オーバーエッグ 念願のエッグマンX 作:黒酢ドリンク生卵を添えて
(やはり、速い!)
エ・ランテル墓地にて、アインズは攻めあぐねていた。
彼の周囲では休みなく電撃と暴風が吹き荒れる。
どちらもメタルソニックが繰り出す
アインズはメタルソニックに翻弄されながらも自身が覚える数多の魔法の中から最も効果的なものを考える。
問題はメタルソニックのスピードにあった。行動を制限する
第一に一撃離脱型のスピードアタッカーであるメタルソニックに対して魔法発動までの防御をタンクに依存する高火力
それに範囲魔法を発動できたとしてもメタルソニックを逃がさない範囲かつ威力の魔法となると当然墓地は消滅するし最悪エ・ランテル自体も無くなる。これではなぜモモンとして冒険者になったのか分からないし、下手をするとこっちが討伐対象として手配されかねない。
手持ちのアイテムも心もとない以上、広範囲低威力ゆえ速射可能な魔法でジワジワと削るしか無い。
対してメタルソニックもアインズを倒しきる事が出来ない。
魔法職としては高めの防御力と〈上位物理攻撃無効Ⅲ〉と〈上位魔法攻撃無効Ⅲ〉によってメタルソニックの放電攻撃と突撃、衝撃波は大きな効果を上げきれず、アインズの体力を少しずつ削って行くだけだ。
(こうなると分かっていれば宝物庫から対策アイテムを出してきたのに)
後悔先に立たずと言うやつである。
本来ならナザリックで最もPvP慣れしたアインズであれば周到に下準備をした上で戦闘に望むのがいつものスタイルだ。
戦う前に勝率を上げておく、よしんば戦う前に勝っておくのがセオリーなのだが、今回の遭遇は完璧に想定外であり、準備不足も致し方のないものだ。
「それ行けメタル! ほーれほれほれほれ! ホーッホッホッホ!」
不幸中の幸いなのはエッグマンが手を出さず後ろで騒いでいるだけな事か。
ちなみにコレも彼のスタイルである。
エッグマンは味方のロボットが戦っている場合は直接攻撃に参加しない、ナザリックを襲撃していた時からの伝統とも言える行動だった。
アインズは突進してくるメタルソニックを紙一重で躱し、衝撃波を魔法で相殺する。
(ナーベラルを呼ぶか? しかしエッグマンには手出し無用と言った手前もあるし。ならアンデッドを作って増援を? いや、生成されるまでに破壊される危険があるな。やはり《
アインズの頭の中では作戦が浮かんでは消えを繰り返す。
実際、メタルソニックがナザリックを襲撃した際に応戦したのは例によってたっち・みーだった。
メタルソニックは速度に特化したステータス構成だ。ゆえに攻撃スキルも放電・突撃・衝撃波以外は無く、必須である行動阻害・即死魔法の耐性以外は速度極振り(一応攻撃力もそれなりにある)にして究極のスピードアタッカーとして組み上げられていた。当然他のステータスは貧弱と言って差し支えはなく、さらに言うのであれば防御力など紙同然であった。
なので、たっち・みーはその類まれなるセンスとカウンター系を初めとした本職としての戦闘スキル、そして高ステータスによって幾度と無くメタルソニックを撃退している。
しかし、それはたっち・みーだからこそできた事であり、アインズも同じ事ができるとは限らない、というかスキル構成的に出来ない。
「あー、もう! なにをチンたらやっとるんじゃ! さっさと決着をつけんか!」
ここでエッグマンがついに痺れを切らした。さっきまでノリノリで観戦していたのだが、そろそろ飽きてきたらしい。割と気の短い爺さんである。
しかし、そう言われて困るのはメタルソニックだ。現状、決定打が無いためどうしても持久戦になってしまう。
(今だっ!)
