ありがとうオルガマリー姉様   作:小指技師

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続いた…だと?

いつもより500文字くらい少ないけど丁度キリが良くなっちゃったんで切っちゃいました。
相も変わらず戦闘描写がおざなりですが私の限界です。あと話を重ねる毎にフレッシュさが失われるのはほのぼのが無いからです。



彼は動き出す

「まずはしっかりと魔力を感じなさい」

 

 魔術を知らない一般人相手に魔術を教えるにはどうしたら良いのか、それも休憩時間の合間にだ。教本も無く、メモを取るためのペンさえ手元には無い、正真正銘の無手。オルガマリーは居眠りと言う前科持ちの少女が口頭のみの説明で全てが飲み込めると露ほども思ってはいないのだ。

 

 だがオルガマリーとて講師としての経験が僅かに有り、矜恃とは行かなくともムキになる程度の理由はある。せめて三流魔術師レベルのサポートを立香にして貰いたかった。

 

「まずはって…全く分かんないよ!?」

 

「じゃあマシュとの繋がりを薄ら感じるでしょう?」

 

「ムムゥ、確かに何か細い線みたいのが繋がっている様な、無いような……」

 

「勘違いでもいいから感じなさい! それはマシュと繋がるレイライン、魔力を送り出すパイプ。レイラインを辿れば自ずと魔力の出処を意識出来るはずよ」

 

 根気良く、怒らず、粘り強く、ゆっくり、だが着実に前へ進めば何れは藤丸立香と言う一般人でも半人前に──

 

「よし、全く分からない!」

 

「マシュ! 貴女から注ぎ込みなさい、こうなったらヤケよ!」

 

「落ち着いて下さい所長!」

 

 この後ドライフルーツ休憩を挟みながら噛み砕いた説明を繰り返す程に五度、藤丸立香は魔術回路が生命力を魔力に変換する事を認識した。

 

「やっとここまで漕ぎ着いたわ。次は魔術礼装の行使ね。基本となる魔術は後でゆっくり学ばせます」

 

「まだやるんですか!?」

 

「マシュを一人だけで戦わせたいの?」

 

「──やったらァ!」

 

 と言ってもカルデアのマスター礼装で出来ることは三つ、『応急手当』『瞬間強化』『緊急回避』である。発動もシンプルで魔力の使い方さえ知っていれば一般的な礼装より出が早い。立香の場合、一般人で魔力の扱いに長けているわけでもない為に開発者にとって意図しないリキャストタイムが発生している。つまり発動のタイミングが立香のマスターとしての素養が試される事になる。

 

 なお、Aチームは誰一人これを着用していない。自前が一番なんだろう。

 

「簡単なスペルだから噛むことも無い。魔力の扱いに熟達していけば効率も上がっていく。今はひたすらに慣れること、いいですね藤丸!」

 

「了解!」

 

「やりましたね先輩!」

 

「これで一緒に戦えるよマシュ!」

 

 互いの手を取り合い顔を喜色に染める主従にオルガマリーの表情はやや苦々しい。緊張感が無いことに呆れているわけでも、多少マシになった程度で安堵する彼女たちに憤慨しているわけでもない。

 

 マシュには自分が、立香にはノエルがオルガマリーにはダブって見えている。見た目も性格も全く違うと言うのに言葉に出来ない一種の既視感を覚えてしまっている。

 

 ──私は何時もノエルに支えられっぱなしだわ

 

 手の平を見て何度か握り込む。勿論そこにはノエルの柔らかい手はなく虚空を掴むだけだ。ここは既に戦場である感傷に浸る暇は無い、そう自分に言い聞かせるため強く拳を握った。

 

『サーヴァントの反応が近くにある!?』

 

「距離は?」

 

『南西に25メートル!』

 

「目と鼻の先じゃない! 一体貴方は何を見ていたの!?」

 

 舌打ちしそうになるのを耐えて報告のあった方位に視線を走らせた。見えたのはフードを被り、大鎌を持つ長身の女。クー・フーリンの話が本当であればランサー。先刻倒したアサシンと同じシャドウサーヴァント。

 

「マシュは藤丸を守るのに集中しなさい。藤丸はそこを動かないで、いいわね?」

 

「え、でも所長。それでは…」

 

 迎撃するには経験が乏しい立香たちが危うい。演習等ではデミ・サーヴァントとしての戦闘など考慮してはいない。立香など一度だけシミュレーションで訓練したくらいだ。

 

 今見える戦力では分の悪い賭けをする様なもの、マシュが心配するのも無理のない話だ。

 

