「わたしは神様が嫌い」   作:アビ田

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閲覧ありがとうございます。
今季の本誌早速読んだんですが、感想が「本誌ィィーー!!本誌ィィィィ!!!(師匠ッーー!!ロードちゃんーーー!!!)」でした。
なるべく原作辿ろうとしつつ未完結なので、終盤はオリジナル&考察入ってますが、やはり一ファンとして原作の進みが楽しみです。


飢えに付き

「…い、……おい!」

 

「……っ、あ」

 

 場所は黄山(ホワンシャン)

 テワクは駆け付けたマリに揺り起こされ、目を覚ました。

 

「大丈夫か、監査官」

 

「何、ですの? ………あ」

 

 瞬間少女の脳裏に、ノアによって見せられた映像が過ぎる。

 

 それはかつて孤児で貧しいながら、兄のマダラオや仲間たちと暮らしていた光景。六人はいつも一緒で、家族だった。

 

「マダラオ兄様…?」

 

 しかしその幸せは壊れる。

 

 テワクに温かい眼差しを向けていた兄が、血を吹いて地面に倒れる。

 幼い少女は血を浴びながら必死に手を伸ばして、兄の腹の傷を押さえた。

 

 それでも血は止まらず、泣き叫ぶ彼女の視界に入ったのは、黄金の大剣を持った紅目の女だった。

 

 

 

 

「マリ、ア…」

 

 

 女の肌は褐色に染まり、ノアと同じ聖痕が額に浮かんでいた。

 

 違う。それは幻だと、テワクは首を振る。

 彼女がノアに幻覚を見せられていた間、マリアはあのターバン頭の青年に連れ去られたはずだ。

 

「混乱しているところすまないが、状況を説明してもらえないか? チャオジーはいたが、マリアやブックマン、それにラビも忽然と姿を消したんだ」

 

「……ブックマンの二人もですか?」

 

 ひとまずテワクは簡潔に起こったことを説明し、拠点にある方舟のゲートを使って本部へ帰還した。

 

 その後、世界各国で同時多発的にノアが出現したことを知る。

 彼女の目的地はヨルダンに決まった。そこにはリンクやトクサ、そして兄のマダラオもいる。

 

「……私情を挟むなんて、監査官失格ですわね」

 

 あまり自身の感情を出さなかった兄ではあるが、テワクにとっては唯一無二の、血の繋がった家族だ。

 

 それにもしノアが見せた光景────マリアがマダラオを殺した映像に意味があるのだとしたら、彼女がヨルダンにいる可能性は十分にある。

 

「急がないといけませんわ」

 

 震える拳を握りしめ、テワクはヨルダンへ繋がる方舟のゲートを潜った。

 

 

 

 

 

 ヨルダンの拠点。そこは血生臭いにおいが充満していた。生存者はナシ。

 

 ついで前線へ向かったテワクはリンクと鉢合わせすることになった。

 

「なぜここにお前がいる」

 

「離してください」

 

「…私はウォーカーたちと連絡がつかなくなり、近辺を探っていた所だ」

 

「離して……っ!!」

 

「落ちつけ、テワク」

 

 彼女が抵抗しても、リンクの手は離れない。そして男の瞳の中に心配の色があることに気づいた少女は目を見開いて、かすれた声で謝った。

 

「少しは落ちついたか?」

 

「……はい」

 

「ならいい。お前がここにいるということは、何か目的があって来たのだろう?」

 

「…実は──」

 

 

 テワクから一通りの事情を聞くと、リンクは疑問に思ったことを呟く。

 

「お前がノアの映像で見せられた、Ms.マリアがマダラオを殺したという場所に見覚えはあるか? もしかしたら何かのヒントになると思うのだが…」

 

「……ぁ」

 

「覚えがあるのだな?」

 

「あれは、()()()は────北米支部。…壁の造りに、見覚えがあります」

 

「なるほど、そういうことか…。第三使徒(サードエクソシスト)の研究が行われていた場所だ」

 

