ありがとうオルガマリー姉様   作:小指技師

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原作始めちゃったなぁ…

今回は恐らくガバガバな知識が服に付いたトマトケチャップ位イラッとさせるやもしれません。ご了承ください。


彼は手放さない

 人は醜い。

 

 古くより人は争い合い、奪い合い、屍の上に文明を発展させて行った。それは現代も変わらず、ただ手に持つ兵器が移り変わっていくだけ。

 

 成長が無い。

 理性と知性を備えていながら獣と変わらぬ生き方だ。平等を謳いつつ決して埋まらない貧富や差別意識も、決して叶うことの無い平和を平然と振り翳す人々も見飽きた。出来の悪い三流にも劣る映画などフィルムごと焼いてくれよう。

 

 斯くも人は醜い。

 

 血塗られた歴史は時間が経っても色褪せず、今尚濃く濡らしていく。最早救いようがない。恐らく人という存在は根底から間違っていた。人類の規格は欠陥だらけなのだろう。

 

 ならば仕方が無い。

 

 既に裁定は終えた。

 

 人を救う為には人を滅ぼさねばならない。やり直さねばならない。矛盾を正し、管理し、導き、人を救わねばならない。

 

 安心しろ人類、我々が人を救おう(滅ぼそう)

 

 

☆★☆

 

 

 レフ・ライノールは現代に於ける人理焼却を助けるファクターだ。つまり人類の敵と言っても間違いでは無い。

 

 しかしそんな彼も事を成すまでは一人の人間として過ごす必要があった。故に己を殺し、仮面で隠しつつ生活をする。彼は優秀だ。雑作もないことだ。他愛無し。

 

 彼の持つ知識は常に周りより上を行き、レフと言う存在は優秀だと知らしめて行った。そんな彼がカルデアと言う組織で技術者としてのトップに着いたのは必然だったのだろう。

 

 そこで初めて会ったのだ。ノエルと言う人間に。

 

 最初マリスビリーからの説明では然程興味も持てなかった。ただ魔術師とは言え実子をも使うのかと、度し難いなとそう思った位でノエルと言う存在には少しも興味を引かれることは無かった。

 

 レフがノエルに興味を持ったのはその暫く後、初対面時だ。なんと言っても第一声から酷いものだった。

 

「変」

 

 これが目の前の幼い少年から放たれた声だ。それはもうポーカーフェイスを突き破って呆然とした顔を晒した。

 

 自身の仮面は社交性に優れている自信があったが初っ端変人扱い。初めてのケースに冷静さを欠いていたのだろう。直球で聞いてしまった。

 

「何か可笑しい所があったかな?」

 

 聞いた後で一瞬後悔したが、吐いた唾は飲み込めないものだと切り替えるのは容易い。

 

「髪、もじゃもじゃ」

 

 言ってる意味がよく分からなかった。

 

「髪?」

 

「そう、髪の毛」

 

 どんな言葉が返って来るのかと警戒したレフであったがその分身体から力が抜けてしまった。頭が痛む話ではあるが子供のデータが少ない故に対応が分からなかった。つまりそういう事なのだろう。

 

 然して二人は出会い、そして会話を交わしていった。レフがそこで感じた事柄はそう多くはない。ただノエルは独特な感性を獲得した確固たる意志を持つ人間だと認識した。

 

 意外だった。幼い頃から人とは掛け離れた環境に身を置きながら、あの固まった表情の向こう側は人間なのだ。

 

「現状に不満は無いのかね? 正直私は平然と受け入れている君に疑問を感じているんだ」

 

「不満?」

 

 不満など何一つ無い。それが返事だった。

 

(そんな訳が無い。この少年は家畜に近い扱いをされているんだぞ? 不満を持って然るべきだ。まして実父が起因しているのだから…)

 

 疑問の解消を優先し質問の内容を変えながら問を投げた。

 

(無欲では無い。ならば何故自由を望まない? 分からない、不可解だ、違和感だ、奇妙だ)

 

「では最後に聞かせて欲しい。何故水槽へ入るのを許容するのか?」

 

 ノエルは自分の意思で水槽へと帰っている節がある。例え強制であろうと義務であろうと自由であろうと水槽へ行くのだと言う。なら一体その真意とはなんなのか。

 

「父様、愛してくれる。水槽、還れば」

 

 それは余りにも単純明快で残酷な返答だった。

 

 子供だ。彼は見た目通りの子供だ。ただ父親に褒められたかった。頭を撫でて貰いながら笑って欲しかった。そして笑いたかった。ただそれだけの理由で身を削っている。

 

 あんまりだと思った。これはエラーだとレフ自身も気付いていた。憎悪の対象であるはずの人間に向ける感情では無いはずなのだから。

 

「彼は君を愛さないよ」

 

 これはお節介だ。期待していても何れこの事実に気付いてしまうのだから、今のうちに知っておいた方がいい。その方がノエルの為だと思った。

 

