オーバーエッグ 念願のエッグマンX 作:黒酢ドリンク生卵を添えて
リ・エスティーゼ王国:エ・ランテル冒険者組合
ここ、エ・ランテルは王国、帝国、法国と交わる地理的な要所である。
また、定期的な帝国との戦争、危険なモンスターが潜むドブの大森林に近い事もあり腕に自信を持つものが多く集まってくる。
そんな街の冒険者組合も荒くれ者が集う場所の一つだ。
ある者はナイフを弄び、ある者は賭け事に使うのかカードをきる、中に併設された酒場ではエールを手にくつろぐ者、ポーションの瓶をうっとりと眺める者など多様な人間がそこに居た。
すると入口のウエスタンドアを開け、薄暗い屋内に二人組の男女が入って来た。
片方は美の化身かと見紛うほどの美女、片方は黒いフルプレート装備の大男だった。
「ヒューッ! 見ろよヤツの鎧を…まるでアダマンタイト冒険者みてえだ! こいつはやるかもしれねぇ…」
「まさかよ。しかし蒼の薔薇には勝てねえぜ」
そんな二人組に警戒の視線が集中する。
二人はそんな視線を意に介することも無く、カウンターへと進む。
「……ご要件は?」
「モモンと言う。冒険者登録をしたい」
「ではこちらに」
「…代筆を頼みたい」
「……かしこまりました」
モモンと名乗った男は女と共に冒険者登録を済ませる。
そこに……。
「…待ちな。ここは
壁際でナイフを弄んでいた冒険者が凄む。
「さっき何をしていたのか見ていなかったのか? それともピクニックでもしに来たと思うのか? バスケットも持ってないが」
「とぼけた野郎だ」
「冒険者として名を挙げるんだ。アダマンタイト級になど、直ぐになってやるさ」
モモンの自信たっぷりの言葉に冒険者はいきり立つ。
「こいつ頭がおかしいぜ!」
「消えな! 消えなきゃ消してやる!」
言うや冒険者は6本ものナイフをモモンに向かって投げつけた。
「おっと」
すると、モモンは危なげも無く飛んで来たナイフ全てを手で掴むと冒険者に向かって投げ返す。投げ返されたナイフは冒険者の頭部左右を掠め壁に突き刺さった。壁に縫い付けられた冒険者はヘナヘナと腰を抜かす。
「ぐっ、ぐぅ〜っ!」
「そういう物はリンゴの皮を剥く時以外はポケットにしまっておくものだ」
「てめぇっ!」
今度は顔が犬によく似た冒険者がモモンの前にやってくる。
「新入りの癖に調子に乗りやがって! テメェみてえなヤツにやらせる依頼はねぇんだ! 失せな!」
「まぁ、そう言うな。アイスミルクでも飲んで落ち着いたらどうだ? 私は犬みたいな顔をしたヤツは嫌いじゃない」
「な、なにぃ〜っ!?」
「あーあー、知らねぇー。ドグの気にしてる事言っちまいやんの!」
ドグと呼ばれた冒険者は腰のショートソードを抜き放つ。
それを見た周囲の冒険者は恐怖からか席を立ち、身を構えた。
「抜きなよアイスミルク! 今まで俺の顔についてお喋りして墓場に埋まらなかったヤツァ一人もいねえんだ!!」
「誤解するな。私はお前が犬に似てると言ったつもりは無い。犬の方がお前に似てると思ってな」
「ウゥーッ! ワンッ!」
「決まったァ! アイツ、ショートソードのドグを本気で怒らせやがった!」
怒り狂ったドグは抜き放った剣を横なぎに切り払う。
しかし、モモンはそれを飛び上がってヒラリと躱すと近くの丸テーブルの上に飛び乗った。
「やめておけ。そんなもの振り回すとろくな事にならないぞ? それとも犬語じゃないと理解出来ないか? 『わんわんわーん!』」
「うぅーッ! てめぇのお袋でも見分けがつかないように刻んでやるっ!!!」
モモンの言葉にドグは激怒しショートソードを振り回す。しかし、モモンはそれを余裕で躱す。痺れを切らしたドグはモモンに切り掛るもヒラリと避けられると足を引っ掛けられた。
バランスを失い、勢いもそのままにドグは何個ものテーブルをなぎ倒しながら壁に激突し動きを止めた。
「勘弁して欲しいものだな。割り勘にしないか? 壊してしまった物の弁償は」
「……ぎゃっふん」
「ふむ、気を失ってしまったか。参ったな1人持ちか。店主、ツケて置いてくれ。依頼をこなしたらまた来る。ナーベ、行くぞ」
そう言って美女を連れて歩き出したモモンの前には野次馬が避けた事で出入口までの一本の道が出来上がっていた。
なお、その後出口にたどり着くまでに赤毛の女性にポーションの弁償をキッチリとさせられたり、銀級冒険者『漆黒の剣』と依頼を受けたりもするのだが、それは別のお話。
