『魔術? そんなことより筋肉だ!』 連載版   作:蜜柑ブタ

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ゲイボルグじゃなくて…、ゲイボルクだったんですね。
すみませんでしたーー!


今回は、槍兵の挑戦。


とりあえず、現時点では、ここまで書いています(2019/01/27)。


SS3 槍兵の殺(や)る気

 

 因果を逆転させる呪いの槍。

 その名は、ゲイボルク。

 死という結果を導くため、あらゆる事象をねじ曲げる魔槍だ。

 

 なのだが……。

 

 

「悪いな坊主! 死んで貰うぜ!」

 ゲイボルクの持ち主であるランサークラスこと、クー・フーリンがその赤き槍を、衛宮士郎に突き出した。

 しかし。

「ふんっ!」

 

 ガキンっ!

 

 瞬間。上半身の服が破れるほど膨張した筋肉が、心臓めがけて突き出された槍の先端を弾いた。

「なっ!?」

「危なかった…。この鍛え抜いた大胸筋がなかったら、心臓一発だった……。」

「大胸筋、鍛えたぐらいで俺の槍を防げるかよ!!」

 たまらずツッコミを入れてしまった。

 槍を握っていた手が、ジーンッとちょっと痺れている。それだけで、あの士郎の筋肉の強度が分かる。そしてイヤでもこれが現実なのだと知らしめる。信じたくないが、現実だ。もう一度言う…現実だ。

 ゲイボルクは、必ず、心臓を穿つという呪いを持つ槍だ。もう一度言う、“必ず、心臓を穿つ呪いを持つ槍”だ。

 そんな伝説のある槍を大胸筋だけで防いだのだ。

「おーい、そこにいるの遠坂だよな? これ、どういうことだ?」

「えっと…、その…。って、アーチャー!? なに、倒れてんの!?」

 慌てる凛の横では、アーチャーがうつ伏せで倒れていた。別に攻撃されて倒れたのではない。めまいを起こして自分で倒れたのだ。

「はあっ!」

「っ、フンっ!!」

 再度ランサーが槍を突き出し、士郎の心臓を狙ったが、気づいた士郎が再度気合いを入れて槍を防いだ。

「っきしょう…! なんつー硬さだ!? おまえ、英霊か?」

「なんでさ? 人間だけど?」

「嘘吐け。」

 否定する士郎を、逆にランサーが否定した。

「ホントに人間だって。なあ、遠坂。」

「アーチャー! ちょっと、起きなさいよぉ!」

「おーい…。」

「すげぇな、坊主。…例え人間だとしても、その筋肉はどうしたよ?」

「鍛えたんだ!」

「鍛え…。それだけか?」

「ああ。」

「嘘吐け。」

「本当だ。」

「………マジか?」

「マジだ。」

「フーーーーーン…、そうか…そうか。」

「なにさ?」

「それなら、俺を楽しませてくれよ!」

 ランサーが槍を構えて切っ先を士郎に向けた。

「なんだなんだ?」

「お前の筋肉と俺の槍…、勝負と行こうぜ!」

「はっ? …まあ、いいけど。でも、おまえ強いのか?」

「あったり前よ! クランの猛犬たる、このクー・フーリン! 押して参る!!」

「なっ! クー・フーリン!?」

「行くぜ、坊主!」

「うりゃ。」

 バチンッ

「んぎゃっ!!」

 槍を手に士郎に襲いかかったランサーだったが…、デコピン一発で弾き飛ばされ、何度もバウンドして倒れた。

「クー・フーリンっつたって…、こんなやせっぽちなはずないよなぁ……。自称か?」

 尻を突き出す形でうつ伏せで倒れているランサーと、アーチャーを起こそうと揺さぶっている遠坂を残し、士郎は鞄を担いで帰ったのだった。

 その頃には、膨張していた筋肉は元の大きさに戻っていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 士郎は、誰もいない家の玄関の電気を付けて、ただいまーっと言って靴を脱ぎ、家に上がった。

 そして、晩ご飯は何にしようかな~っと、暢気に独り言を呟きながら家の中を歩いていると、ふいに立ち止まった。

「! ーーふんっ!」

「チッ!!」

 背後から槍を突かれたが、背筋に力を入れて防いだ。

「おまえ!」

「背中からでもダメか…。」

「土足で上がるな!」

「ツッコミどころそこかよ!?」

 ランサーが思わずそうツッコミ返した。

「何しに来た!?」

「俺と勝負しやがれ、坊主!」

「もう勝負はついただろ!」

「リベンジだ!」

「そうか…。なら、納得するまで戦ってやる、表出ろ!」

「おう!」

 二人は、表に出た。

 そして、戦いが始まった。

 ランサーが、その機動性を生かして槍を連続で突き出す。

 それを士郎は、すべて避ける。

「おめぇ…、パワーだけじゃないのか…! すげぇな! ほんとすげぇ!」

「どういたしまして!」

「オラオラ! 避けてばっかじゃ終わらないぞ!」

「おらぁ!」

「あぶねっ!」

 突きのような蹴りが来たので、ランサーは、間一髪で避けた。

 その瞬間だった。

 カッと光が発生し、そこに一人の美しい少女が現れた。

「ーーー問おう。貴方が私のマス…。」

「ほげぇ!!」

「俺の勝ちだ。」

 発生した光で一瞬止まったランサーが、再び士郎のデコピン一発で吹っ飛びバウンドして倒れた。

「……………………えっ?」

「誰だ?」

「あの…、これは?」

「何って…、俺に挑んできたやつを撃退しただけだけど?」

 M字に足を開脚状態で倒れているランサーを指さし、士郎がそう言った。

「! サーヴァント! 下がってください。」

「いや…、もう倒したから…。それより、君は?」

「あ…、私のことはセイバーと…。」

「じゃあ、セイバー。今、サーヴァントって言ったけど、アイツのこと…。あれ?」

「逃げましたね。」

 ふと見ると、ランサーの姿が消えていた。

「ま、いっか。」

「!?」

 セイバーは、縮んでいった士郎の筋肉を見て驚いた。

「どうした?」

「あの…失礼ですが、貴方は…、何者なのですか?」

「俺? 俺は衛宮士郎。筋肉魔法の使い手だ。」

「きんにくまほう?」

「っと言っても、まだまだ修行中なんだけどな。ユーリ兄ちゃんには、まだまだ届かない。」

「はあ…。」

 セイバーは、どう反応すれば良いのか分からず困ったのだった。

 

 セイバーは、知らない。これから自分の身に降りかかる、筋肉という名の理不尽に……。

 

 

 




ランサーとの戦いの中、唐突にうっかり召喚されちゃったセイバー。
二回もデコピン一発で撃退されるランサー。なお、諦めてません。

三人目の苦労人、セイバー登場の回でした。
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