オーバーエッグ 念願のエッグマンX 作:黒酢ドリンク生卵を添えて
翌日、早朝。
エッグマン基地。
エッグタワーの通路にガシャガシャと走る音がこだまする。
足音はひとつの部屋の前で止まると勢い良く室内へと飛び込んだ。
「エーッグマン様ーーっ!! たーいへんだーーがねーーーっ!!!」
「ぬわーーーーっ!?」
いきなり部屋に飛び込んで来たデコーに驚いたのはベッドで眠っていたエッグマンである。
ナイトキャップを被りエッグマンマークの描かれたピンクのベビー服みたいなタイツ(本人曰く『邪悪なパジャマ』)姿のエッグマンは飛び上がる。
「な、なんじゃ!? ビックリしたなぁ、もう!」
「エッグマン様! 大変なんだがね!!」
「なーに? こーんな朝早くにぃー? ふわぁーっ………」
扉からは寝ぼけたクレマンティーヌが覗いていた。
到着してから数時間でエッグマン基地に馴染んでいるあたり、この女も相当であるが、エッグマン達のバカバカしいやり取りを聞いていた為でもある。
「と、とりあえず着替えて行くから先に行っとれ!」
「起きたついでだぎゃ! クレ子も来るがね!」
「え? クレ子って私の事?」
「おっみゃーの名前、なっぎゃーでよ!」
「そ、そんな長くないわぁ!!」
「とりあえず出て行かんか貴様らァ!」
朝っぱらからやかましい基地である。
十分後、エッグタワー、メインルーム。
「で、何事じゃ?」
「……従属神様じゃ無かったらぶっ殺してやるのに……」
「クレ子ー? なーんか言ったがやー?」
「なーんでもありまっせーんっ!」
半ばやけくそ気味に返答するクレマンティーヌを尻目に、メインルームへと入る一行。
そこにはモニターを眺めていたボコーが待っていた。
「お、お待ちしておりましたですばい!」
「どうしたボコー、こんな朝早くに」
「と、とりあえずコレを見て欲しいですたい!」
そう言って、指さしたボコーの先、モニターに映るのはいわゆる衛星写真と言うものだ。
「うわぁ、なにこれ? 天国ってヤツからの風景?」
「まぁ、空より高いとこから見てるのは間違いないたい。それよりココを見るばい!」
その衛星写真に映ったのは抉り取られたような森の一部であった。
しかし、それはとても小さな空き地であり特に驚くべきものでも無い。
「なんじゃこれは? 空き地か?」
「昨日の昼までは無かったですたい。それに拡大すると……」
「……んなっ!? コイツはモモンガのとこの吸血娘ではないか!! なんで完全武装でこんな所に突っ立っておるんじゃ!?」
「それも不思議なんだがやー、もっと大変なのはこっちだがね!」
そして映し出されたのは吸血娘ことナザリック地下大墳墓階層守護者シャルティア・ブラッドフォールン……の左手である。
そこに存在する輝き、それこそ。
「か、カオスエメラルド!!」
「あー、カジッちゃんも持ってたねー、こんなの」
「バカもん! これはワシらにとって大切な物じゃ! でかしたぞお前達! 昨日といい珍しく手柄を立てるではないか!」
「いやー、それほどだがねー! 大きなエネルギー反応を探したらうまーい具合に引っかかっただがね!」
「さーっすがエッグマン様の作ったちょー優秀なロボって事たい!」
「いやー、参っちゃうなー、自分の才能に溺れちゃうなオレ」
「いや、オイたちの事はもう褒めんばい!?」
「さっき褒めたじゃろうが」
「キビシーがね!!」
「で、そのカオスなんとか、どーするのー?」
クレマンティーヌの問いにエッグマンは髭を撫でながら答える。
「もちろん回収するとも」
「でーもエッグマン様? 相手はあのシャルティアだがね?」