「………」

 

 その時ぎゅっと、リンクの上着の裾が引っ張られた。見ればテワクの瞳が揺らいでいる。

 

「…そう、だったな。お前にとって北米支部は…」

 

「……もう、昔のことですわ」

 

「ならどうして震える?」

 

「………」

 

「咎めたいわけじゃない。ただ今は、一刻も早くお前の監視対象を見つけるべきだ」

 

「…はい」

 

「それに、マダラオの元へ向かうのだろう?」

 

「っ」

 

「ならば私も共に向かおう。何か嫌な予感がするしな。それに恐らく、ウォーカーも北米支部にいる可能性が高い」

 

「いいん……ですの?」

 

 おずおずとしたようにテワクが言う。

 少女の胸中を察してか、リンクは努めて表情を柔らかくする。

 

 そこに仕事男の顔はない。家族を想う、一人の青年の姿があるばかりだ。

 

 

「一人では怖いかもしれない。しかし二人なら、きっと大丈夫だ」

 

 

 握られた手を、少女は啜り泣きながらも強く握り返した。

 

 

「…行きましょう、北米支部へ」

 

「あぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 北米支部。

 

 神田やアレンの意識がない中、部屋の壁に沿うように会議に参加した人物が並べられている。

 

 アルマの目覚めにはまだしばし時間がかかる。

 ティキは欠伸を一つこぼし、そう言えば、と呟いた。

 

(マーシーマ)の方はどうなってるんスか? 残ってた第三何ちゃらと戦ってたハズだけど…」

 

「ティキぽんと違って、ついさっきちゃんと捕らえたそうデスヨ♡今こちらに向かってマス♡」

 

「千年公はまだ少年の件を持ち出すのかよぉ…」

 

 冷や汗を流すティキの一方で、シェリルが疑問を投げかける。

 

「別に連れて来る必要はないんじゃない、千年公? ゲストはアレン・ウォーカーと神田ユウだろうし」

 

「ワイズリーが遊びたいらしいんデスヨ♡今回は一番働いてもらっていますからネ、ご褒美デス♡」

 

「僕もかなり働いてると思うけどなぁ、千年公」

 

「一番働いてないのはティキぽんですネ♡」

 

「俺いじりすんのやめてくんない?」

 

 雑談に花を咲かせるノアの傍では、黒の教団側の人間たちが表情を険しくしていた。

 

 

 

「のっ!?」

 

 

 そんな折、突如ワイズリーが声を上げた。直後、意識がないはずのアレンが拳を握りしめる。そのまま少年が向かうのは神田の元だ。

 

 この時のアレン・ウォーカーは神田の過去を見ていた。

 そして友だち(アルマ)を殺して苦しむユウの姿を見て、激しい怒りに駆られたのだ。

 

 それがまさかアレンの目覚めるきっかけになるとは、ワイズリーも思いもしなかったが。

 

 

「君のド短気はッ!! どこに行ったんですかァ!!!」

 

 

 少年の拳が神田の額に炸裂する。

 それと同時に、神田の額にあった魔眼のマークが割れ、ワイズリーの能力が切れた。

 

「のぉぉぉぉ!!!」

 

 魔眼にダメージを負ったことで、『智』のノア特有の頭痛が発生してしまった。

 

 しかし能力が解けるのが一歩遅かった。

 突如出現した無数の巨大な管がアレンを襲い、シェリルごと棺の中に入っていたトクサを吹き飛ばす。

 

 管はそして、多くの人間の自由を奪った。

 

 それが伸びる先におわすのはアルマ=カルマである。

 

「何が起こって…」

 

 呆然とするアレンに、近くにいたバクが叫んだ。

 曰く、アルマの憎悪がダークマターでできた卵核(らんかく)のエネルギーに変換されていると。

 

「変換って、まさか…!!」

 

 このままでは、アルマ=カルマがAKUMAになる。

 