ちなみに、彼の相方のナーベはモモンが冒険者組合を出るまで小さく震えながら鬼の様な形相で唇を噛み、手を血が出るまで握りしめ何かに耐えていたようだが、モモンが派手に暴れるので誰も気がついていなかった。
※※※※※※
モモンが冒険者組合でひと暴れしてから数日後。
リ・エスティーゼ王国の草原をエ・ランテルに向かって走るひとつの影があった。
てんとう虫のような丸いフォルムに赤い塗装、体の前後に装備された4本のシリンダー、高速回転する6輪のホイールで軽快に走る。
知っている人は知っている、夢とロマンの塊、『グランディス・タンク』略してグラタンである。しかし、今それに乗っているのはかの3人組ではなく。
「ワシじゃよ! ワリ……じゃなかった、エッグマンじゃ! ホーッホッホッホ!」
「今、誰と間違ったんだがね?」
「ヒゲがギザギザしてそうたい」
「なんかニンニクばっかり食ってそうじゃん」
そう、悪の科学者エッグマン一味である。
「それにしても、エッグマン様いいんだがね?」
「他人のメカば勝手に使って、怒られるばい?」
「グラタンって美味しそうな名前だじょ」
「カトリーヌと呼ばんか。いいんだよ、ワシが預かっとるんじゃから。それに、たまには動かさんと壊れてしまうわい」
「機械のメンテナンスも大変だじょ」
このグラタンは元々、悪役連合所属のチーム『グランディス一味』の所持品であった。しかし、チームメンバーであるサンソンの結婚、ハンソンの栄転、グランディスの恋愛とリアルでの転換期が到来。グランディス一味は引退と相成った。そして持ち主を失ったグラタンは連合ギルド長預かりとなったのだった。
ちなみに、サンソンはかなりの年の差結婚という事もあり、祝いの言葉と同時に(主にペペロンチーノを代表とする知人友人からは)呪いの言葉も山のように貰っていた。
「まだ、エ・ランテルにつかないのかじょ?」
「エッグマン様、帝国に行くならエッグモービルでひとっ飛びした方が早いでよ。後ろに積んどるんだで、そっちで行きましょうよー」
「大きな戦艦、せめてタイガーモスぐらいの設備があるメカの方が良かとね」
部下のメタ達の言葉にエッグマンはため息を着く。
「馬鹿だねぇ、おまえたち。いいか? 情報という物は足で集めるもんなんだよ!」
「まるで敏腕刑事たい。でも声的には銀行幹部のほうがしっくり来るたい!」
「じゃ、なーんで姫様に盗聴器つけたんですかー?」
「姫という事は偏った情報しか入ってこんじゃろうが。後はその情報を現地レベルで修正する必要がある訳だなコレが」
「でも、もっと大っきいメカでも良かったじょ。キッチンもお風呂も無いんだじょ!」
「今はまだそんな目立つメカに乗る必要は無いわ! 今は地道にエッグマン基地をこの地に増やす事が大切じゃわい。城の襲撃事件でワシの知名度は上がっておるじゃろうから、エッグタワーがやられた時の備えはしておくべきだろうが」
「むーっ! そんなもんかじょ?」
「そんなもんなの! それより、デコー、ボコー、エ・ランテルとやらにはそろそろ着くぞ! 車体が隠せるような場所をしっかり探っておくんじゃぞ!」
「了解、もう日が暮れるがね」
「カモフラージュに最適な場所を探すばい」
こうしてエッグマン一味もエ・ランテルへと向かう。
※※※※※※
エ・ランテル共同墓地。
その墓地の地下に作られた空間で二つの影が向き合っていた。
一つはやせ細った影。もう一つは丸い影だ。
丸い影は人と言うにはあまりに異質であまりに小さい。
「では手筈通り頼みましたよ、カジっちゃん?」
「…かしこまりました。しかし、その呼び名は…」
「のほほほほ、クレマンティーヌちゃんの使っている呼び方、結構しっくり来ますので。それに彼女、なんとなーく彼に似てるんですよねぇ…」
「彼?」
「なーんでもございませんよ。では後ほど。のーっほほほほほ!」
そう言い残すと丸い影は跡形もなく消え去った。
こうしてバラバラだった糸は絡まり、大きなうねりとなって運命の歯車は回り出す。
これが大事件の小さな幕開けだった。
サブタイと『アーマロイド・ナーベ』って単語を思い付いてしまったが故の凶行。
あと、ストーリ展開とネタ的な意味で多重クロスタグを追加しました。
あちなみにエッグマンのステータスイメージはこんな感じ。
名前:ドクター・エッグマン
Name:Ivo Robotnik
種族:人間
身長:185cm
体重:128kg
カルマ値:-100(中立~悪)
Lv.100
HP:100
MP:5
物攻:45
物防:100
素早:80
魔攻:0
魔防:100
総耐:100
特殊:100