ありがとうオルガマリー姉様   作:小指技師

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ぁ、続いた?

戦闘描写ってなんでこんな難しいんですかね。どうにも淡白に書いてしまって読みにくくなっちゃうよ。いやぁほのぼのが恋しいなぁ。マジでほのぼのカムバック(涙目





彼は入念な準備をする

 青色に輝く奇跡の光は鉄を鍛える。金属音は一人っきりの部屋ではよく響き耳に残る。しかし不思議と金属音に不快感は覚えない。今胸の内にある心は喜びだ。自分自身が思い浮かべる形に変わっていく鉄を眺めているのが楽しく音など気にもならない。

 

 今まで万能と謳われた天才レオナルド・ダ・ヴィンチの元で幾度と教えを受けた。中には役に立たない内容もそれなり、いや割と多く含まれてはいたが、それでも余りある叡智より齎される知識はノエルの脳を強く刺激した。

 

 子供とは好奇心の塊だ。何でも真似をしたがったり、分かりきったことにも疑問を感じ行動する無鉄砲さを持っている。ノエルもその例に漏れない。

 

 ただ彼の場合自分の欲求を抑制することに慣れてしまっていただけ。一度欲求が爆発すれば何処までも没頭するだろう。

 

 結果、暇があればダ・ヴィンチの工房に足繁く通う事になった。気まぐれに語られる天才の知識を肴に甘いココアをちびちびと飲んだり、興味のある内容に琴線が弾かれたなら身を乗り出し記憶した。助手として実際に作業を補助することもあった。

 

 魔術師としてはピーキーな存在だが、総合的に見れば汎用性が高い。それがダ・ヴィンチより下されたノエルの評価だ。

 

 さてノエルがダ・ヴィンチの工房に何を求めて来たのか。答えは至極簡単、彼は魔術礼装に興味を持った。

 

 ノエルは自身の舌っ足らずな言葉に詠唱等に不具合が有ると自覚していた。故にその欠点を補う方法を模索した時期がある。そんな中彼の誕生日にダ・ヴィンチの作った魔術礼装が姉より送られたのだ。

 

 説明を聞けば聞く程に希望が膨れる。水槽に還ること以外でも姉を助ける事が出来るかもしれない。胸が軽い、オルガマリーが笑顔で褒めてくれる事を想像するだけでも幸福感を感じる。

 

 だが結果は失敗した。

 

 魔術が発動する直前で礼装が弾け飛んだ。幸か不幸か軽い火傷で済んだがノエルの落胆の色は目に見えて濃かった。

 

 それを見たオルガマリーは涙を流しながら謝ってくる、それを見たノエルはより沈む。そんな悪循環があの時あの場ではあった。

 

 その後は知っての通りオルガマリーが悪鬼羅刹を背後に召喚してダ・ヴィンチ工房に殴り込みを掛けた。

 

 改良されたダ・ヴィンチ謹製のノエル専用魔術礼装が届いたのは一週間後だった。仮想エネミーをほぼ全て一撃のもとに粉砕し、過擦り傷程度であれば即座に回復。極めつけに劣化させたとはいえサーヴァントの攻撃を軽々受け止める障壁を張れる。

 

 魔力の過剰消費で無理矢理事象を起こす必要も無く、言ってしまえばスイッチを一つ押すだけで魔術を行使出来る。その事実を確認出来たノエルは福音だと感じた。

 

 そしてそれからはダ・ヴィンチ監修の元ソレを作る(・・)ようになった。基礎的な魔術を起動する礼装各種から、専門的でニッチな魔術を起動する礼装。衣服や武具、装飾品に雪解け水、コンタクトレンズに至るまであらゆる形態を持つ魔術礼装を製作。ダ・ヴィンチからは今度装甲車を作ってみようと提案されているがそれはまた別の話。

 

「形完成。後は、仕上げ」

 