「なにを言っとるんじゃ、ワシにかかればあんなナックルズ並のおつむの吸血鬼ちょちょいのパーじゃわい、ホーッホッホッホ!」
「んー、でもなんか様子がおかしいですばい?」
「私なんか見たことあるのよねー、コレ。なんか『ケイ・セケ・コゥク』っぽいと言うか…」
「なんですたい?」
「要するにワールドアイテムっぽいって事じゃろ。ワシも見た事はあるんでの」
「さっすがドクター、博識ー!」
「いやぁー、もー参っちゃうなぁ」
「エッグマン様おだてに弱すぎばい!」
早くもエッグマン基地内でルージュポジに定着して来たクレマンティーヌ。エッグマンの扱い方も分かって来たのか昔の彼女からは考えられない態度である。
「あの様子じゃとモモンガも来るじゃろうからな。ヤツがカオスエメラルドを持って行くまでに回収せねば! デコー、ボコー、出撃準備じゃ!」
「「ガッテン!」」
※※※※※※
森の開けた場所に佇む完全武装のシャルティア、それに対峙するのは普段の魔王ロールらしからぬ軽装のアインズであった。
「バフの準備も万全、それに伏兵も無し…か?それともまだ様子見か…。攻撃するにはうってつけのチャンスだろうに。何が何だか…」
彼の言う通り、アインズは対シャルティアの為入念な下準備をして挑んでいた。
数々の補助魔法の重ね掛け、宝物庫より持ち出した多数のレアアイテム。
しかし、それすら持ってしてもアインズの勝率は…低い。
そして、アインズは指にはめられた指輪を眺めた。
「なぜエッグマンさんがこの指輪を渡したのかはわからないが、活用させていただきます」
その指輪の名は『自由なる魂』、ステータスに反映される効果は『全ての行動速度アップ』。しかし、その真価は『装備した者のカルマ値を+-0にする』というある意味ぶっ壊れ性能。
アインズは自身のカルマ値の低さを警戒しての事だと考えたが、この戦い、使える物は使いたい。
「さて、では手始めに……」
シャルティアが待機モードに入っている以上、こちらが攻撃するまでは反撃は無いと考えたアインズは超位魔法【
すると、突如巨大な地響きがあたりを襲った。
「ぬ!? フッ、とうとう犯人のお出ましか?」
アインズは襲撃を想定し身構える。
やがて森の向こうから巨大なドリルが姿を表した。
地面から空中に現れたその巨体。
艦首には金色に輝く巨大なドリル、鈍く輝く紫の装甲に覆われた空中戦艦こそ。
『ホーッホッホッホ!! 見たか、これぞ移動要塞エッグフォートじゃ!』
「エッグマン!」
エッグマンがこの世界に
なお、建造にあたって基地内のかなりの数の資材を使用した、例えるなら開発資材100・燃料・弾薬・鋼材・ボーキALL99999相当であるが、そこは廃課金厨のエッグマンであるので大きな問題は無い。
「エッグマン様ー、なーんでわざわざ地面から出なきゃならんがね?」
「燃料が勿体なかとね」
「バカもん! せっかくドリルが着いてんだから、使わにゃならんでしょうが!」
「げぇっ!? 昨日のガイコツ……」
「ドクター・エッグマン! シャルティアのこの異常、お前が元凶か!」
『なにぃ!? そーんな小娘に興味はないわい! ワシの目的はその小娘の左手の宝だけじゃ!!』
「シャルティアの左手?」
エッグマンの答えにシャルティアを見つめるアインズ。たしかにその手には輝く宝石が握られていた。
「それに、ワシに言わせれば貴様の方こそ異常じゃわい」
「エッグマン……」
アインズがシャルティアを観察している間に地上に降りてきたのか。そこにはエッグモービルに逆関節の脚と武装を装着した二足歩行メカ『エッグウォーカー』に乗ったエッグマンが居た。