 

 アレンは咄嗟にアルマの元へ駆け寄ろうとしたが、彼から発せられる光により目をやられてしまう。

 

「アルマッ………!!」

 

 瞬間、爆発が起こった。

 

 

 爆発した中央に浮遊する割れた卵。そこから抜け出た青年は地面に降り立つ。

 

「ユウ…?」

 

 アルマは“友だち”の姿を探す。しかして彼の内にある卵核がさらにほの暗い感情と結びつき、絶大なエネルギーをもたらす。その結果が先ほどの比にならない大爆発。その光を浴びた者は一瞬にしてAKUMAウイルスに感染し、粉微塵と化した。

 

 術やイノセンスによってその衝撃から何とか逃れた者たちは、AKUMAと成り果てた青年を目の当たりにする。

 

 

「ユウ、久しぶりだね」

 

「……」

 

 アルマの呼びかけに返答はない。セカンドである神田の体は超再生によって異常な速度で回復していく。

 

「ユウのせいで、僕はAKUMAになっちゃった」

 

「…だったら俺がまた、破壊(こわ)してやるよ」

 

 

 そしてまた、YUとALMAは殺し合う。

 

 伯爵の用意した、演目(シナリオ)の中で。

 

 

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 一方アレンは大爆発により、はるか後方に吹き飛んでいた。

 起き上がった彼の目の前には、術札を咥えたトクサがいる。

 

「トクサ!!」

 

「無事…ですか、ウォーカー……」

 

 アレンの肉盾となった男の体はボロボロだ。その傷もセカンドほどではないものの、ゆっくりと回復していく。

 

「どうして僕なんかの盾に!!」

 

「はっ……! 僕()()()、ではありませんよ。あなたは大切な使徒様だ。死なれては困ります」

 

「でも僕は、みんなを守れなかったのに…」

 

 先の爆発により多くの者が死んだはずだ。だからこそ、少年の心に暗い影が差す。トクサの呆れたようなため息がすぐ近くで聞こえた。

 

 ちょうどその時、アレンの耳に付けていた通信機にバクの声が入った。

 

『ウォーカー……ウォーカー聞こえているか!? こちらはサードが飛ばしてくれた衛羽(まもりばね)により無事だ!』

 

「えっ」

 

 バクたちを守ったのは──と、アレンは仏頂面の男を見る。

 

「…私にはこのくらいが精一杯です。ですからウォーカー、貴方は貴方にしかできないことをしてください。それが貴方の使命でしょう」

 

「…うん! 分かったよ!!」

 

「頼みまし────?」

 

「トクサ? ……トクサッ!?」

 

 アレンは話の途中で倒れた男に駆け寄る。トクサの肢体はぼこぼこと膨れ上がり、歪に変形していく。

 

 アルマ=カルマのAKUMA化により、彼を母胎として作られたサードエクソシストの体も共鳴し、暴走しているのだ。

 

 助けようと動いたアレン・ウォーカーの体は、まるで拒絶されるように弾き飛ばされる。

 

 仲間のマダラオに助けを求めるトクサに、伯爵は嘲笑した。

 

「無駄デスヨ。()()()()はエクソシストの手により、破壊される運命なのデス♡」

 

 

 人間がAKUMAの細胞を取り込もうとした代価。

 それが今、精算されるというのだ。

 

 たとえエクソシストに破壊されず生き残ったとしても、その先は伯爵の玩具と成り果てる運命が待ち受ける。

 

 その証拠のように、アレンのイノセンスは彼の意思に反しトクサを攻撃した。

 イノセンスがサードエクソシストを「敵」とみなした瞬間だった。

 

 

 

 トクサだけではない。世界各地に点在する他のサードエクソシストの肉体も変形していく。

 

 それはマーシーマによって、北米支部に連れて来られたマダラオも同じはずだった。しかし彼の体はまだ変化していない。

 

 それを疑問に思ったシェリルは、頭痛から復活したワイズリーに問いかける。

 