「逃げ隠れても無駄だと思いなさい。あれは劣化してもサーヴァント、逃げ切れる存在じゃない」

 

「迎撃しよう」

 

「先輩?」

 

「こっちは三人居るんだし、全員が全力を尽くせば勝てる見込みはあるはず。所長が逃げを選択しないのはそう言う事だと思う」

 

 真っ直ぐな瞳をした立香はオルガマリーの目を捉えた。伺っているのだ、どうなのだと問うている。

 

 何処までも前のめりな新人マスターにオルガマリーは最早何も言うことは無い。今はこの場にいるマスター候補が彼女で良かったと思えてくるただそれだけ。

 

 だがその決意は無意味であるとオルガマリーは笑みを深める。端正な顔立ちをニヒルな笑みに変えた。彼女からしたら既に勝利している。勝負をする前に結果は見えていた。

 

「残念だけど答えは『NO』よ。防御に専念しておきなさい」

 

 眉をひそめ困惑を隠せない。上司の真意を読み取れないと部下二人は首を傾げる。

 

「魔術師の戦いっていうのを見せてあげる」

 

 向き直ると既にランサーは悠々と近くで直立していた。些か退屈そうに自らの得物である大鎌を弄んでいる。

 

「律儀に待つのね、無抵抗な者には手をあげられないってとこかしら?」

 

 気安く、気心知れた友人に話し掛けるように自然にオルガマリーは対面したランサーへ声を投げ掛けた。別に返答を期待したものでは無い。返答が来たらそれはそれでラッキー程度のもの。

 

「そんな大したものでは無いですよ。ただ優しく殺そうか、残虐に殺そうか考えていただけのこと」

 

 英霊の中ではそれぞれ違う英雄としての矜恃を持つ。王としての在り方であったり、騎士道精神であったりとまちまちだが、目の前にいるランサーは少なくともオルガマリーにはそれが無いように見えた。

 

 ただ相手を殺す事だけに執着している。人の悲鳴を愛し、断末魔に心を躍らせる、目の前にいるランサーはそう言う気質を持つ者だと直感している。

 

 反英霊、反転。オルガマリーの頭の中にはこの二つの情報がピックアップされる。本来の聖杯戦争であれば真っ当な英霊が召喚されるものだが、ここまで捻じ曲げられた環境では二つとも有り得る。

 

「へぇ、じゃあ私はその立派な大鎌でナマス切りにされるって事?」

 

「一度切られたら最後、二度と元には戻りません。一生欠陥品で生きる事になります。いえ大丈夫ですよ怖がらないでも──直ぐに殺してあげますから」

 

 饒舌に殺す殺すアピールをするランサーに辟易とするオルガマリーは重要な情報を確かに抜き取った。

 

 『一度切られたら最後、二度と元には戻らない』

 

 散りばめられたパズルのピースが組みあがっていく。

 

 まず大鎌の正体は直ぐに気付いた。

 

「それ、不死殺しの大鎌ハルペーね」

 

「……えぇ」

 

 ランサーは動揺した。宝具を言い当てられた事にでは無い。冷静に思考し続けるオルガマリーに驚愕している。通常であれば恐怖の顔を貼り付け怯える所、彼女は脂汗一つ流してはいない。余裕さえ感じさせる。

 

「じゃあ貴女はペルセウス? 違うわね、ハルペーに縁があって今の貴女に相応しい人物は──」

 

 

 ──女怪メドゥーサ

 

 

 その言葉を待たずしてランサー─メドゥーサ─はオルガマリーに大鎌を振りかぶる。胡散臭さを醸し出す魔術師に危険信号が出せれたが故の行動だ。しかしそれもまたオルガマリーにとって計算された範囲に過ぎない。

 

 事前に用意しておいた魔術を出力する。

 繰り出される魔術は炎だとか風などと言う攻撃的なものではない。それらは三騎士に備わる強力な対魔力で打ち消される恐れがある。だから有害などと言えるほどの魔術では無い。

 

 発動した魔術は光と音、遮光と防音の魔術。何方かと言えば初歩的で戦闘向きとは言えない魔術。しかしこの場に於いては最適と言えた。

 

「グッ───!?」

 

 感覚の鋭いメドゥーサの目を光で焼き、甲高い弾けるような音がメドゥーサの耳を強打した。一瞬の無防備、だがサーヴァントと言うのはこの程度では止まらない。目や耳が使えなくとも小娘一人程度容易く葬れる。

 

 しかしオルガマリーが欲しかったのはその一瞬だ。周りへの注意を削ぎ、自身だけを狙わせ、敵愾心を煽る。全てはこの一瞬のためだったのだ。

 