 それは(アンカー)に似ていたが用途は凡そ想像も出来ない。分かるのは恐らくノエルだけだろう。見てくれだけでは天才もお手上げ、顧問探偵ならあるいはパイプをふかしながら朗々と語ってみせるかもしれない。

 

 息を錨に吹き付けると呼応する様に鈍く光る。その際に魔術式は刻まれ隆起し役割が与えられた。銘は『アニマくん初号機』。後にダ・ヴィンチがノエルに似合う名前を考えてあげるよと言った0.3秒後に飛び出た名前である。

 

 ダ・ヴィンチ曰く「外見年齢に合った名称を勢いだけで口に出してしまった。浅慮な行いであった事は認めよう、だが良い銘だろう」と悪びれることも無く言ったらしい。ノエルはテディベアが似合う可愛い男児だと、ダ・ヴィンチが職員に刷り込みを図っている事実をオルガマリーは知らない。

 

「試験不可、ぶっつけ本番、だけど──」

 

 

 ──大丈夫。

 

 

 目を覆うバイザーを取り去りダ・ヴィンチの工房を出る。向かう場所はカルデアスのある中央管制室。鮮血の色を強めた瞳は未だに大切な者を捉えている。

 

 

☆★☆

 

 

 冬木の聖杯戦争は7人のマスターとサーヴァントによるバトルロイヤル。最後の一組になるまで続けられ勝者には万能の願望器である聖杯にて願いを叶える権利が与えられる。聖杯には倒されたサーヴァント、即ち英霊の魂が注がれ十分に満たされた時に顕現する。

 

 大家アインツベルンは聖杯戦争の度に聖杯を用意するが正しくは小聖杯と言い大元となる大聖杯の端末になっている。小聖杯の役目は主に倒されたサーヴァントの魂を集める事。だが、今説明したい事に小聖杯は関係無い。

 

 真に注目すべきは小聖杯の大元である大聖杯は未だに特異点Fに存在すると言う事実である。そして事態の元凶であろうセイバーがそこに居るという確固たる事実のみ。

 

「大空洞に行く前に聞かせてキャスター」

 

 マシュがケルト式訓練で宝具解放を目指し、寄せ集められたスケルトン相手に無双ゲームの如く一騎当千をしている姿から目を離さずオルガマリーはクー・フーリンに問い掛ける。

 

「今私は生きているの?」

 

 その声は酷く怯えていている。口も一文字に引き結んでおり眉には皺が寄っている。それだけでそんな突拍子のない質問が冗談ではなく真剣そのものであると言う事が伝わる。

 

 それにクー・フーリンは眉をピクリとも動かさずに答える。

 

「今オレと話してんのは誰だ?」

 

「え?」

 

 想像しなかった返答に思わず顔を見た。

 

「今オレと話してんのはオルガマリー・アニムスフィアって言う魔術師だ。違うか?」

 

 戦闘の際に垣間見せた獰猛な表情はなりを潜め、老成し理知的な雰囲気を醸すクー・フーリンがそこに居た。若い頃の彼であれば出せない落ち着いた姿だ。

 

「今ここに居るのが自分自身だったらそれで十分だろ。それにだ、此処でオレが死んでるって答えたとして立ち止まるか?」

 

 立ち止まる。

 

 果たしてこの言葉がオルガマリーにとってどれ程重い言葉なのか。一番最初に頭に浮かぶのは取り残された弟で──

 

「──愚問だったわ」

 

 立ち直りの速さが亜音速なオルガマリーの姿に微妙な気分になったがそこはケルトの勇士、即座に切り替えて訓練の最終工程に入る。

 

 マシュは、『仮想宝具 疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)』を覚えた。

 

 

──閑話休題(ドライフルーツ休憩)──

 

 

 ドライフルーツも品切れになり、いざ敵本拠地に乗り込まんとする直前にマシュは弱気とも取れる疑問を零す。

 

「残るサーヴァントはアーチャーとセイバー。果たして私たちで勝てるでしょうか?」

 