「この人間を用意させたのって君だろ? 何で他は変わってるのに、コレだけ変わってないんだい?」

 

「千年公に頼んで抑えてもらったのだ。ただそれは肉体だけの話で、意識の方はアルマの憎悪に影響しておる」

 

「ふーん…。何を企んでるかは知らないけど、千年公に迷惑はかけないでよ」

 

「分かっておる」

 

 ワイズリーは周囲を見ながら、目的の人間を待ち望む。

 

「早く来ないかのう〜」

 

『聖母』の隣にいた存在であり、今のマリアから「愛」を与えられている人間。

 ヒトでありながら、家族のものである母の愛を享受している。

 

(…フン、嫉妬とはワタシらしくない)

 

 

 

 

 

 

 

 *****

 

 

「何ですの、コレ…」

 

 テワクとリンクはゲートが北米支部の付近にしか設置できなかったため、切り立った岩肌の上に降り立った。

 

 ちょうどその時、最初の爆発が北米支部のある方角で起こった。

 

 近づく最中に二回目の爆発も起こる。二人が施設の近くに到着した時にはすでに、北米支部は瓦礫とウイルスに侵された人間で死屍累々といった惨状だった。

 

「……! ウォーカーはやはりここにいたか!」

 

 リンクの読み通り、アレン・ウォーカーがいた。

 少年はアルマ=カルマと神田の間に入りながら戦っている。

 

 いや、戦っているというより、まるで二人を止めようと動いている。

 

 

「やっと来たか」

 

「「!!」」

 

 二人の後方に、ターバン頭の青年が髪をかきながら立っていた。

 

「貴方……マリアをどこに連れ去ったんですの」

 

「ほぉ。身内を最初に尋ねない辺り、おぬしは仕事人なんだのう」

 

「……リンク兄さま、アレン・ウォーカーの元へ向かってください。向こうの狙いは私のようですので」

 

「………」

 

「私は大丈夫ですわ。「監査官」としての責務をどうか全うしてくださいまし」

 

「…わかった」

 

 駆けて行くリンクにわずかでもターバン頭の青年が視線を送ることはない。

 その魔眼の向く先は、少女に絞られている。

 

「ただの人間にノアも興味を示すのですね」

 

「興味か。まぁ、あながち間違ってはおらん。しかし興味というよりは…もっと浅ましい感情だのう」

 

「…浅ましい?」

 

「こちらの話だ。人間、今宵はおぬしにぴったりの余興を用意してある」

 

 ワイズリーが側に控えるレベル4に指示を出す、するとAKUMAは抱えていた男の肢体を投げ出した。

 

「に、兄様!!」

 

 伸ばした少女の手に、一陣の蹴りが襲いかかる。驚いたテワクは致命傷となる前に体勢を変え、横に転がる。

 

「お前……! 兄様に何をした!!」

 

「おぉ、口調が荒くなったな。ワタシは何もしておらん。言うなれば人間の禁忌に触れた業が、今その身に降りかかっているに過ぎん」

 

「ふざけないで!!」

 

「ふざけておるのは理もろくに守れぬ人間ども、貴様らだ」

 

「っ……ノア、貴方の目的はいったい何なのですか」

 

「目的? そんなものはない。ワタシはただ、おぬしの悲劇を見たいだけだのう」

 

 マダラオの瞳は虚で、妹が呼びかけても反応しない。

 

「すでにアルマ=カルマはAKUMAと成り果てた。この人間もかろうじて人間性は残っておるが、すぐに元の人格は跡形もなく消える」

 

「兄様……兄様お願い。テワクがここにいます…」

 

「哀れなものだな」

 

「────黙れ!!」

 

 

 少女の手から革手袋を突き破り、鋭い刃物が覗く。その刃はしかし、ワイズリーには届かない。

 兄が間に入ったことで思考の鈍った少女の腹に、重い蹴りが入った。ゴギンッと、人間であれば通常は鳴らない音が響く。

 

