オーバーエッグ 念願のエッグマンX 作:黒酢ドリンク生卵を添えて
エッグマンってよく考えたら存在がチートだよねっ!
「うぐぅ、頭がぁ……」
頭に残る鈍い痛みと共に彼は身を起こした。
どうやらベッドに寝かされていた様だ。
はて、自分は一体どうしたのだろう?
ユグドラシル終了と共に頭痛に襲われ、気を失った、最悪そのまま天に召され二度と意識は戻らないものと思ったが。どうやら神は自分を生かした様だ。
しかしである、目を開ければ飛び込んでくるのは鉄製のメカメカしい壁。
現実世界の自室はもっと違う部屋だし、自身が居たのはベッドではなく生命維持装置の中だ。それに身体を見ればリアルのやせ細って皮と骨と内臓だけの肉体ではない、でっぷりと太った丸い体とスラリとした手脚。
頭に手をやれば付けていたVR装置も無いし、頭髪もない。まぁ、頭髪は元から無かったが。
そして一番奇妙なのが、この建物がどうやって、どういう技術で造られているかが手に取るようにわかる。どんな施設なのかも、どんな能力があるのかも。
つまりここが何処なのかも。
「……エッグタワーの医務室じゃと?」
それはユグドラシル最終日に自身が居たタワーの一室だった。
彼が唖然とするその時、部屋の自動ドアが開く。
「エッグマン様! お目覚めになられたですか!」
「一時はどぅーなるかと思ったでよ!」
入って来た背の高いのと、背の低いのを見てさらに唖然とする。
「デコー!! ボコー!!」
「はいな!」
「ほいな!」
「……一体どうなっとるんじゃ!」
「どうもこうもにゃーでしょう、いきなり頭抱えてぶっ倒れたんだぎゃ!」
「ホントにビックリしたたい! でも元気そうで良かったとね!」
メインルームの飾りになっていたNPCが勝手に動いている。しかも質問に答えている。
そして、この身体の頭脳が彼らを造ったのが自身であると、NPCとしてでは無く、一から組み上げたのだと言っている。
「大丈夫ですか〜? エッグマン様?」
「顔色が悪かばい、もう少し寝てたほうが良かとね」
頭を抱えそうになった時、またも自動ドアが開き小さな影が飛び込んで来た。
「うあああぁ! エッグマンさまぁ!! 死んじゃやぁだああぁ!! バカああぁっ!!」
「メッセンジャーロボ!!」
自身の胸に飛び込んで来た小悪魔の様な小さなロボットを抱きとめる。泣きじゃくるメッセンジャーロボを見るとこの混乱も少しは引いた気がした。他人が取り乱している所を見ると落ち着くと言うやつだろうか。
「す、すまんが。鏡をくれんか?」
「はい。ひどい顔だで。エッグマン様らしくにゃーでよ」
メッセンジャーロボを抱いたままデコーが差し出した手鏡を受け取る。
「あらぁ〜」
口から気の抜けた声が漏れる。
そこにはやはりと言うか、想像していた物が写っていた。
大きく赤く尖った鼻、左右に伸びるボサボサのヒゲ、眉毛のない眉、そしてサングラス。
どこからどう見ても『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の悪役『ドクター・エッグマン』その人であった。決して新ソニ版でも米国版でもクラシック版でもOVA版でもない。
鏡の中にはモダンエッグマンその人が居た。
「「エッグマン様?」」
「どうしたじょ? 鏡見つめて、気持ち悪いなぁ」
「な、なんでもないわい! デコー! ボコー!」
「はいな!?」
「ほいな!?」
鏡を見て呆けていたいが、エッグマンの明晰な頭脳が警告を鳴らす。
とにかく現状を確認しなくては!