「アーチャーはオレに全面的に任せていい、腐れ縁なんでな。セイバーに関しては正直五分に持ち込めるかも分からねぇ」

 

「それほどの相手なの?」

 

 セイバーの真名はクー・フーリン調べから分かっている。

 

「聖剣エクスカリバーの担い手、騎士王アーサー。ヤツめ無尽蔵な魔力をいい事に平然と聖剣を振り回しやがる」

 

「えぇっとつまりずっと必殺技を打ってくるって事だよね?」

 

 苦々しい様子で頷く協力者に立香は思わず頭を抱える。

 

「そんな相手にどう戦えば」

 

「不意打ちを狙うのはどうでしょう?」

 

「大空洞は思った以上に見渡しがいい。それに不意打ち程度で倒れてくれるならオレがとうの昔に仕留めてる」

 

「じゃあどうすればいいのさ!?」

 

 議論に煮詰まっていく中、オルガマリーは黙って先頭を進み続けている。勝利への確信が無いのにも関わらずあれ程堂々としていられるものかとマシュは突破口を考える立香を支えながら思った。

 

 もしかしたら考えがあるかもしれない、モノは試しにと話を振ってみる。

 

「所長はなにか作戦でもあるのですか?」

 

「あるわよ」

 

 あっけらかんと答えるオルガマリーに視線が集まる。通信の向こうでコーヒーを啜っていたロマニは噎せた。

 

「と言っても実際にセイバーを目にしてみない事には断言が出来ない。ただそうね、キャスターなら同じ様な事を考えていそうね」

 

 話題にあがったクー・フーリンは顎を擦りながら続きを促す。

 

「要はマシュ、貴女よ」

 

「私、ですか?」

 

 唐突に作戦の主軸に据えられたマシュは困惑した。無論任命された以上放棄する気はないし自分の出来ることを精一杯こなそうと言う気概はある。

 

 しかしそれ以上に戦闘経験が乏しく、今さっき宝具を展開出来た様なヒヨっ子デミ・サーヴァントが役に立つのかと不安に思うのも仕方の無いことだ。

 

「セイバーの攻撃を宝具含めて全て防ぎ切りなさい」

 

「宝具含めて、ですか?」

 

「でないと藤丸は死ぬわ」

 

「──!?」

 

「所長!」

 

 マシュは顔を青くした。

 

 立香は縁起でもない事言い出すオルガマリーに怒気を滲ませた。

 

「貴女は藤丸を慕っているようね。短い間にどんな変化があったのかは分からないけど。他人に興味を持つのは貴女にしては珍しいわ。だから親切に私が教えてあげる──」

 

 

 ──貴女が負ければ藤丸も負けるのよ

 

 

 その言葉が決定打となりマシュの中にある、しかし目には見えないナニカがプツンと切れた。

 

「──分かりました」

 

 俯いた顔を持ち上げ苦しそうに歪んでいた表情は別人の様に凛としている。迷いはない、恐怖を今だけはロッカーににでも仕舞い込んでしまおう。

 

「私が先輩を守り切れば、勝てるんですよね? ノエルたちの元へ戻れるんですよね?」

 

 彼女にとってカルデアは既に家なのだ。帰りたい場所であり守りたい自分の居場所。平穏を享受出来る唯一の場所。それが今失われようとしている。脅かされている。

 

 同じ価値観を共有出来る親友を護りたい。

 

 死の間際に手を握りしめてくれた先輩を護りたい。

 

 生きていると言う充実感を教えてくれる日常を護りたい。

 

 護りたい物が今自身の双肩に乗っているならば、最早恐怖を感じている暇はない。マシュの胸にあるのは何時でも他愛のない当たり前の日常なのだから。

 

「怖くないと言えば嘘になります。ですがそれ以上に取り零してしまう方が怖い」

 

「どうやら話纏まったみたいだな」

 

 その言葉は最後まで紡がれなかった。突如として謎の飛来物が降り注いできたからだ。そして降ってきた物体を直ぐに認識することになる。それは剣であった。

 

