「わたしは神様が嫌い」   作:アビ田

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わんわんお

 家族と過ごし始めてから三ヶ月経った。

 

聖母(メモリー)』の暴走は今の所ない。もしネアが目覚めれば違うのだろうけど、あの番犬がアレンのイノセンスと共鳴した影響で、当分はあの子も目覚められないと思う。

 

 

 ちなみに、今のわたしは幼児化している。

 

 メモリーが体内にあるイノセンスの影響を受けて大人の体を保てないせいだ。イノセンスは使えなくはないけど、使うと体に負荷がかかる。ノアの力は影の力だったら普通に使える。

 

 イノセンスを破壊することはできない。寄生型のこの体はその汚染が全身に広がってしまっているから。

 つまりまぁ、どうしようもない。

 

 

 

 

 

 三ヶ月。されど三ヶ月。

 

 悠久を生きる身としては、本当に短い時間。でも薄っぺらな永遠よりは、よっぽど密度が濃い。

 

「マリアー、遊ぼ〜」

 

「その前に宿題しなよ」

 

 今日も今日とて、わたしは『夢』の子に引きずられている。今では彼女の方が身長が高くなってしまった。

 

 それと、わたしは千年公の養子ではなくジョイドの養子になった。身分を証明するのは必要だからね。

 

 千年公の子供は遠慮した。で、断られた彼はしばらく落ち込んでいた。

 選ばれた「お義父さん(笑)」の方は心底嫌そうな顔をしていたけど。その嫌がる顔見たさに選んだ節はある。

 

 魂は違うけれど、ジョイドの肉体はネアのものだ。

 

 35年の空白を知ることはできるのだろうが、わたしや千年公の地雷が爆発するかもしれないことを考えたら、わざわざ知ろうとは思わなかった。

 

 

「マリア?」

 

 ふいに耳元で声がした。ロードちゃんが心配そうにわたしを覗きこんでいる。

 

「大丈夫?」

 

「うん。ちょっと考え事してただけ」

 

「ふぅーん…まぁいいけどぉ」

 

 ぎゅっと、ロードちゃんに抱きしめられた。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 事態が動いたのはその数日後。

 14番目の気配を察知し、ノアが動き出した。

 

 今回アレン、及び14番目を捕獲するに辺り、ノアの過半数以上が参加することになった。

 

 理由としては、アレンをストーカーするアポクリフォスの存在が大きい。仮にノアがアポクリフォスと一対一の状況に追い込まれれば勝機はない。ゆえに人員が多く割かれている。

 

 ロードと同じく留守番組になったマリアは、あからさまに拗ねていた。

 この女、肉体に精神が引きずられているのか、言動も子供らしくなっている。

 

「何でわたしはダメなの…」

 

「しょうがない、ロードが千年公に直談判してたからのう」

 

 部屋の隅で拗ねる少女を、懸命にワイズリーが宥める。

 

「もういい、自分で行くもん」

 

「ま、待つのだマリア、ロードはおぬしが怪我をするのが心配なんだのう。それに14番目に会うことを懸念しておるのだ」

 

「わたしが?」

 

「そうだ」

 

「……そうだね。うっかり14番目に会ってわたしが殺されたら困るもんね。でも、参加する千年公がもし暴走したらどうするの?」

 

「のの、それは……そうだが」

 

「ならさぁ、分かるでしょー?ワイズリー」

 

 少女の人差し指が、ツンツンと青年の胸を叩く。

 

「あなたたちの“存在意義”は、わたしを守るためじゃなくて千年公を守ることにあるんだから」

 

「……重々理解しておる」

 

「ねぇねぇ、ワイズリー」

 

 うるうるとした紅い目はトドメと言わんばかりにワイズリーを見つめた。

 

 

「わたし千年公が心配なの。だからさぁ、一緒に行っていいでしょ?」

 

 

 これに「NO」と言えるワイズリーではなかった。結局マリアは彼の説得もあり、今回の作戦に同伴できることになった。

 

 そしてこの話を聞いたロードは一気に不機嫌になった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 14番目の覚醒の兆しが顕著に現れた同日、作戦は決行された。