「それでも、良い。家族、だから」

 

 やはり人は愚かしい。レフは自分たちの定義を再確認した。如何に尊い存在であろうとその献身も無意味だ。受け取る側が居ない献身のなんと虚しい事だろうか。

 

 憐れだ。

 

 だからこそ愚昧で愚図な者がコレを穢す。ならばやはり仕方ない。我らの王は既にこの人と言う種族を、人類史を見限った。ならばレフという存在もまた壊さねばならない。然らばこれも救われる。

 

「そうかだが少年よ、いずれ気付く。その時に君が何を選択し、何を思い、何を感じるのか身をもって知るといい」

 

 そう言ってレフは退室した。何故だか無性にこの場を離れたかった。

 

 そしてノエルは─

 

「柔和、尊大、どっちがレフ? やっぱり、変…」

 

 変わらずレフ=変人だと思った。

 

 やはり彼は節穴だ。ノエルと言う存在をただの子供と評した時点で見る目が無いと言わざるを得ない。いや魔神が人の尺度を持ち合わせている筈も無いのかもしれない。

 

 

◇◆◇

 

 

 定期的な休暇を言い渡されたノエル。だがオルガマリーはその度に休暇を取れる訳もなく、と言うかレフが持たない。通常の倍以上の仕事量は精神的に辛い。

 

 特に今日は絶対に休ませないと言い伏せられていたのは記憶に新しい。

 

「マシュ、フォウ、居ない」

 

「その様ですね。フォウさんは一体何処に…」

 

 今では何時ものコンビ(所長非公認)となった二人はカルデア内を悠々闊歩する事を許可されたマスコット的なナニカ、不思議生物フォウの捜索にあたっていた。

 

 しかしどうにも見つからない。何時もはふらっと現れては消え、ひょこっと出て来ては消えを繰り返して居る彼だが、今日はめっきり姿を見せない。

 

 お世話係となったマシュをしてここまで姿を見せないのも珍しいとの事。

 

「いつもなら呼んでいれば来るのですが」

 

「用事?」

 

「かもしれません。パトロールが終わっていないのかも」

 

 ふとノエルの視界に奇妙なものが入ってきた。廊下で倒れている人間がいたのだ。まさかカルデアの施設内で行き倒れに会うとは誰も思わない。

 

「マシュ、あそこ、人寝てる」

 

「え? あ、本当ですね。廊下なんて寝心地の悪そう場所で何で寝てるんでしょう?」

 

「迷って、行き倒れ?」

 

「廊下で行き倒れるのも新しい」

 

 近寄ってみれば溌剌そうな少女だった。橙色の髪をシュシュでサイドアップに纏め、一束ぴょんと跳ねた髪所謂アホ毛が特徴的だ。

 

 そんな見知らぬ人物がそれはもう死んだように寝ていた。

 

「フォウ!」

 

 次いでとばかりにフォウも傍らに居た。

 

「成程フォウさんはこの方の傍に着いていたんですね」

 

「起こす?」

 

「そうしましょうか」

 

 ノエルは高速で頬をペチった。これは必ず起きる。実験には姉を使った。三秒で飛び起きていた。

 

 3・2・1─

 

「ハッ!? ここは何処、私は誰?」

 

「此処はカルデアです。先輩とは初対面ですはい」

 

「先輩?」

 

「はい、何となくそうお呼びしたいと思いました」

 

「そっかぁ先輩かぁ…取り乱してごめんね。私は藤丸立香って言うんだ。気の利いた自己紹介じゃないけどよろしく!」

 

 その後は謎のコミュ力に圧倒されあれよあれよと自己紹介からカルデアの説明、ブリーフィングについてを聞き出されてしまった。当初の廊下で寝てた不審者から気さくな知り合いにまで一気にジョブチェンジだ。

 

 立香のここまで来た経緯を簡単にまとめればこうだ。献血をして、胡散臭い人に丸め込まれて、気付いたらカルデアに居た。

 

「立香、知らない人、着いていく、ダメ」

 

「いやうんそうだよね普通。こんなちっちゃい子言われちゃ私も末期かも」

 

「初めて会って間もないですが、私も先輩の将来が心配です」

 

「フォ、フォフォウ」

 

 フォウもマシュに同意している様だ。

 

 皆一様に立香の人柄を理解した。つまるところ彼女はすっごい前向きでポジティブの塊。恐れ知らずとまでは行かなくとも肝は十分据わっている人物だと。

 

「まぁ何とかなるよ、多分きっとメイビー」

 

「フォウ…」

 

 フォウは呆れ返っている様子。大丈夫かなこの人と見えない字幕が出ているに違いない。

 

「フォウさんが私たち以外に懐くのも珍しいですね」

 

「この子? と言うかこの子何? 猫なのか犬なのか狐なのか…」

 