 咄嗟に杖と盾で弾いたおかげで無事であったがもう少し遅れていたなら誰かが深手を負っていただろう。

 

「防いだか、盾の英霊とは存外厄介なものだな」

 

「出やがったか信奉者。穴熊を決め込むのは止めたのか?」

 

「信奉者になった覚えは一つもないが、当の彼女に追い出されてしまってね」

 

 現れたのは黒いボディアーマーに紅い装束をした男。彼こそが剣の雨を降らせた者の正体でありアーチャーなのだと皆が認識した。

 

 肩を竦めニヒルに笑うアーチャーと軽口を叩き合うクー・フーリン。旧友の様に言葉を交わす二人はこれから殺し合うようには見えない。

 

「じゃあまぁ──死合うか」

 

「なに、直ぐに終わる」

 

 杖を前に突き出しルーンを身体に刻む。指先の動きはブレる。視認が困難であり、また止めるのが勿体ないと思わせる程に美麗だ。

 

 腕を前へと突き出し用意しておいた設計図を広げる。虚空より剣の郡が現れ、鋒は全て立香たちの方へ向き無機質な殺意をぶつけてくる。

 

 初撃はアーチャーの剣の郡であった。

 

 蒼白の稲妻を置き去りに立香たちに殺到する同型の剣たちは当たれば痛いでは済まされないと彼女たちの本能に警鐘を鳴り響かせた。

 

 だが盾の少女は既に誰よりも前へ出ていた。

 

「させません!」

 

 剣は尽くが盾により撃ち落とされる。

 

「訓練が生きたな!」

 

 描いたルーンに杖の先を突きつけ火炎を起こした。それも一つだけではなく幾つも用意されている。そして打ち出された火炎に追随する様にクー・フーリンは駆けた。

 

 だが此処でしてやられるだけのアーチャーではない。強化された脚力で地面を弾き、大きく横に飛んだ。手には既に黒い洋弓に矢に改造された剣がある。

 

「逃がすかァ!」

 

 一際大きな火炎を繰り出す。大きな火炎は放たれていた火炎を飲み込み豪火と化し方向を修正した。再び迫る炎を前にアーチャーは洗練された動作で弓に矢を番えた。

 

「フンッ───」

 

 打ち出された矢は豪火に呑まれたが容易くは焼き尽くされはしない。矢に含まれた神秘が砕け、豪火を消し飛ばした。

 

 打ち出された矢は神秘が含まれた立派な宝具だった。ランクだけならば低級もいいところの劣悪品。しかし含まれた神秘は本物であり、宝具の形を破壊し解放すれば威力の程は跳ね上がる。

 

 真っ当な英霊なら自身の切り札である宝具を破壊するなんて事はしない。だがアーチャーはその真っ当な英霊にはどうやら当てはまらない。彼は特殊な投影魔術により宝具をも作り出してしまう。宝具に含まれた神秘をも再現してしまう。

 

 故にアーチャーは宝具の神秘を暴発させる。

壊れた幻想(ブロークンファンタズム)』を技として使用することが可能になっている。

 

「先に行きな。直ぐに追い付くからよ」

 

 簡単に倒れてくれない腐れ縁に辟易としながらも楽しげに顔を歪めるクー・フーリンは立香たちにそう声を掛ける。

 

「いいえ、全員で叩き潰します」

 

 だがその高まっていく熱に冷水を浴びせるような平坦な声が返ってくる。返事を辿るその先には──

 

「速攻で決めるわよ」

 

 

 ──オルガマリー・アニムスフィアが居た。

 

 

 




ダ・ヴィンチの所に通い詰めたり、言葉が若干不自由だったりと伏線は貼ったつもりだったけれど……コレ伏線で成立してるんかはよく分からんとです。

感想評価等はどしどし募集中です。
何でもいいよ。投げっぱなしで説明しない設定についてでも(答えるとは言っていない)、ノエルくんのタイプの女性でも!
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