国を作ってやろうと思ってなぁ」

 

「はぁ……相変わらずですねドクター」

 

「あぁ、相変わらずだとも!」

 

 モモンガは彼の事をよーく知っている。

 彼の名はドクター・エッグマン。大昔のゲーム『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』のボスキャラ、のロールプレイをしている老人である。

 そして悪役RPギルド『ユニオン・オブ・ヴィランズ』の現ギルド長である。

 過去のゲーム、アニメ作品の悪役キャラクター達が集まったギルドであるUoVは各々が気ままなプレイをする為に纏まりは全くないが一度目標が一つになれば中堅ギルドでありながら上位ギルドすら震え上がらせる実力を持つ。一部からは『最上位強化版2ch連合』『劣化版アインズ・ウール・ゴウン』『非公式コラボボス』などとも呼ばれていた。

 ちなみにモモンガはアインズ・ウール・ゴウンの問題児『るし★ふぁー』が沢山いるギルドと認識している。

 特に目の前の丸いフォルムの老人は超危険人物であり、リアルでもかなりの高齢であり金持ちなのだろう、残りの人生と財産全てぶち込んだとも言われる程の苛烈な課金と高いプレイ技術で最上位プレイヤーに名を連ねる一人である。

 

「残念ですがドクター、たっち・みーさんはまだ来てませんよ」

 

「ふん! あヤツめ、最終日ぐらい顔を出せばいいものを。このままでは本当に勝ち逃げでは無いか!!」

 

 エッグマンとアインズ・ウール・ゴウンを繋いだ存在はギルメンの一人でありワールドチャンピオンのたっち・みーだった。

 最初のきっかけは些細な勘違いに過ぎなかったが、結果としてエッグマンがたっち・みーにボコボコに負けた事である。

 それ以来、たっち・みーの事を『最大のライバル』『宿敵』と公言し幾度と無く闘いを挑んでは返り討ちにあっていた。

 その度にギルド拠点に被害が出ていたのでモモンガとしては迷惑極まりない存在であったのだが、毎回キッチリと損害分をアイテムや金貨で補填して帰っていたので嫌うにも嫌いきれず、ギルメンとも『騒がしいけど面白いオッサン』として関係は良好だった。特に問題児同士気が合うのかるし★ふぁーとは特に仲が良かった様だ。

 ギルド同士としてもそこそこ親交は厚く、ユニオン・オブ・ヴィランズも根は気のいい人が多かったせいなのかヴィランズのギルメンも遊びに来ては雑談をして行ったこともあった。

 

「最終日までナザリックで暴れるとか、少しは他人の迷惑考えたらどうです?」

 

「なにぃ? アホゥ! 他人の迷惑考えて悪党ができるか! 丁度いい機会じゃ、貴様らとの戦いにも決着を付けてくれる! このワシ自らの手でな!!」

 

 モモンガはやれやれと頭を振りながら思う。

 コレも彼なりの優しさなんだろう、たっち・みーの引退宣言の時はすわ勝ち逃げかと本気で怒り狂い単独でナザリック第六階層まで突破しギルドの鬱屈とした空気を吹き飛ばした。

 その後もギルメン達が一人、また一人と居なくなるなかヴィランズの面々はナザリックに足げく通いモモンガ達の話し相手になっていたのだ、エッグマンは戦いながらではあったが。

 このやり取りも今日で最後かと思うと、込み上げてくるものがある。震える声を何とか落ち着かせ、ナザリックの、アインズ・ウール・ゴウンの日常を最後まで貫き通す。

 

「良いでしょう……ドクター・エッグマン! 我らアインズ・ウール・ゴウンは何があろうと貴様の力には屈しない! たっち・みーに代わってこのモモンガが全力で相手になろう!」

 

「ホーッホッホッホ! 良い面構えになったの、骸骨の小僧。であれば、こちらも奥の手を使うとしよう! いでよ! デスエッグロボ!!」

 

 骸骨だから表情は分からないだろうと言う事は置いておいて。

 エッグマンの能力のひとつは自作搭乗型ゴーレムの召喚である。

 次の瞬間、高らかに声を上げたエッグマンの眼前に空からエッグマンを模した巨大なゴーレムが降ってきた。

 流石のモモンガも目の前のロボットに困惑の声を上げる。

 