 

 アポクリフォスの捕獲にはジャスデビやシェリル、マーシーマが向かう。対し14番目の捕獲担当がワイズリーとティキだ。

 千年公はマリアと馬車の中で待機となる。二人は途中までワイズリーたちと一緒だ。

 

「ふぁ…」

 

 馬車に揺られる中、少女は眠たげな目をこすった。隣で編み物をする千年公に時折頭を撫でられる。四人が乗る熱で馬車は程よく温まり、とうとうマリアは伯爵の膝の上に倒れた。

 

 少女の前に座るティキはじっと義理娘の顔を見つめる。

 

(つか、何でコイツがここにいるんだ……?)

 

(千年公のストッパー役だ)

 

(げっ、この野郎…また俺の頭の中のぞきやがって……そもそも本当に使えんの?思っくそ寝てるけど)

 

(………多分、大丈夫だのう)

 

 見かねたティキが腹を揺すって起こそうとしたが、少女は完全に夢の中だった。

 

「我輩は気にしませんヨ。揺れが心地良かったんでショウ」

 

「でもよ、千年公…」

 

 穏やかに微笑む男とその膝で眠る少女の光景はまるで本当の親子のようだ。

 けれどどこか、別の何かをティキは感じた。それを言語化するのはとても難しい。

 

(例えるなら……そうだ)

 

 

 箱庭。二人だけの、穏やかな世界。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 午睡をしていた最中、マリアは聞こえた大声に目を覚ました。叫んでいるのはティキだ。

 

「おい起きろぉ!!ワイズリー!!!」

 

 開いた扉のそこには青筋を浮かべた男が立っている。

 どうやら先程までティキが外で14番目の気配を探っていたらしい。

 

 一方で馬車で千年公を見張っていたはずのワイズリーは、「のの…?」と寝ぼけ眼である。

 

「の?千年公が……」

 

「そうだよ、どこか行っちまったんだよ。どうしてくれんだテメェ」

 

 ティキはワイズリーに詰め寄って黒い顔を浮かべる。

 その二人のどさくさに紛れ、四つん這いの姿勢でティキの横を通り過ぎた少女は、外へ脱した。

 

「早く行かなくちゃ…」

 

「どこ行くぶぅ?」

 

 そこで声をかけられる。声のした方には木の棒で地面に絵を描いているフィードラがいた。彼は通信役として参加している。

 

「上手だねぇ、フィードラ」

 

「これが千年公だぶー、それでこれがロードだぶー」

 

 マリアと思しき人物はそのロードに抱きつかれていた。基本的にエブリデイくっつかれているので、間違ってはいない。

 

 しかしどうしたものかと彼女は考える。フィードラは片手でマリアの手を握り、「危ないぶぅ」と引き止めている。

 マリアとしては早く千年公を追いたかった。彼女も爆弾持ちだが、千年公も負けず劣らずの地雷持ちである。暴走したらノアでも止めるのが大変になる。

 

 何かないかと探った時、コートのポケットに包装紙に包まれたキャンディーを発見した。ロードに貢がれたものだ。

 

「フィードラ、おてて出して。いいものあげる」

 

「ぶぅ?」

 

 促されるまま、両手を椀のようにしたフィードラの手にキャンディーが乗る。

 それを嬉しそうに食べた青年を尻目に、多少の罪悪感を抱きながらもススッ、と彼女は離れた。

 

 ちょうどその時、ジャスデビたちから連絡が入った。キャンディーを乗せたフィードラの舌が蠢き、そこから双子の声が響く。騒いでいた男二人の視線もそこに集中した。

 

「双子ちゃん!!」

 

『ジャスデ………おいっ!「双子ちゃん」言うな、このチビッ!!』

 

『ヒヒッ!アポ野郎は捕まえたぜ、今連行中だよぉ!』

 

『後で覚えとけよちび助!!!』

 

『「ちび」じゃなくて「マリア」だよ、デロ』

 

『うっせぇ!おめーらも早く来い!!』

 

 そこで通信は終わった。ティキはワイズリーの胸ぐらをつかみ、遠慮なく揺する。

 

