オーバーエッグ 念願のエッグマンX   作:黒酢ドリンク生卵を添えて

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Ep07「エ・ランテル墓地!」

 エ・ランテル、バレアレ薬品店。

 蘇生した冒険者『漆黒の剣』に対してエッグマンが説明を行っていた。

 

「とにかくじゃ。諸君はワシに情報を提供し。ワシは諸君を援助する。当分はワシの基地で作業に務めてもらうが、それが終われば冒険者に戻ってもらって構わん」

「はぁ…」

「当然、冒険者に戻っても援助は続けてやるが、そこは依頼としてこちらの要求に応えてもらう。まぁ、ワシも探し物があっての。それが見つかるのなら、コチラもできる限りの希望に応えよう」

 

 エッグマンの話を微妙な顔で聞いている一同、そこにメンバーの1人ニニャがおずおずと手を挙げた。

 

「教授、いやドクター?」

「今はドクター・エッグマンでかまわん。諸君らに言いたいのは不用意にワシの存在を出すなと言う事だ。いろいろと準備が出来るまではおおっぴらな事はしたくないのでな。で、なんじゃ?」

「ドクターのさっきの話。貴族達をやっつけるって事ですか?」

「貴族? まぁ、そうなるじゃろうな。ワシにとっては今の支配者階級は邪魔でしかないわい」

「本当に可能だと?」

「なんじゃ? ワシを疑うのか!? …と言っても初対面じゃし、仕方なかろう。とりあえずは蘇生分の仕事はして貰う、信じるかどうかはその後の話じゃ」

 

 そこに、窓の外から小さな影が勢い良く飛び込んで来た。

 

「エッグマン様ーーーっ! 大変だじょーーっ!」

「な、なんだコイツ!?」

 

 それに冒険者達が一斉に身構える。

 

「待て! ワシの部下じゃ。どうしたメッセンジャーロボ?」

「大変なんだじょ! 墓場から死体がぶわぁーって!」

 

 メッセンジャーロボの報告にリイジーが大声を挙げる。

 

「そうじゃ! 忘れておった! 今、墓地からアンデッドが湧いておる! お前達と共に旅をしたと言う『モモン』と『ナーベ』とか言う冒険者が攫われたわしの孫を助けに行ったんじゃ!」

「なんだって!? モモンさんとナーベさんが!!」

「早く助けに行くのである!」

 

「待たんか!」

 

 今にも店から飛び出しそうな漆黒の剣の面々をエッグマンが一喝する。

 

「一度殺された相手が居るところに馬鹿正直に突っ込むやつがおるか! デコー、ボコー! お前らはカトリーヌに戻れ! ワシはメカを召喚して黒幕をたたく!」

「エッグマン様? 黒幕が誰か分かるだがね?」

「馬鹿だねぇお前ら、アンデッドが湧いてるって事は1()()()()()()()()()が黒幕じゃろうが!」

「それにエッグマン様? わざわざこの街を助けるばい?」

「後々ワシの物になる街じゃろうが! ラクーンシティでもあるまいに、死体の徘徊する街など御免こうむるわ!」

 

 意気揚々と店を出ようとするエッグマン達に今度は漆黒の剣から声が掛かる。

 

「ま、待ってください! いくら高級な薬を沢山持ってるからって、そっちの方が無謀じゃないですか!」

「ここは冒険者の俺たちに任せて、じいさん達は待ってなって!」

「これはリベンジマッチである!」

「今度は負けない!」

 

 やる気満々の漆黒の剣、その様子を見たエッグマンはニヤリと笑うと楽しそうに笑い出した。

 

「ホーッホッホッホ! その意気や良し、貴様らもなかなか負けず嫌いの様じゃな。しかし、今回はこちらに譲ってもらおう。デコー、ボコー、メッセンジャーロボ! そいつ等をカトリーヌに乗せてやれ! コイツらを殺った共犯者も居る可能性が高い! お前らは黒幕の()()()()()()の所に向かうのじゃ! カトリーヌの力存分に見せてやれ!」

「「ガッテン!」」

「だじょ! さぁ、お前らさっさと付いてくるじょ!」

「なーんでおみゃーが仕切っとるがね!?」

「ホンットに生意気たい!」

 

 

 

※※※※※※

 

 

 

 エ・ランテル、墓地。

 

 霧深い墓地、そこに2つの人影がある。

 二人の距離はとても近い、抱き合っている、と言うには語弊がある。

 正確にはローブを纏ったアンデッドがビキニアーマーの女性を、その骨の腕でホールドし絞め殺そうとしている。

 女性はズーラーノーン十二高弟の一人、元漆黒聖典第九次席、クレマンティーヌ。

 一人はアインズ・ウール・ゴウンギルド長モモンガ、あらためアインズ・ウール・ゴウンその人である。

 冒険者モモンとして墓地に訪れ、クレマンティーヌを軽くあしらったアインズは今まさに彼女を絞め殺さんとしていた。

 

「てめっ、離せっ、うがああぁぁぁっ!」

「斬り殺されるのも、骨をへし折られて死ぬのも、押し潰されて死ぬのも、大した違いは無いだろう?」

 

 アインズが力を強めるにつれ、骨は軋み、クレマンティーヌのアーマーに縫い付けられた小さな鉄板が剥がれ落ちる。

 クレマンティーヌは抵抗を続け、アインズの骨の顔を殴り、頭突きしボロボロになりながらも暴れ続ける。

 アインズがついにクレマンティーヌの身体をへし折ろうと力を込めた瞬間。

 