メタルソニックはエッグマンからの理不尽な命令に対して一瞬停止した。
アインズはその一瞬を見逃さない、すぐさま大規模魔法の発動準備に入る。
一方、メタルソニックも魔法の発動を感知し迎撃に向かう。その速度は過去最高、アインズが魔法発動に集中している以上、迎撃魔法は飛んで来ない。最大威力での攻撃がアインズへと向かう。
アインズが魔法を撃つのが先か、メタルソニックの攻撃が当たるのが先か。
両者が激突する間際。
墓地の彼方から飛来した物体によって、アインズとメタルソニックは同時に吹き飛ばされる事になる。
アインズは『飛んで来た人物』とぶつかって数メートル吹き飛ばされ、メタルソニックは『落ちて来た物体』の下敷きになった。
「ぐあああぁっ!?」
「な、なんじゃ!?」
『めーちゃくちゃ痛てゃーだがね!』
『おい! グラタン壊れちゃったんじゃないのか!?』
『まだ、動くくらい出来るばい!』
「カトリーヌ!?」
エッグマンはメタルソニックを下敷きにした巨体に向かって驚きの声を上げる。
それは別行動を取っていた彼の部下達だった。
『あ、エッグマン様! カオスエメラルド見つけただがや!』
『ボックン達がちゃーんと取り返したじょ』
『そげん事より手当が先ばい! 冒険者の皆が気を失っとるばい!!』
「で、でかしたお前達! じゃが、これはどうした事じゃ?」
エッグマン達が混乱している一方、同じく吹き飛ばされたアインズも混乱していた。
「おい! どうした!? しっかりしろナーベラル!!」
「……この様な姿をお見せするとは、申し訳ございません」
アインズと激突したのは満身創痍のナーベラル・ガンマであった。
「のーっほほほほほほほ!!」
そこに謎の笑い声が響く。
※※※※※※
時刻は少々巻き戻る。
「くっ! 儂をどうするつもりだ!」
『いーからさっさとカオスエメラルドを返すがね!』
『それが帰ってくればこれ以上手荒な事はせんたいね! あ、そっちの石ころはいらんばい』
「わ、わかった……宝石は渡そう」
実はと言うと、カジットの切り札『スケリトル・ヒュドラ』は最初の体当たりで既に崩壊していた。
今、カジットはグラタンの油圧式マジックハンドで拘束されている。
実はこの時、カジットは切り札が一撃で撃破された事から大した抵抗を行っていなかった。グラタンの三本指マニュピレーターの素材は『和紙』なので抵抗すれば簡単に逃げられたのだが、それは割愛させたいただく。
一方、ナーベラルはと言うと乱入して来た者達への対処に悩んでいた。
普段通りの彼女であれば即排除していた筈だが、中から聞こえていた聞き覚えのある
もし自身の判断で排除してしまった場合、偉大なる御方の計画に支障が出てしまう可能性がある。
とりあえず事件の主犯のアレだけは始末しておこうかと考えた時。
「のほほほほほほほ、心配になって見に来てみれば。なんたる失態。コレではまるで喜劇ではありませんか」
「……っ!!」
自身のすぐ後ろから聞こえた声に振り向きながら大きく跳躍する。
「おっと、驚かせてしまいましたか? これは失礼いたしました。のほほほほほほ!」
そこには丸い体にふわふわと浮かぶ手足の小さなピエロが佇んでいた。
ナーベラルは警戒度をはね上げる、背後を取られたのに全く気が付かなかった。
「じ、ジョーカー殿! 早く助けてくだされ!」
「まったく、カジッちゃん。少しは空気、読んでくれませんかねぇ? これではせっかくの登場が台無しではないですか」
『な、なーんでおみゃーがここに居るだがね!?』
『あんさん、ソニックどころかSEGAのキャラですら無いばい!?』
『アイツ、ナムコのキャラじゃん!!』
「のほほほほ、無粋な事は言いっこなしですよ?」
ジョーカーはそう言うと指をパチンと鳴らす。
その瞬間、ジョーカーとグラタンに掴まれていたカジットの姿が掻き消え、夜空へと現れた。
「のほほほほ、では自己紹介おば。私はジョーカーと申します。『くろのあしりーず』のキャラクターらしいのですがね。あなた方に言っても理解は出来ないでしょうねぇ?」
「よく喋るゴミね」
「おやおや、先程驚かせてしまったのを相当根に持っていらっしゃるご様子。そちらの『そにっくしりーず』の方々とはお知り合いで?」
「ゴミムシと会話をするつもりは無いわ。少なくとも分かることはお前も抹殺対象という事かしら」
ナーベラルはカジットを助けたジョーカーに対して敵側の存在であると認識していた。
とりあえず乱入者は放っておく、最も危険なのは宙に浮くピエロである。
「まったく、貴方達のおかげでここでのシナリオは狂いに狂って修正不能。この後の後始末は気が重いですねぇ。とりあえず、おじゃま虫の貴方達をキレーに叩き潰して、気持ちよーく帰るとしましょうか」