「テメェの魔眼で早く見つけろぉ!!」

 

「の、ののの、魔眼発動ォォ!!!」

 

 太陽拳のポーズで魔眼を発動させたワイズリー。

 二人の仲睦まじい(?)様子を微笑んで見ていた少女は、感じ取った気配の方向に視線を移す。

 

 

「……っあ、千年公が今「アレン」と接触した」

 

 

 一瞬の沈黙。ギギギ、とティキの顔が動いた。ワイズリーを投げ捨てた男は少女に詰め寄る。先の今でキレ散らかしている男の形相は中々のもので、マリアは逃げた。

 

「どうやってわかったのか知らねェが、千年公の居場所を教えろ!!」

 

「その顔で近づくな!マリアが怖がっておるではないか!!」

 

「ぱぱこわぁい……(笑)」

 

「いやアイツ笑ってるからな?絶対に心の底で」

 

 ワイズリーが羽交い締めにしたことでティキが止まる。

 

(うーん、本当にヤバそう)

 

 少女の口が動き、何か呪文のような言葉を口にする。その瞬間方舟のゲートが現れ、マリアが飲み込まれた。

 

「「え」」

 

 目を丸くした二人は固まる。

 

「は、方舟を使ったんだのう!!」

 

「ハァー………オーケー、分かった。アイツが何で方舟を使えるかはスルーするとして、どうすんだ。明らかに千年公と少年のところに行っただろ」

 

「……ワタシが超特急で千年公を探すしかない」

 

 ワイズリーは冷や汗をかきながら、再度魔眼を発動した。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

「オレたちは元は()()()だった。

 

 ────「()()()()」だったんだよ」

 

 

 

 アレン────否、目覚めたネアは伯爵の頰に触れ、優しい笑みを浮かべた。

 混乱する伯爵はネアの手を振り解くことすらせず、ただ唇を震わせる。顔面は蒼白し、額からは冷や汗が流れた。

 

「なぁ、覚えているだろう、()()。オレたちが過ごしたキャンベル家の屋敷を。黄金に煌く麦畑を。そしてオレたちが()()()()()()、共に生きた17年間を」

 

「ちが、わ、我が輩ハ……」

 

「あんたほんとうに、忘れているのか?」

 

 歪に吊り上がった笑みが、伯爵に向けられる。

 

 自己を保つため、無意識に自分の存在理由(レゾンデートル)を再確認する千年公のその姿には、いつもの道化めいた余裕は一切感じられない。

 14番目とは、彼にとって天敵である。

 

 ついには動かなくなった男に、ネアは困ったように眉を下げた。

 伯爵は気付いていないものの、彼は二人の周囲にある不穏な気配を察知している。

 

 またアレンのイノセンスが現在進行形でアポクリフォスに居場所を伝えている。ここで悠長にしている暇はない。

 

「お〜いマナ、マナってば」

 

「…何で、お前は……我が輩を「マナ」と呼ぶのデス……?」

 

「……やっぱ、覚えてないかぁ」

 

 自嘲が混じったネアの表情を見て、伯爵はさらに混乱する。

 

「理由はカンタンだよ。この世で「マナ」はあんただけだから。そしてオレを、あんたがこんな風にしたから」

 

 ネアは手を広げる。普段は銀褐色に輝く瞳が、今は白目を含め真っ黒に染まる。

 強まる破壊(ノア)のメモリーの気配。少年の口が避けんばかりに開く。

 

 

()()()()()。あんたを破壊(ころ)せれば、オレはそれでいいんだよ」

 

 

 一歩一歩と距離を縮めるネアに、伯爵は頭を抱え、「ちがう」と何度も叫ぶ。

 恰幅の良い体の周りには、いつも着ているウサギを想起させる“皮”が浮かび上がり、その肢体を包んでいく。

 

 ネアが目を細めながら手を伸ばしたその時、不意に人間の気配がした。

 

「っ……!!」

 

 しまった、と口にする間も無く、結界装置(タリズマン)が発動する。

 