「焼き殺せ──キャスター!!」

 

 一瞬は火炎に呑まれ灰燼となった。

 

 断末魔をあげたのはメドゥーサである。息をすれば肺が炭化し、手で火を払おうとすればより一層燃え上がる。ただの人程度に見舞われようものなら一瞬にして風に攫われる程細かい灰に変わるだろう。

 

 桁違いの火力を放った者はオルガマリーが協力を扇ぎ受けた者、キャスターのクラスにて召喚されたクー・フーリン。

 

「ケルトの戦士に二言はねぇ。言った通りだったろ?」

 

 勝気に笑うクー・フーリンは確かに約束を守ったと杖を一回転させてから歩み寄って来る。

 

「えぇ私の髪があわや焦げ付きそうになった事以外は完璧ね」

 

「ハッハッハ、手厳しいなオイ」

 

『え、ちょっ……どう言う事?』

 

 一部始終を見ていたロマニはいきなりの出来事に事態を呑み込めず、困惑の声を上げている。

 

「こういう事よ」

 

 悪戯に成功したとオルガマリーはクー・フーリンと拳を突き合わせた。そして悪びれも無く言った。

 

「言ったでしょ? 魔術師(・・・)の戦いを見せるって」

 

 こうしてランサーは戦闘らしい戦闘もなくあっさり退場した。クー・フーリンにとっては自分の槍を取り上げられる原因であるが結局残るのはドルイドの杖であり、寧ろ虚しさだけが残った。

 

「アサシンの役目ご苦労様」

 

「ほっとけ!」

 

 オルガマリーとクー・フーリン以外の人は皆一様に置いてけぼりにあっていた。

 

 

☆★☆

 

 

 画面の向こうではサプライズに成功した時と同じ顔をしたオルガマリーが映っている。

 

 医務室には普通に眠ったように寝顔を晒し、胸を上下させるオルガマリーがいる。

 

 前者が魂、後者を肉体とするならこれは所謂幽体離脱なるものに属する現象である。まぁ魂が過去に飛んでいたり、本人に全くの自覚が無かったりするが幽体離脱だろう。

 

 問題はどうすれば元に戻せるかだ。魂を連れてこようにも現在特異点で絶賛活躍中。と言うよりレイシフトで帰ってこれるかも怪しい所、意味消失の危険性が無いとは言えない。と言うより何故レイシフト適正皆無の彼女があそこに存在出来るのかも疑問なのだ。

 

 理想はレイシフトで帰還して肉体に魂を押し込む事だ。しかし特異点に居るオルガマリーは絶賛活躍中にして解決する気満々の様子。事情を説明してストレスで再起不能なんて事もありえない事じゃない。

 

「時空、こじ開ける?」

 

「いやいやそれをするなら魔法使いでも呼ばなきゃ」

 

「気合い」

 

「思ったより元気だな君!」

 

 鼻血で医務室に運ばれていたダ・ヴィンチは鼻に詰めたティッシュを抜いて苦笑した。なおティッシュを使う前に血は止まっていたので血など付着していない。では何故付けたのかと言えば、何となくと答えるだろう。

 

「座標、覚えた。問題無い」

 

 無表情のVサインはダ・ヴィンチの鼻を刺激する。

 

「手伝いは必要かな助手君」

 

「礼装、幾つか貰う。いい?」

 

「構わないよ。なんたって君の頼みだし、カルデアのトップを助けるんだろう? 協力は惜しまないさ」

 

 ここは存外気に入っているとまたティッシュを鼻に入れた。次は徐々に血が侵食している。

 

「ありがと」

 

 ダ・ヴィンチはティッシュを一枚取った。

 

「君が人を頼る事は稀だ。次からはもっと甘えられる様にするといいよ。なんたって子供の特権だからね」

 

 ダ・ヴィンチはティッシュを適当な大きさに丸めた。

 

「私やロマニは勿論、他の職員も手助けをしてくれる。それを借りだなんて思わなくていい」

 

 ダ・ヴィンチは鼻にティッシュを入れる。

 

「みんな君の味方だからね!」

 

「ダ・ヴィンチ、かっこわるい」

 

 両方の鼻の穴に血染めのティッシュを入れた天才がいるらしい。おまけに美ショタが好き。

 

 

 ──やはり美少年は最高らしい。




もう少しの辛抱でほのぼの日常回に入れます。
まぁ展開の遅い原因は余計な設定を垂れ流しているからなんですがね!
でも書きたいから書いちゃうの!
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