「ぅ……ぐ」

 

 テワクは腹を押さえ、数歩後退する。

 

 母胎のAKUMA化が済んだ今、サードエクソシストはAKUMAのようにノアの命令に従う。

 

 そのことに少女は気づいてしまった。それでも泣くことだけはしなかった。

 

「かつておぬしは任務中、この人間を庇い、一度死にかけた」

 

 ワイズリーはテワクを指差し、マダラオに命令する。

 

 

「その人間を殺せ」

 

 

 マダラオはAKUMA細胞が埋め込まれている自身の左腕を鋭い鉤状に変え、テワクに襲いかかる。

 

 テワクは術を展開しながら攻撃を躱しているが、サードエクソシストである兄の方に分がある。

 少しずつ押され、身体の節々が血で染まっていく。

 

「兄様、おねがい。おねがい…」

 

「どうしたのだ? 反撃しなければ死ぬぞ」

 

「いやです、テワクは戦いたくありません……」

 

「ほぉら、疾く殺し合え」

 

 それでも攻撃に転じない人間に、ワイズリーは呆れた様子でため息を吐く。

 

 

「改造されたその義肢を活かせば、殺せなくはないだろう?」

 

「……あなたは、愚かですのね」

 

「…何?」

 

「家族を守りたいと願って得た力を、傷つけるために使うくらいなら────死んだ方がマシですわ」

 

 

 テワクは幼い頃からマダラオやリンクに守られてばかりで、泣き虫だった。おまけに人一倍の寂しがりやだ。

 

 そんな彼女は拾われ、「鴉」として育てられた。

 

 しかしある時任務で兄を庇った彼女は体の多くを失い、待つのは死だけとなった。

 

 そんな彼女は、朧げな意識の中でルベリエに持ちかけられたの話を受けた。一人ぼっちのまま行くことが、嫌だったから。

 

 それに何より、弱くていつも兄やリンクに守られっぱなしの自分が嫌だった。

 

 

 行われたのは、内臓や体を機械にして、エクソシストでない人間がAKUMAに対抗し得る力を得られるか────という実験。

 倫理面で騒ぐ人間もいるにはいたが、その点、孤児の出である鴉の人間ならば問題はなかった。

 

 

 テワクは人体実験された鴉の中でも、一番の成功例となった。

 

 内蔵された義肢は、個体によるがレベル3さえ破壊できる力を持つ。

 無論彼女が幼い頃から教育を受けた鴉という点も、突出した戦力を引き出せる理由に挙げられる。

 

 だが、実験の代価は大きかった。

 

 実験を担当したのはレニー・エプスタイン。これは北米支部にて秘匿に行われた。

 

 実験において行われた改造。神経をどのように繋げばよりスムーズに義肢を動かせるか、など。

 

 何百回と行われたその試行錯誤の中で少女は痛みに絶叫し、いっそのこと死んだ方がよっぽどいいと願った末に、実験は終了した。

 

 

 

 

 

「面白いのう」

 

 そんな少女の根っこの部分を嘲笑うように、ワイズリーはニィ、と口角を上げる。

 

「………」

 

 しかし胸の内の嫉妬は消えるばかりか、増していくように感じられる。

 

 

 ただの人間に母が笑いかける光景。

 

『智』の子はずっと罪に苛まれ、孤独に苦しんでいたというのに。

 

 

(なぜだ。なぜ母上はワタシたちの側にいない。母上の側にいるべきなのは人間の小娘ではない。われわれ家族(ノア)だ……!)

 

 

 その間、マダラオの一撃によって太腿の肉がえぐれ、地面に小柄な体が転がった。

 

 テワクは痛みに喘いだ。

 そして呼びかけても応えてくれない兄に、とうとう涙をこぼした。

 

 

 そんな二人の様子を、ワイズリーは無表情に見つめる。

 

 彼の心はどうにも癒やされそうにない。

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