 一陣の青い風が吹き抜けた。

 

「ぬぐぅおおおぉっ!?」

 

 アインズは右側方から不意に衝撃を受け数メートル程跳ね飛ばされる。あまりの衝撃と驚愕から締め上げていたクレマンティーヌをその場に落としてしまうほどだ。

 墓石を破壊しながら停止したアインズは怒りを覚えつつ(アンデッド特有の精神の鎮静化も行われた)立ち上がり、自身を跳ね飛ばした犯人を睨み付け、驚愕の声を上げる。

 

「き、貴様は!!」

 

 そこには流線型のフォルム、青く輝く金属のボディ、ジェットエンジンの様な胴体。

 赤い眼を闇夜に輝かせるロボットが佇んでいた。

 

「め、メタルソニックだと!?」

 

 そう、それはかつて音速のハリネズミに対抗するため、とある科学者が作り出した超高性能ロボット。

 そのロボットがこの場に居るということは。

 

「ホーッホッホッホ! ホーッホッホッホッホッホッホっっゲホッゴホッ!!」

「Dr.エッグマン!!」

 

 エッグモービルに乗って現れたエッグマンを見たアインズは反射的にその名を呼んでいた。

 エッグモービルの下には血やら何やらを垂れ流しにして気を失ったクレマンティーヌがロボットアームで掴まれた状態でぶら下がっている。

 

「モモンガ!? やはり生きておったか、しぶといスケルトンめが! いや、骸骨じゃから死んでおるのか?」

「え? ああ、まぁ、こっちに来てからアンデッドなんで。実際どうなんでしょう?」

「そっちもいろいろ大変なのねぇ…って、そんな事はどうでもいいわい!!」

 

 エッグマンは回復薬を容器ごとクレマンティーヌに叩き付けながら激昂する、扱いが雑である。

 

「今回のアンデッド騒ぎ、つまり貴様が主犯格か! ワシの(手に入れる予定の)街で大量に動く死体なぞ作りおって! 骨になって頭まで空っぽになったか、きっついお仕置きが必要な様じゃな!!」

「ま、待ってくれエッグマン! 私にも事情が」

「問答無用! それなら決着が着いた後にじっくり聞いてやるわい。メタルソニックよ! その骨をやっつけるんじゃ!」

 

 エッグマンの命令を聞くや、メタルソニックは身体から高音を発し、身構える。

 戦闘態勢に入ったメタルソニックを見たアインズは内心ため息をつきながら受けて立つ構えを見せた。

 

「ならば、そのロボットを無力化してでも話を聞いてもらいましょう!!」

 

 

 

※※※※※※

 

 

 

 アインズとメタルソニックが衝突する少し前。

 エ・ランテル墓地の別の場所。

 

「アインズ様からお許しが出た以上、スケリトル・ドラゴン二体程度、さっさと消し飛ばしてしまいましょうか」

「何を言っておる、スケリトル・ドラゴンには魔法に絶対の耐性があると言うのに!」

 

 こちらでは、ナーベ、もといナーベラル・ガンマとズーラーノーン、カジットの戦いが行われていた。

 

「それに、儂の力はまだこの程度では無いわ! この()()()宝玉のおかげでな!!」

 

 カジットは手に持った二つの物を掲げる。

 一つは死の宝珠、一つはこぶし大の輝く宝石。そのふたつが輝きを放つ。

 死の宝珠から放たれるエネルギーと輝く宝石から放たれるエネルギーは混ざり合い空中に大きな塊を生み出す。

 エネルギーの塊からは更にもう一体の骨の竜が姿を現した。

 

「スケリトル・ドラゴンをもう一体か」

「それだけではないわ! 見よ!!」

 

 カジットの声に反応するように三体のスケリトル・ドラゴンがエネルギーに包まれる。

 三つの大きなエネルギーはやがて混ざり合いさらに強大な塊へと変貌した。

 

「これぞスケリトル・ヒュドラ! こいつの力があれば街と言わず、国ごと滅ぼして負のエネルギーを貯めることさえできるぞ!」

「ムシケラが、少しだけ面倒ね」

 

 エネルギーから出てきたのは三つの首を持つ新たなる骨の竜だった。

 

「さぁ、行けスケリトル・ヒュドラよ! その愚か者を叩き潰してしまうがいい!」

 

 カジットの命令と共にスケリトル・ヒュドラが動き出したその時。

 

『おりゃああぁぁぁぁっ!!!』

 

 突如、闇夜から飛び出してきた巨大な影がスケリトル・ヒュドラと激突する。

 

「な、なんだアレは!? 巨大な甲虫? いや、しかし、何故こんな所に!!」

『たーしかに、グラタンっててんとう虫みたいだでよー』

『にしても、でっかい骨ばい!』

『おい、お前ら大丈夫か?』

『こ、こんなに動き回るとか聞いてないです…』

『ニニャが戻しそうなのである』

『うっぷ……』

『あ! ナーベちゃん大丈夫!?』

 

 スケリトル・ヒュドラを弾き飛ばした甲虫から突然聞こえた声にナーベラルは顔を顰める。

 ナーベラルはこの、赤くて、光沢があって、六輪の物体が虫では無いことは分かっていたが、なぜその中から少しは記憶にあるゴミムシの声がするのかはわからなかった。

 

『見るばい! アイツの持ってるアレ! カオスエメラルドたい!』

『さっさと取り返してご飯食べるだぎゃ!』

『なめんなよ! ばーか!!』

 


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