「デコーは保管庫に行って保管してあるアイテムの確認をして来い!! 問題がないか調べろ!!」
「りょ、了解だがね!」
「ボコーは基地の防衛システムを最大レベルに引き上げろ!! 厳戒態勢じゃ!!」
「しょ、承知しましたばい!」
「メッセンジャーロボは外に出て周囲がどうなっなっとるか調べて来るんじゃ!!」
「わ、わかったじょ!」
「ワシはメインルームへ行く!! よいか! 緊急事態じゃ、急げぇーっ!!!」
エッグマンの号令と共に弾かれたように全員が動き出す。
それと同時にエッグマンもメインルームに向かって走り出していた。
※※※※※※
エッグマンがメインルームに飛び込んですぐ、後を追い掛けるようにメッセンジャーロボが飛び込んで来た。
目の前ではボコーが操作パネルに飛び付き防衛レベルを上げている。
「た、たたた、大変だじょーーっ!」
「な、なんじゃ!? どうしたメッセンジャーロボ!?」
「そ、外が、外が大変な事に!!」
「『大変』じゃわからん!!」
そこで操作パネルを触っていたボコーも驚愕の声を上げる。
「エッグマン様!! 外が!」
「だから外がどうしたんじゃ!!」
「い、今モニターに出しますたい!!」
ボコーがそう言うとメインルームの大きなモニターに映像が映し出される。
「な、なんと!!?」
そこには見渡す限りの海、そして青い空が広がっていた。
「ど、どういう事じゃ!? セントラルルームは!? 他の奴らの基地はどこに消えた!!」
「それだけじゃ無いですたい!! エッグマン様の基地の外周もキレイさっぱり消えてなくなっとりますたい!!」
「小さな島にエッグタワーだけが突き刺さってるんだじょ!!」
映された景色を見て力が抜けたエッグマンは中央の椅子にドサリと腰を落とした。
「何たる事じゃ! コレではまるでアニメのカオスコントロール……」
「エッグマン様ー!! 大っ変だがねーーっ!!!」
「今度はなんじゃい!!!」
次から次へと理解の追いつかない情報にイラつきながら飛び込んで来たデコーを見つめる。
「ほ、ほほほ、保管庫にあったカっカカカカっ!」
「落ち着け! 落ち着いて喋らんか!」
「保管庫のカオスエメラルドがひとつ残らず無くなっとりますだぎゃー!!!」
「「「な、なんですとーーーっ!!!?」」」
※※※※※※
メインルームで椅子に座ったエッグマンはその丸い頭を抱えていた。
「エッグマン様! 基地中探し回ったけども、何処にも無いがね!」
「こっちも見つかりませんたい!」
「どこ行っちゃったんだよー! カオスエメラルドー!」
『カオスエメラルド』
『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』に登場する拳大の七つの宝石。原作では一つ一つが強力なエネルギーを持ち、七つ揃えると願いすら叶えると言われる秘宝。
それはあくまで原作の話。ユグドラシルでは所持しているプレイヤーのステータスを底上げするだけのアイテム、のテクスチャをエメラルドに置き換えただけのシロモノだった。一つだけなら全ステータスを20%アップという微妙な物だったが、七つ揃えると一時的にレベル上限が解除されて全ての『レベル』が二倍になる鬼仕様だった。つまりレベル100のカンストプレイヤーが七つのカオスエメラルドを所持すると単純計算でレベル200になる。レベル差が戦力の差に直結するユグドラシルに置いて時間制限付きとはいえ100ものレベル差はどう足掻いても覆らないものだ。
時間とリアルマネーを湯水の如く消費し、公式ぶっ壊れアイテムこと『ワールドアイテム』を使えばその限りではないが。
しかし、エッグマン自身ぎっしりと書き込んたキャラWikiもかくやというキャラ設定に引っ張られまくった結果がこの頭脳である。
今ではユグドラシルのスキルすら不要で宇宙艦隊すら造れる自信がある。
もし、カオスエメラルドに設定した内容が同じ様に適用されていたら。
エッグマン自身、悪の天才科学者と言えばとゴーレムクラフト系のみならず生産系を網羅し、後は自身の防御と体力、一部素早さに振りまくった歪極まりないステータスは戦闘には向いていないのは自覚している。エッグマンの真髄は制作ロボに搭乗した時に現れるのだから当然だ。
それでも七つ揃ったカオスエメラルドのレベルアップ状態はガチビルド前衛すらエッグマンが肉弾戦で倒せる程の強化率なのだ。
その上もし『願いを叶える』なんて設定まで生きていたら。
せっかく目の前に広がる世界が滅んでしまうかもしれない!
まぁ、エッグマンの脳みそを持ってすれば星の核さえ残っていれば再生する事も可能なのだが、それは少し置いておく。
「とにかくカオスエメラルドの捜索は続けるとして、ワシらの現状も確認する必要がある。デコー! 隠密偵察機を全方位に飛ばして他の陸地を探すんじゃ!」
「ラッジャー! 小型偵察メカ『見ちゃっタン』発進!」
エッグマン達は基地から発進する小さなロボット達を見送ったのだった。
2019.1.28 サブタイトルをアニメっぽく編集