オーバーエッグ 念願のエッグマンX   作:黒酢ドリンク生卵を添えて

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Ep06「空腹は盲目」

「エッグマン様ー! お腹が空いたじょー!!」

「もう夜ばい!」

「どっかでご飯食べれる所聞くだがね」

「うるっさいわい! ワシだって腹は減っとるわ! 指名手配されてるかも知んないでしょうが! まったくもー! なーんでワシいきなりあそこで暴れちゃったかなぁ?」

 

 日も暮れた夜半、エ・ランテルの街を騒ぎながら歩くのは、かのエッグマン一味である。

 彼等らはエ・ランテルに到着したのはいいが、先日リ・エスティーゼの王都で派手に暴れてしまっている。情報伝達網の発達したリアルなら当然の如く全国指名手配されていると考え、城壁をエッグモービルで飛び越えて街に潜入、小型のスパイメカを使って情報を集めていた。

 しかし、エッグマンも人であり、彼の作ったメカもまたよく出来ている。つまり、メカ共々腹が減ったと言う事だ。それで、身バレのしなさそうな飲食店を(偵察している時間より長い間)探している次第である。

 正直、とっとと手配されていなさそうな帝国に行った方が良いかとも考えているエッグマンである。

 

「もうその辺の家に頼んでご飯恵んで貰うじょ!」

「ごめんくださーいだがや!」

「って、何してんだよお前らは!?」

「まるで行動力の化身たい!?」

 

 空腹に痺れを切らしたメッセンジャーロボとデコーが近くの家屋の入り口を開け、中に声を掛ける。

 

「あんれぇー? 返事がにゃーでよ?」

「なんて書いてあるか分かんないけど、ココお店っぽいじょ?」

「でも灯りは点いとるばい? 失礼しますたーい!」

「だから、なんでお前らはそう突っ走るんだよ!」

「もうお腹が空いてヤバいんだじょー!!」

「ああ、もう! わかったわかった! ワシも腹が減ってかなわん。おーい! 誰もおらんのかーっ!?」

「オイたち、もうちょっと奥ば探しくるたい!」

「ワシはここに居るからな。メッセンジャーロボ、お前は空から店を探してきなさい」

「はーいだじょ!」

 

 そんなやり取りをしながら厚顔無恥と言うか無防備にもエッグマン達はたまたま入ったバレアレ薬品店にズカズカと押し入る。

 家主を探す為、デコーとボコーが店内奥へと進んで行った。

 すると薬品店の一室に布を被った4人分の膨らみを発見した。

 

「おりょ? こんな所に布団敷いて誰か寝とるばい?」

「こーんな所で寝とったら風邪引くがや。ちょっと起きにゃーよ!」

 

 そう声を掛けて布をめくったロボ二人の目には物言わぬ死体が飛び込んで来た。

 

「「ぎゃーーーーっ!!!」」

「ど、どうしたお前ら!? ぎゃーーーーっ!!?」

 

 二人の叫び声を聞いたエッグマンが直ぐに部屋に駆け込んで来る。

 エッグマンも床に横たわる4人分の遺体を見ると悲鳴を挙げてしまった。

 エッグマンのキャラクターとしてのカルマ値は-100。悪に寄ってはいるがそれでも現実(リアル)では割と倫理観のしっかりとした老人である。エッグマンとなってからはカルマ値のせいか他人に迷惑を掛ける程度の事なら気にしなくなってしまったが、それでも目の前に惨殺された死体が転がっているのを見ると驚いてしまう。

 

「な、何たる事じゃ!」

「エッグマン様、(おそ)ぎゃーよ!」

「ひ、人が死んどるばい!? 朝のアニメ番組でこの絵面はお茶の間にお届けできんたい!!」

「と、取り乱しとる場合か! 見た所、死んでからそう時間は経っとらん! デコー! 体力全回復で蘇生するアイテムがあったじゃろう! アレを出せ!」

「い、良いんですかぁ!? アレ、めっちゃんこ高っきゃーだがね!?」

「緊急事態じゃろうが! 基地に戻れば売る程あるわい!」

 

 死体はどれも(エッグマンから見れば)若く、向こうでは死を待つだけの老人だった彼から見るとあまりに哀れであり、放置するのも忍びなかった。

 そしてデコーが取り出したのは課金でのみ入手出来る、範囲蘇生、ペナルティ無し体力全回復、状態異常無効化の超高級蘇生薬である。なお、エッグマンの言葉の通りエッグタワーの保管庫には売る程在庫が積んである。