「ええっ!? こんなのいくらリアルマネーを注ぎ込んだら……」

 

「ホーッホッホッホ! 恐れ慄け! コレこそワシが今までの人生全てを賭して作りあげた最強の兵器! 最終決戦兵器『デスエッグロボ』じゃ! 行くぞぉ!」

 

 こうしてモモンガとエッグマン、最後の戦いの火蓋が切って落とされたのだった。

 

 

※※※※※※

 

 

「ちょちょちょっ! モモンガさん、どういう事ですかコレェ!」

 

「ええい! ちょこまかと動き回るでないわ! 粘体め、叩き潰してくれる!!」

 

「ヘロヘロさん! もう少しです! 頑張って!!」

 

 1時間後、そこには巨大ロボット相手に奮闘する骸骨とスライムの姿があった。

 モモンガの呼び掛けに答えてログインして来た『黒き漆黒の粘体』ヘロヘロである。久方ぶりにユグドラシルにログインした彼が聞いた友人の最初の声は「ヘロヘロさん! 助けてくださーい!!」という悲鳴であった。そして今、ヘロヘロは体調を崩しており睡眠不足ですらあるのに全力を持ってゲームをプレイしていた。

 

「このぉ! もう少しでモモンガを討ち取れる所だったのに邪魔をしおって! ヘロヘロォ!!」

 

「知りませんよ! 最終日まで騒がしい人ですね!!」

 

「ヘロヘロさんのおかげで攻撃が通る様になって来ました! いけますよ!!」

 

 ヘロヘロがログインするまでモモンガは劣勢だった。流石は打倒たっち・みーを目標に掲げるだけありデスエッグロボは防御力と魔法耐性が異常に高いのである。まさに自作ワールドエネミーの如き強敵だった。物理攻撃は勿論、モモンガの魔法攻撃すらはじき返す始末、有効打が得られないままジワジワと追い詰められていたモモンガ、そこにヘロヘロのログインはまさに勝利への光だった。

 ヘロヘロへ救難メッセージを送り合流すると二人はすぐに反撃を開始した。ヘロヘロの酸攻撃によりロボの防御力は低下しモモンガの高威力魔法もダメージが通り出している。

 しかし、それもジリ貧。確実にモモンガ、ヘロヘロ共にダメージが蓄積している。このままではデスエッグロボが先かモモンガ達が先か、いやユグドラシルのサービス終了時刻も問題だ。

 

「サービス終了まで1時間を切ったか……ユグドラシル最後の日、このままここで終わる訳にはいかん。仕方あるまい!」

 

 そう言うやいなや、デスエッグロボは背中に背負ったバーニアを噴射し大きく飛び上がりながら後退した。多くの墓石を踏み潰しなぎ倒しながら重低音と共にロボが着地する。

 

「非常に心残りではあるがここまでの様じゃな。次は……次は……」

 

 いつもの様に口上を述べようとするエッグマンは口を噤む。次はもう無いのだから。ユグドラシルは終わり、エッグマンもリアルではかなりの高齢だ、次どころか明日があるかも分からない。

 

「次は必ず決着を付けましょう、ドクターエッグマン」

 

「!!!」

 

 エッグマンはモモンガの思わぬ言葉で顔を上げる。

 モモンガはスマイルマークのアイコンを表情しながら続けた。

 

「ただ、それが終わったら是非ともアインズ・ウール・ゴウンに、こちらの仲間に入ってもらいたいですね。ねぇ、ヘロヘロさん」

 

「まぁ、人種じゃなくて異形種だったら勧誘してたでしょうし。それにもうほとんど身内みたいな感じでしたからね」

 

「ふん! 例え奇跡が起きても不可能じゃろうが……良かろう、エッグマン帝国の建設に協力するなら考えてやらん事も無いぞ? ホーッホッホッホ!」

 

 デスエッグロボを回収したエッグマンはモモンガ達を見つめるが、直ぐに踵を返して背を向けた。

 

「さらばじゃ、我が終生のライバル達よ」

 

 そう告げると、エッグマンはナザリックを後にしたのだった。

 残った二人はエッグマンを見送るとどちらとも無く揃ってナザリック内部に向かう。

 

「ヘロヘロさん、助けてもらってありがとうございます。急に助っ人を頼んですみません」

 