「どれも、違う。フォウは、フォウ」

 

「分かんないけどよく分かった」

 

 フォウは誇らしげに胸を張っている。曰く、オンリーワンにしてナンバーワンだそうだ。だがモフモフ一強の時代が間も無く終わりを迎える事をフォウはまだ知らない。

 

 その後レフが現れたりしたが割愛する。

 

 

☆★☆

 

 

 そして立香は気が付いたら─

 

「特務機関カルデアへようこそ、私は所長のオルガマリー・アニムスフィア。此処では私こそがルールです。次遅刻したら相応の罰則を覚悟する様に。いいですね?」

 

「ふぁい…」

 

 ──遅刻していた。

 

 大勢の前で情けなくお叱りを受けた立香はハッキリとは聞こえずとも馬鹿にされているニュアンスが伝わってくる嫌なヒソヒソ声と視線に気まずいと言った様子で顔を伏せながら着席した。

 

 そして不自然に上がった右手を下ろさずにいたオルガマリーは右手のその先を指す人物に顔を向けた。まぁ勿論と言うべきかノエルだが。

 

「貴方はこっち」

 

 そう言って手を更に突き出していた。キリッとしていた顔は綻んで見る影も無い。その所長の姿に苦笑する者、呆れ返っている者、羨ましそうにしている者、最早頭を抱えている者三者三様。

 

「来ちゃった、ダメ?」

 

「良いのよ、貴方にも関係のある物だから」

 

 改めてキリッと顔を決めつつ、弟と手を繋ぎつつブリーフィングに入った。正直な話、既に所長としての威厳は無い。なおオルガマリーはそれに気付いていない。何故ならブラコンだから…

 

 その当の弟はと言うと、知り合いに向けて手を振っていた。

 

 マシュ・キリエライトはさり気なくスマイル込みで振り返した。

 

 カドック・ゼムルプスはため息を吐きながら振り返した。

 

 オフェリア・ファムルソローネは気恥ずかしげにしながらぎこちなく振り返した。

 

 芥ヒナコは返すことなく視線を一瞥くれるだけだった。

 

 スカンジナビア・ペペロンチーノは投げキッスで返してきた。

 

 キリシュタリア・ヴォーダイムは微笑みで返した。

 

 ベリル・ガットはニヤリと笑いながら親父臭く手を上げる形で返した。

 

 デイビット・ゼム・ヴォイドはやけにソワソワとして居るようだ。

 

 藤丸立香は─

 

 

 ──爆睡していた。

 

 

「出て行きなさい!!」

 

 ブチ切れたオルガマリーの怒声が静寂に良く響いた。立香は深い眠りから叩き起される事となりやっちまったポーズを決めた後刺さる視線から逃げるように出て行った。

 

 

☆★☆

 

 

 棺桶(コフィン)なんて言う洒落にもならないネーミングセンスが光るカプセルはレイシフト呼ばれる時間跳躍を安定させ、マスターを守る役割を持っている。

 と言うのが大分ざっくりとした説明だ。上記の内容など有って無いようなもので補完すべき事柄はたんまりある。説明する機会があればそれは必要な時だろう。

 

 レイシフト適正を持ち、成績の上位者の集まりであるAチームがそれぞれのコフィンへと入って行く。

 

「姉様」

 

「どうかした?」

 

「レフ、何処?」

 

「ロマニは兎も角、レフが居ないのは変ね…」

 

 近未来観測レンズ・シバはレイシフト先のマスターたちを存在証明する欠かしてはならない物だ。通信等のサポートもコレを利用する。レフはシバの開発に携わり一番理解している者。つまりこの場で持ち場から離れる事は有り得ない。

 

 何かが可笑しい。オルガマリーはこの場からレフが居なくなる理由を探す以前に居ないこと自体に違和感を感じた。

 

(不具合があったにしろ私に報告も無しに彼が持ち場を離れるなんて果たして有り得る?)

 

 レフならこういう時に所長である自分に一言断りを入れる人物だとオルガマリーは考えている。緊張して忘れるなんて凡ミスもする人物じゃない。

 

 不思議と弟の握る手に力が入る。

 

(ノエルが横に居るのに不安なんて表に出せない。少し部下が外してるだけじゃない、冷静になりなさいオルガマリー!)

 

「彼はミッションが開始したらシバに付きっきりだから、きっと色々あるのよ」

 

「…そう」

 

 オルガマリーが指示を飛ばすべく大きく息を吸い込んだ。そして─

 

 

 ──轟音と共に意識が遠くなった。

 

 

 意識が遠くなっていく中、自身の足元から聞こえた爆発音が気掛かりだった。彼女の足元からという事は即ち、弟の足元でもあるのだから。




存外ぐだ子が書きやすくてびっくりしたの巻。

あと結構オルガマリーって主人公なのでは?
あとレフもダークな主人公なのでは?
もう私自身よく分からんなくなった…
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