(……ッチ、マズったか。マナに気を取られてファインダーの接近を許しちまった……)

 

 ネアの体は結界装置により拘束された。彼はどうにか脱そうと試みるが、指一本も動かせない。己に近付いてくる数名のファインダーに舌打ちしながら、横目で伯爵を見やる。

 

 今はまだ混乱しているのか、伯爵に動きはない────と思ったその時、目が合った。

 心配そうに自分を見つめる伯爵(マナ)に、彼は苦笑する。いつも着ている“皮”は崩れ、顔半分を覆うのみになっている。

 

「ね、ネア…?」

 

 結界装置に近づく伯爵。しかし寸前でファインダーが前に出て阻まれる。いつもと人間姿の伯爵の容姿が違うこともあるが、それ以上に14番目確保に焦っていることもあり、ファインダーはまだ中年の風体をした男が伯爵であると気づいていない。

 

「どいてろ、オッサン!!」

 

 ファインダーの男は伯爵の体を押す。するとあっけなくその体は倒れた。

 

「マナ!」

 

 尻もちをついた瞬間、伯爵の雰囲気が変わった。

 本日何度目かの舌打ちを漏らし、ネアは声を荒げる。

 

「ッチ……クソ!そこの人間ども、さっさと逃げろ!」

 

「……は?アレン、テメェ何言ってやがる」

 

「だからァ、早く逃げろって言ってんだよ!」

 

 ネアの忠告にファインダーは鼻で笑い、ろくに取り合わない。「コイツら…」とキレかけた彼は、下から聞こえた()()()()に固まる。

 

 

 

「ばぁ」

 

 

 

 既視感のある姿に、ネアは目を丸くする。

 脳裏に過ぎったのは、子供の頃、病弱だったマナが弟を驚かそうと、カテリーナのスカートの下から這い出てきた光景だ。

 

 今は少女の姿をしているが、この女もカテリーナの側で自分たちを見ていた。

 

 

 ネアは少し頰を赤らめた。少女は今、彼の股下で四つん這いになっている。

 

「なんちゅーところから出てきてんだよ……」

 

「わたしも想定外だよ」

 

「おい待て!そこで立とうとすんな!!」

 

「ん?…あぁ、はいはい」

 

 マリアは姿勢を低くして地面を這う。立ち上がった時には、少女の着ているコートの膝辺りはすっかり汚れてしまった。

 

 彼女はネアが結界装置に拘束されているのを把握すると、影を伸ばす。

 

 その影は次々と人間たちに突き刺さり、絶命させた。ついでに結界装置も破壊する。

 拘束が解かれたネアは地面に倒れた。

 

「マリ、ア…?」

 

 先程までの伯爵の殺気が嘘のように消えた。

 頰に触れた大きな手をマリアは振り解こうとせず、むしろ握り返す。

 

 それを目に入れた瞬間、ネアは悟った。

 

 

 ────あぁ、あんたは結局、自分の運命を受け入れちまったのか。

 

 

 神の傀儡となり、自分の使命を受け入れたのだろう。

 ブックマンとは比にならない、果てのない「傍観者」としての道を。

 

 ネアは感情を殺すように、唇を噛んだ。

 

 

「全く、勝手にどこかに行っちゃダメなんだからね!」

 

「わ、我輩はただネアに会いたくテ……」

 

「言い訳はいいです〜。ワイズリーもジョイドも心配してたんだから、ちゃんと謝ってあげてよ」

 

「……はい」

 

 マリアはぐいぐいと、伯爵の背を押す。

 

「さぁ、帰るよ。道草してまた教団の奴らが来たらめんどくさいし」

 

「でもマリア、ネアが……」

 

「そうだけど……でもどうするの?連れて帰るの、それとも殺すの?」

 

 その問いに伯爵は黙り込む。そもそも彼がここに来たのは本当に無意識だった。

 14番目の気配を感じた瞬間、足が勝手に動いていたとしか言いようがない。

 

「ここにいたらダメ、帰るの」

 

「……分かりましタ」

 

 渋々と頷く伯爵に、マリアは微笑んだ。

 