デコーは、その瓶だけでも相当な高級品に違いない薬を空中に向かって投げた。空中に放り出された蘇生薬は4人の遺体上に到達すると小さな音と共に砕け散り黄金の様に輝く優しい光を降らせる。

 すると降り注いた光は4人分の遺体を輝かせ、見るも無残な肉体はみるみるうちに傷一つ無く修復され、肌の色も健康なものへと変わって行く。

 

「エッグマン様! 無事蘇生出来たみたいだがや」

「ちゃーんと呼吸もしとるたいね!」

 

 デコーとボコーによって蘇生の成功が確認されホッとしているそこに。

 

「な、なんじゃ! 今のは!?」

「おっわぁっ!? な、なんじゃい!? 誰じゃっ!?」

 

「老人言葉が被っとるで、どっちがどっちかわからんがね?」

「字面だけだとエッグマン様の一人芝居たい」

「うっさいよ。で、なんじゃい! このバァさん」

 

 部屋の入り口に角材を構えた老婆が立っている。その顔は呆然としており、角材を構えて今にも殴り掛かろうという格好からは不釣り合いだった。

 それを見たボコーが老婆を指差し声を上げる。

 

「あーっ! わかったばい! このばぁ様が殺人犯たいね!」

「なるほど、犯人は現場に戻るっちゅーがね!」

「と言う事は、このバァさんが!」

「そんなワケあるかい! わしはこの店の店主、リイジー・バレアレ! お前らの方が侵入者じゃないかい!」

 

 そう言われるとエッグマン達も返す言葉がない。

 実際、声は掛けたものの店内の奥までズカズカと入り込んだのはエッグマン達である。

 するとそこで蘇生した者達が意識を取り戻した。

 

「あ、あれ? 俺達は…?」

「一体何が起こったのか…わからないのである」

「た、確か変な女が…ニニャっ! ニニャは!?」

「こ、ここに居るよ…」

 

「っと、あっちはあっちで落ち着く時間が要りそうじゃのう」

「ここはお互い冷静になる必要があるだがね?」

「まずは話からってことばい」

 

 

 

※※※※※※

 

 

 

「つまりアレは死者を蘇らせる薬というわけか!!?」

「だからそうだと言っとるだろうに…」

「そんな、有り得ねぇ」

「まさに夢の様である」

「夢じゃないよ、だって皆が殺される所、しっかりと見たんだから、皆が…」

「ニニャ! ムリしなくていい。今は思い出すな」

「なーんか大変そうだがね」

「お嬢さんお茶でも飲んで落ち着くばい」

「お嬢って…あっ!」

「気にすんなよ、俺たちが気付かない訳ないだろ?」

「そのような事些細な事なのである」

「ちょーっと待つがね! 」

「今、いい雰囲気になられるとセリフが増えすぎるたい!」

 

「とにかくじゃ!」

 

 エッグマンの一喝で混沌と成りかけていた場が静まる。

 

「バァさんはこの課金蘇生薬が欲しい、そっちの4人は生き返った」

「そ、そうでした。命を救って頂き感謝いたします」

「そこでじゃ」

 

 銀級冒険者『漆黒の剣』リーダー、ペテルの感謝の言葉に若干被るようにしてエッグマンは喋る。

 

「バァさん、この薬、欲しいか?」

「欲しいっ!!」

 

 リイジーのあまりの即答に若干引くも話しをつづける。

 

「うっわぁ〜…ま、まあ良いわ。で、いくら出す?」

「それ程の秘薬……金貨5万枚だそう! 作成方法を知っているならその情報に倍出す! この身の全てを売り払っても絶対に払う!!」

「……だ、そうだ。冒険者諸君、その金貨5万枚の秘薬を既に使われたお前らは何を差し出すのかのう?」

「そ、それは…」

 

 エッグマンの言葉に漆黒の剣は顔を顰める。いくら命が助かったとて大金である。一体何を要求されるのか。

 

「ホーッホッホッホ! なぁに、そう気負うことは無いぞ! ここからがビジネスじゃからのう」

「どういう事じゃ?」

「バァさん、お前にもこの薬、一本のやろう」

「な、なんじゃと!?」

「冒険者のお前さん方にも代金は請求せん」

「ほ、本当ですか!?」

 

「だがしかし!」

 

 エッグマンの言葉に全員がかたずを飲んで立ち尽くす。

 一体どんな対価なのか、果たしてそれを返せるのか。

 次にエッグマンの口から発せられた言葉は。

 