「いえいえ、実はログインまで疲労困憊でフラフラだったんですが、ガチバトルしたら疲れが吹っ飛んで目が冴えちゃって」

 

「ははは、それはいい。私はサービス終了まで居るつもりなんですが。ご一緒にどうですか?」

 

「そうですね。ご一緒させてもらおうかな。積もる話もありますから。最後まで寝落ちしなければですが」

 

 楽しそうに会話をする二人の姿はナザリック地下大墳墓に消えていった。

 

 

※※※※※※

 

 

 ユグドラシル某所:ギルド『ユニオン・オブ・ヴィランズ』連合基地『セントラルルーム』

 

 

 エッグマン基地はこの連合基地の一角のエリアに存在する。そこに向かうためにはまずこのセントラルルームを経由しなければならない。

 自動ドアをくぐるエッグマン。気ままなギルメン達であるし、ここは各ギルメンのアイテム貯蔵庫でしか無い。基本的に各々のセーフハウスが本拠地でこの場所を拠点としているのはエッグマンだけなのだ。

 ここには最終日に誰も来ていないだろうと思いさっさと通り過ぎようと考えていたが、ドアの向こうに見える背中に足を止めた。

 

「なんじゃ、来とったのか」

 

 エッグマンは目の前の丸っこい白衣の男に声を掛ける。

 

「ゴミ溜めの秘密基地は良いのか? ドクター・剛」

 

「なんだとは随分な言い方だなエッグマン。最終日はミーくんと一緒にと思ってるさ。ここにはアイテムを取りに来ただけだ」

 

「そうか、ならそろそろ出て行ってくれるか? 連合は解散。殆どのアイテムは各自持ち出したし、残っとるのはガラクタばかりじゃ。この基地ももうお役御免なんでな」

 

「そうか、世話になったな。ところで他の奴らは?」

 

「さぁの、多方どっかで暴れとるんじゃろう」

 

 エッグマンはギルメン達を思い出す。リザードマン軍団総帥のワニ、三人組のドロボー、トゲトゲした甲羅を背負ったでっかい亀、ハンマーが武器のペンギン、喫煙者に一切の慈悲がない小娘、地下鉄職員みたいな総統、非常にカリスマ主夫な悪の組織の支部長、自分とキャラの被るハゲでヒゲの科学者も居たか。

 他にも沢山いたが、ユグドラシルに残っているのはその中でもほんの僅かだ。

 そう言えばあのカリスマ主夫も引退までモモンガ達の事を気にしていたかと思い出す。

 

「じゃあな、エッグマン」

 

「ああ、さらばじゃ。……ワシは自分の基地に帰るとするかの」

 

 エッグマンはドクター・剛に別れを告げ基地のメインルームへと足を運ぶ。

 基地の一角にそびえるエッグタワーの上層階、メインルームへと入ったエッグマンは巨大な画面の前の椅子へと腰を下ろし、画面に映る外の景色を眺めた。

 両脇には自身のロボ、細身で長身のデコー、太く小さいボコーが並ぶ。

 

(こいつらもとうとう最後までここて突っ立ったままだったか)

 

 もともとは原作ではエッグマンと共に行動するロボットである、心残りに胸が痛む。

 もう残り時間もあと僅か、彼らが活躍する事はもう無いだろう。

 モニターの隅に小さく表示されたデジタル時計を眺める。

 

23:59:30

 

(さらば我が人生よ)

 

00:00:00

 

 時計がその時刻を表示した瞬間。

 

「っ!? ぐぉあああああぁっ!?」

 

 エッグマンは激しい頭痛に襲われた。

 自身の脳みそに情報や知識を無理やり押し込まれている様な激痛。

 頭を抱え椅子の上でもんどり打ってのたうち回る。

 

(まさか、お迎えがサービス終了と同時とは神も粋なことを)

 

 苦痛の中で僅かにそんな考えが浮かぶ。

 あとは財産をユグドラシルで使い切った為、相続でマヌケ顔を晒す意地汚い心の腐った親族の顔か。

 

「エッグマン様! どぎゃあしただがね!?」

「た、大変ばい! 早く医務室に連れていくたいね!」

 

 薄れゆく意識の済でデコーとボコーが喋ったような気がしたが、既にエッグマンは限界でありその意識を手放した。

 

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