「まさか、一人で来るとはな。いくら貴様とて勝率は三割が良いとこではないか? らしくない博打じゃのう」
「…………」
「それに、運良くシャルティアを倒したとて、このままじゃとお前は死ぬじゃろうな」
「?……私が? ハッ、なにを……」
「いいや、死ぬじゃろう。アインズ・ウール・ゴウン、ギルド長『モモンガ』は死ぬ。ワシの宿敵は死んで、ただのアンデッドが残るじゃろうよ」
「……どういう意味かな?」
「ふん、ワシがその指輪を渡した意味が理解出来んと見える。どうせ、周りの理想とする支配者にー、とか、自身のケジメにー、とか考えとるんじゃろうが」
「っ!!」
「ホーッホッホッホ、骨の癖に分かりやすいヤツじゃわい。一体いつから貴様らと戦っとると思っとるんじゃ。そんなもん、お見通しに決まっとろうが。まぁ、ワシもこっちに来た時少し考えたがな。ワシはワシじゃ、他人の目など気にはせん!」
「例えそうだとしても、私はアインズ・ウール・ゴウンを、仲間たちが産んだ家族をっ!!」
「貴様の決意なぞワシは知らん! だがな、お前がギルド長になったのは適任だっかからであり、双方に信頼があったからではないのか? ならなぜその子供らを信頼出来ん、一人でここに来たのが証拠じゃ、一人でやらねば立場が無いと。その状態がやがて貴様の心を殺すじゃろう、お前のその考えが全てを危険に晒しておるのが分からんのかぁっ!」
「……」
「変な気など使わずに、真正面からぶつかって見ろ。それで離反者が出るならその程度だったという事じゃわい」
エッグマンの言葉に黙り込むアインズ。
そう言えば、この世界に来てから、いや、前の世界でも真面目な説教を受けた事があったかと。
仕事のミスで怒られた事はあっても、真正面から叱られた事は無かったと。
両親も親族も居ないが、少しだけ、少しだけ祖父に怒られたような、そんな気がした。
「…ふん、わざわざ説教をしに来たのか? 年寄りは説教臭くていかんな」
「なんじゃとぉ!?」
「で、どうするエッグマン。腹を割って話すにもシャルティアをどうにかせねばいかんのだが?」
「ワシが知るかそんな事。最初に言ったように、ワシの目的はカオスエメラルドなんでな。それにお前に指輪をやったのはただのアンデッドよりお前の方が面白いからじゃしの」
「しかし、あのままのシャルティアでは不都合があるのはそちらも同じだろう?」
「…………ふん、あの程度の小娘。どーって事無いわい」
「そう言えば以前ユグドラシルでシャルティアを突破した時はどうやって?」
「そんなもん課金アイテムと大量の課金メカと課金スキルのゴリ押しに決まっとろうが! どんだけ
「フフッ、こちらではもう課金できないがな?」
「ぐぬぬぬぬ……!」
エッグマンの言う通り、ユグドラシルでナザリックに押し入った時は、湯水の如く課金アイテムを使い、重課金して作り上げた
当然、こちらの世界で課金アイテムなど手に入らないし、課金ゴーレム・スキルも同じ。
1度使うと補充が効かないのだ。
いくら掃いて捨てるほど課金アイテム等の備蓄を持つエッグマンでもこの為に大量消費するのは無駄が過ぎる。
「昨日のジョーカーの事もある、ここは一時休戦して、先の事を見据えると言うのはどうかな?」
「……ぐうぅ……エッグマン帝国建造の為には仕方ない……。どうせワシの攻撃はマトモに通らん、仕方なーく攻撃はワシが受けてやるわい!」
「『ユニオン・オブ・ヴィランズ』ギルド長の実力、見せてもらいましょう」
「『アインズ・ウール・ゴウン』ギルド長が一端の口を聞くわい、貴様こそ抜かるでないぞ!」
長年対立して来た二人のギルド長が今、並び立つ。