「情報をよこせ」

『はぁ?』

 

 エッグマンの物言いに全員が気の抜けた声を出してしまった。

 ここで最初に口を開いたのはペテルであった。

 

「冒険者として情報の大切さは理解しているつもりです。しかし、価格に見合う情報は持ち合わせていません!」

「わ、わしもじゃ。情報と言っても括りが広すぎる! 何を持って対価となりうるのかが全くわからん!」

 

 慌てふためく彼等をとても楽しそうに眺めるエッグマンは高らかに笑う。

 

「ホーッホッホッホ! 全てじゃ! 全ての情報に対価として価値を付けよう。交通、物流、外交、伝承、地理、雑学、一般常識、技術、武術、科学、価値観。何でもいい、お前達の知っている全てを教えろ、伝えろ。それで代金はチャラじゃ」

「オイ達は最近ここに来たばかりばい」

「だーから、この国の情報が欲しいがね」

「ワシらはとっても遠くから来たのでな、この土地の常識にすら疎いのだ」

「エッグマン様に常識がにゃーのは昔から『ガツンっ』あだっ!!」

 

 失礼な事を喋り掛けたデコーにエッグマンの工具の一撃がおちる。

 

「お、お主らは一体何者なんじゃ…」

 

 リイジーの呟きに、エッグマンは堂々と胸を張り、高らかに名乗りを挙げる。

 

「ワシの名はドクター・エッグマン! 世紀の天才科学者、ドクター・エッグマン様じゃ! ホーッホッホッホ!!」

「エッグマン様! 名乗るのはちょっと不味いがね!」

「こ、こないだやった事忘れたとですか?」

「あ、し、しまった! つい!」

 

「エッグマン?」

「聞かない名前である」

 

 ルクルットとダインの言葉にエッグマンは内心胸を撫で下ろす。ここで『国賊許すまじ!』などとなってしまったら、せっかくの現地協力者を失ってしまう。今のうちに囲い込んでおこう。

 

「知らないのなら結構、いいか! ワシの名は外ではまだ言うでないぞ! その時が来るまで、そうだな、教授! モリアーティ教授と呼ぶがいい!」

「なーんでモリアーティなんだがや?」

「中の人ネタばい?」

「良いか! お前らがワシに協力するのなら。装備も薬も全面的に支援してやろう。通貨はこちらの物を持っていないが、金貨はあるからな」

 

 エッグマンの言う金貨とは無論ユグドラシル金貨の事である。

 

「偽名を使うとは、何か裏があるのである」

「なぁに、この間ちょっとやんちゃをな」

「あなたの目的はなんなんですか、教授」

 

 ペテルの疑問にエッグマンは少し考える。

 ドクター・エッグマンの目的とは無論エッグマン帝国の建設である。しかし、その具体的な内容は非常に曖昧だ。夢と野望の楽園だとか、表が遊園地で裏が兵器工廠だとか、実際にエッグマンランドが完成したゲーム作品もあった。だが、今の自分はどちらかと言うとコミカルキャラのエッグマンだ、新ソニやソニックフォースのエッグマンとは若干ちがう。元の体の価値観が強く残っている為か、カルマ値が多少悪に傾いていてもソニックフォースのエッグマンの様なことは出来そうにない。

 ならば元の価値観を取り入れてうまい具合にこの世界のエッグマンを再構築する必要がある。2138年版のエッグマン、新たなエッグマンを。かつてギルドを組んだ仲間たちの理想を思い浮かべる。

 そして。

 

「知れたこと! 権力の椅子にふんぞり返る、無能なる者共に思い知らせ、この地に新たなる秩序を作り上げる! 人、種族、地域の壁を粉砕し、このワシの名の元に新たなる世界を、エッグマン帝国を作り上げるのだ! ホーッホッホッホ!!」

 

 自身では無自覚だったが、かなりあのギルドに心を寄せていた様だ。気の良い悪役仲間に影響を受けている気もしない事も無いが、まぁ、いいだろう。

 第一目標はエッグマン帝国の建設、第二目標は仲間たちの思い浮かんだ理想の国をチョロっと。あとは当然、ライバルの育成だ。

 

「教授、全力で協力します!」

「よぉし! 我が野望の為に努力を怠るでないぞ! ホーッホッホッホ!」

「ニニャ!?」

 

 あと何故か冒険者の小娘に懐かれたエッグマンである。

 




やっぱりエッグマン、最終的に調子に乗るのもお決まり。
指名手配でビビってたんじゃねーのかよっ!
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