 このまま留まっていると本当に危険だ。いくらノアが数名がかりでアポクリフォスを封じているとはいえ、いつあの犬が拘束を逃れるか分からない。何より二対で『千年伯爵』を為すネアとマナが揃っているこの状況。とても『聖母(イヴ)』の精神によろしくない。(アダム)を求める本能で頭が爆発するかもしれない。いや、割とマジで。

 

 

()()、どこに行くんだよ」

 

 

 ピタリと、少女の歩みが止まった。

 

「…ネア」

 

「お前の分身より、マナの方が大事か?随分連れねぇな」

 

「黙りなさい」

 

 紅い瞳が、黄金に輝く。白い肌は褐色に染まり、額には一つの大きな聖痕が浮かぶ。

 怒りを露わにする聖母(はは)に、ネアは笑みを崩さない。

 

「そもそもオレとマナの35年ぶりのデートを邪魔するって、あんたも大概空気を読めないよな。それとも何、もしかして伯爵にジェラシー感じちゃったわけ?だったらいくらでもあんたならデートしてやるよ」

 

「……黙ってよ」

 

「あんたの覚悟なんて知ったこっちゃない。オレはオレの進みたいように進む。あんたがこの手を掴まないなら、何度だって差し伸べる。それでも掴んでくれないなら、無理やり掴んでやるさ」

 

 ネアはわざとらしくローファーの音を立てて接近する。

 

「……っ」

 

 一瞬、本当に一瞬だった。

 

 本気で己を(ころ)そうとする少年の瞳に、マリアは心を奪われてしまった。

 目の前に掲示された“死”に、心が揺さぶられる。

 

 

「!」

 

 

 だが、突如体を抱き寄せられ、沼の底から一気に意識を引き上げられた。

 

「……千年公?」

 

「わたさ、なイ────渡さない渡さない渡さなイ!!」

 

 瞬間、ネアに伯爵の体から伸びた何本もの触手が襲いかかる。

 

 ネアは後方に避けたものの大きく体勢を崩す。続いてきた二波は手を地面につけ、体を横にそらすことでギリギリ躱した。

 彼の頬に冷や汗が伝う。だが笑みだけは崩さない。

 

「オイオイ、マナってロリコンだったわけか?………つーか何でマリアは小さくなってんだよ」

 

「え、今更その話題?」

 

「ネアァァ!!!」

 

 伯爵は攻撃の手を緩めない。

 マリアは身動ぐが、がっしりと抱きしめられているせいで抜け出せない。

 

「くる……苦しいってば、千年公!!」

 

 千年伯爵(アダム)の本能だ。(つがい)を奪われまいと必死になっている。

 

 ネアは何とか攻撃を避けていたものの、手数の多さで捕まってしまった。腹を刺された男の口から夥しい血がこぼれる。

 

「やはり貴方は邪魔デス、ネア」

 

「ハハハ…そうだよなぁ、()()()()の本能だ」

 

 

 ネアは反撃に出ようと、イノセンスの発動を試みる。しかしノアのメモリーと相反し、思うようにいかない。そんな時。

 

「っな…?!」

 

 伯爵の周囲に無数の札が飛ばされ、その動きが止まる。

 ネアは思わず感嘆したところで自分の体にも札が飛ばされた。

 

「え゛っ」

 

 彼の体はそのまま頭上に飛んで行った。

 ネアは状況が全く飲み込めない中、自分を助け出した男の脇に抱えられているジョニー………ではなく、その反対に抱えられている少女を見つめる。

 

 ちなみにジョニーはアレンを探すべく、神田(アルマの最期を見送ったのちに戻ってきた)とともに教団から逃れていた。

 神田はこの場にいないが、ジョニーは精神が14番目に乗っ取られていなかったアレンと一度合流している。しかし現在は伯爵の攻撃に遭い、気を失っていた。

 

 

「やあ、久しぶりだねリンクくん!」

 

 

 マリアは自分を抱えている男、ハワード・リンクに笑いかけた。

 

 

(何で中央庁のイヌがここにいんだよ…)

 

 突然の乱入者に、ネアは頭が痛くなる気がした。

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