そう言うとジョーカーの丸い体がどんどん大きくなっていく。
『な、なんだあれは!?』
『まさかの巨大化なのである!』
「少しは楽しませて頂きたいものですがね」
「舐めるなゴミムシ」
ジョーカーの余裕の態度にナーベラルは静かにしかし怒りの音を含んだ声を上げる。
「
ナーベラルが手を打ち合わせるとそこから眩いばかりの電撃が発生する。
放たれた電撃は龍の姿となりジョーカーへと向かって行く。
しかし、電撃はジョーカーに当たるまでにその右手に吸い込まれる様に消滅してしまった。
「のほほほほほほほ! 残念でしたねぇ。私と貴方では些か相性が悪い様で」
「ゴミムシ風情が舐めた真似を」
『オイ達を!』
『忘れてんじゃ!』
『にゃーでよ!』
そこにグラタンが襲い掛かるも。
「まったく、まとめて吹っ飛んでしまいなさい。はい、ドーーーン!」
ジョーカーの握りしめた左手のパンチでナーベラルごとグラタンは殴り飛ばされてしまった。
※※※※※※
そして場面はエッグマンとアインズの元へと戻る。
「のほほほほほほほ! トドメを刺しに来てみればまた面白いものが見れそうですねぇ」
エッグマン達の元に現れたジョーカー、その姿はとても楽しそうだ。
「貴様、ジョーカー! 何故お前がここに居る!! ガーレンのヤツはどうした!!」
「のほほほ、これはこれは! ギルド長ではありませんか! あ、いや『元』ギルド長でしたねぇ。これは失礼いたしました。のほほほほほほほ!」
「貴様っ!」
「ナーベラルを痛め付けてくれたのは貴様か?」
そこにナーベラルを抱えたアインズも憤怒の声と共に現れる。
「こちらにはアインズ・ウール・ゴウンのギルド長もいらっしゃるとは。なんと豪華なメンバーなんでしょう! たった一人残されたギルド拠点で毎日いそいそと資金繰りに苦しむそのお姿はまさに悲劇! 過去の栄光、過去の友情のなんと脆く儚い事か! 墓場で苦しむ御骨様の姿たるや、過去最高の喜劇、あ、いや、悲劇でしたね! のほほほほほほほ!」
「……き、貴様ぁーっ!」
ジョーカーの言葉にアインズの精神の沈静化も間に合わず、溢れ出た怒りは叫びとなって夜の闇に響く。
「さてと、お相手したいのは山々なのですがね。流石の私もあなた方二人の相手は少々重荷ですので。ここは一度引かせて……おや?」
そこでジョーカーの視線はエッグモービルに掴まれているクレマンティーヌに向かう。
「……痛ぁー。あれ? 生きてる?」
「おやおやおやおや!」
「あれ? ジョーカーちゃん?」
そこでタイミング良く意識を取り戻すクレマンティーヌ。
自身の置かれている事態に全く付いていけない。
「のほほほほほほほ、クレマンティーヌちゃんはオツムが弱いとは思ってましたがね。少しは考える頭があったようで」
「なにぃ!?」
「いやいや、褒めてるんですよ? まさか『エッグマン側』に鞍替えするとはねぇ」
「え?」
「確かに現状はそっちが良いでしょうがねぇ、先を見る目はやはり無いですね。のほほほほほほほ!」
「え、ちょっと! え!?」
話はクレマンティーヌを置いてけぼりにして進む。
「ではごきげんよう、寂しい御骨様。そしてだらしないハラのエッグマン」
「おのれぇ……何を企んでいるかは知らんが、貴様の思い通りにはさせん! ここまでワシを小馬鹿にしてタダで済むと思うなよ、ワシ自らの手で始末してくれるわ!」
「楽しみですねぇ? のーっほほほほほほ!」
パチンと指を鳴らすと、ジョーカーの姿はカジットと共に消えてなくなっていた。
「悪の天才科学者を馬鹿にしおってぇ…絶対に許さん!」
「エッグマン……」
「ふん! 貴様との決着は後回しじゃ! ワシも忙しいんでな! それと」
するとエッグマンはアインズに向かって何かを投げた。
戦いの雰囲気でも無いと、アインズは素直に投げられた物を受け取る。
「指輪?」
「己を見失いたくなければ身に付けておく事じゃ。ただのアンデッドの相手なぞしたくないからの。行くぞデコー、ボコー!」
『ちょ! エッグマン様ー!』
『早くメタルを掴むじょ!』
『置いてかんで欲しいばい!』
「え! ちょっ! 私ぶら下がったままあああああああああっ!!!」
アインズの視界にはクレマンティーヌの悲鳴を残して空の彼方に飛び去るエッグマンの後ろ姿が映っていた。
今回から本格的にソニック、オバロ外のキャラが参入しました。
これがエッグマンとアインズの関係をどう変えるのか。
メタルソニックとの決着は付けませんでした。
つかゲームの性能だとメタルソニック不利ですし(ソニックの体術で破壊されてますし)、かといってアインズ様の覚えてる魔法多すぎてまともに描写も出来ないし。