プロローグ+0話+本文8話+エピローグという構成の予定です。
艦これ二次創作、極力ゲーム内で知れる設定には反しないようにする予定です。
もしこのサイトの流儀に反する物があれば指摘ください。
「私は、間違ってなど、いなかったはずだ。」
地響きが絶えぬ地下壕の中で、しきりに鼻の元に手を当て、髭の様子を気にする仕草を繰り返す小男が呟いた。
「強い国、強い国民、強い経済。全て幸せになる事を、どうして世界は邪魔をする?」
「世界とは何だ。私が居ない、私を慕うものも居ない、この国もない、それが世界で有るはずが無い!」
「なら、この私を追い詰めてくる奴らは、一体なんなのだ?異形か?人ではない何者か?」
目を伏し、腕を組み、思考をするその男は、外から見れば未だ正気の様子だったかもしれない。しかし既に、彼の目には狂気が宿っていた。
そこに、一際大きな爆発音が聴こえたかに思えた、その時。
――アナタヲ、オイツメルノハ、ヒト、デハ、ナイノ?
「ん…誰だ…?」
――アナタモ、ヒト、ヤメタラ?
「誰だ!」
――アナタヲ、オイツメテイル、ノハ、ナァニ?
「海を越えてまで、我が臣民を殺しに来る、あの馬鹿共に決まってる!いい加減正体を見せろ!」
男が視線を上げると、ここ数日で見慣れてしまった重苦しい壁も、色が付いていそうなほど淀んだ空気も、すでに無かった。
いや、場所ですら無かった。
いや、ヒトガタは居た。
いや、身体のあちこちから鋼鉄が生えていて、瞳の位置には、漆黒しかないモノを、ヒトガタと言えるかどうか。
そして、自分とヒトガタらしきモノ、しか無かった。
「ここはどこだ!」
――ココ?
――ココッテ?
――ワタシ、ト、アナタダケ、ヨ?
――プレイス、カラ、ハズレタ、ダケ。
「何だこれは…奴ら神経ガスでも投入して来たのか!?」
――アナタ、アノ、プレイス、ニクイ?
「は…はは…何だか判らんが、それにだけは答えてやる。ああそうだ、私に反対するもの、私を慕う者に反対するもの、全てが敵だ!」
――ナラ、ソノ、テキヲ、ケシテアゲル。
「消す?だと?ははは、やれるもんならやってみろ。勲章なら山ほどくれてやる。」
――ソウ。ジャ、アナタニハ、アノ、プレイス、ノ、アースヲ。
――ワタシ、ハ、アノ、プレイス、ノ、シーヲ。
――アナタ、シー、ハ、テキ、クル、イッタカラ。
――ゼンブ、ゼーンブ、モラッテ、アゲル。
「お前は一体何を言ってる…ん…だ…?」
――ワタシ、プレイス、デテミタイ。
――アナタ、プレイス、ノ、シー、ニクイ。
――ワタシ、アナタ、ノ、テキ、チガウカラ。
敵?味方?海?大地?だと?
いや、そもそも、これは会話なのか?
そもそも俺は、何処に存在しているんだ…?
――アラ、アナタ、タマシイ、キエチャウ?
俺は…
何処に…
何を…
…
――アーア、キエチャッタ。
――アノ、プレイス、ノ、イシキ、ナンデ、ニクタイ、キエルト、タマシイ、キエル、カナ?
「ウフフ、デモ、ヤクソク、デキチャッタ。」
「アノ、プレイス、ノ、シー。タノシイト、イイナ。」
◇◇◇◇
1945年4月。
世界大戦は、戦いの中心であった帝国の、全面降伏で終わるはずだった。
しかし突如として、海に現れた異形と、沈没したはずの船による海上封鎖が始まった。
その異形は、それまでの戦争で海に落ちたあらゆる船を、変貌した形で再生し、人の乗る船に襲いかかった。
海の上の空すら例外ではなく、何故飛ぶのかすら分からない形状の飛行機が、すべての海上の制空権を奪い去った。
1945年7月。
ようやく事態を把握した各国は、補給が途絶え、既に戦争の体をなしていない戦いに「停戦」を宣言する。
1945年10月。
パリにて開催された首脳会議において、日本を含む世界各国の暫定統治域、及び対処すべき異形の割り当てが決定された。
異形の棲みかは、太平洋に2つ、大西洋に2つ、インド洋に1つ。
しかし、異形が率いる亡霊艦は、いつどこの海上でも遭遇することが判明しており、実際に戦いを挑むだけの戦力を維持しつつ、そこに到達することはほぼ不可能であった。
この為、この割り当ては、戦う相手を決めるというよりも、輸送維持の為のシーレーン確保分担の決定という方が正しいものであった。
1945年12月。
首脳会議から帰還した日本代表により、世界状況の詳細が伝えられた政府は、既にこの時点で崩壊寸前であった海軍軍備を、すべてシーレーン確保に費やす事を決定した。
日本が確保できたシーレーンは、朝鮮半島と日本の間のみであり、日本が頼る全ての資源輸送は、この細い1点のみとなった。
陸軍は解散され、日本は大陸方面における権益をすべて放棄した。
既に日本は、国内の食糧と、最低限の文化を維持する為の物資を確保するためだけに、全力を尽くさなければならない状況だったのだ。
そして、それから40年後。
未だに、世界は、海を得ていない。